デスクトップ上にドックを配置
2017年8月18日、Ubuntuセッション向けに大きなアップデートがリリースされました。それはデスクトップ上に配置するドックです。
このドックは「Ubuntu 17.10」でデフォルトでインストールされ、デフォルトでデスクトップ上に配置されます。
このドックは「Ubuntu Dock」と呼ばれ、GNOMEシェル拡張として提供されます。
ドックには、ユーザーが登録したアプリや起動しているアプリが表示され、アプリの起動や切り替えを行うことができます。
ドックの一番下にあるボタンをクリックすれば、以下のようにアプリケーションの検索及び起動を行うウィンドウが表示されます。
このドックの追加に関する経緯が以下で紹介されています。
Ubuntuセッションでのみ有効なドック
このドックはUbuntuセッションでのみ有効なドックであり、GNOMEセッションではこのドックは表示されません。またこのドックの対応のため、以下の6つのパッケージが修正されました。
- gnome-shell-extension-ubuntu-dock package
- gnome-shell package
- gnome-control-center package
- gnome-session package
- ubuntu-settings package
- ubuntu-meta package
「Ubuntu Dock」は「Dash to Dock」から派生したソフトウェアですが、大きな変更は行われていません。
なぜドックを追加したのか?
開発チームは、既存のUbuntuユーザーに可能な限りスムーズに「Unity」から「GNOME Shell」へ移行してもらいたいと考えています。これには2つの切り口があります。
「Unity」と「GNOME Shell」は異なる環境ですが、移行をスムーズに行えるようにするため、親しみやすさの程度と快適さの程度の均衡を取る必要があります。
以前行われたアンケートでは、Ubuntuユーザーはデスクトップの一部としてドックが配置されていることに高い価値を感じていることが明らかになりました。
「Ubuntu Dock」は、ユーザーが期待する機能をデスクトップにもたらす機能拡張です。
なぜDash to Dockを採用しなかったのか?
「Dash to Dock」は最も人気のあるドックの1つであり、よくメンテナンスされています。「Ubuntu Dock」と「Dash to Dock」は大きな違いがないにも関わらず、なぜ「Dash to Dock」をそのまま採用しなかったのでしょうか。
結論から言うと、「Ubuntu」の制御下においた管理を行えるようにするためです。
いずれの以下の点も「Dash to Dock」の開発者に理解してもらい合意を得ています。
1.Ubuntuのルール
「Ubuntu」でアプリをデフォルトでインストールするには、「Ubuntu」のルールに従う必要があります。「Ubuntu Dock」(GNOMEシェル拡張)をデフォルトでインストールするということは、「main」リポジトリーに「Ubuntu Dock」のパッケージを配置しなければなりません。
そのためまず開発チームは、GNOMEシェル拡張をパッケージ化する必要があります。
ちなみに「main」に配置されるということは、Canonicalによるサポートが得られるようになります。
2.アップデートのテストと手続き
もし「Ubuntu」が提供するドックが「Dash to Dock」と同じGNOMEシェル拡張IDを持っていた場合、「Dash to Dock」がアップデートされた時、ユーザーは「GNOME Shell extensions」から直接アップグレードすることができます。つまり他のアップデートソースを有効にすることで、「Ubuntu」のプロセスであるQAやSRUなどテストや手続きを回避して、ユーザーは直接「Dash to Dock」をアップデートすることができます。
またユーザーが一旦「Dash to Dock」をアップデートしてしまうと、アップデートされた「Dash to Dock」がユーザーの「~/.local/share/gnome-shell/extensions」フォルダーにインストールされます。
一方、「Ubuntu」が提供する「Dash to Dock」は全ユーザー共通で利用する「/usr/share/gnome-shell/extensions/」フォルダーにインストールされます。
「GNOME Shell」は、ユーザーのフォルダー(つまり前者)に配置されたGNOMEシェル拡張を優先するため、「Ubuntu」側で「Dash to Dock」を提供してもこちらの(つまり後者)の「Dash to Dock」は使われません。
前者の「Dash to Dock」は「Ubuntu」でテストが行われていないため、バージョンの不整合により機能しなくなる可能性があります。
特に「Ubuntu 18.04」のようなLTS版は5年間のサポート期間があるため、この可能性は無視できなくなります。
これは「GNOME Shell extensions」で「Ubuntu Dock」を公開していない理由でもあります。
Dash to Dockも利用可能
「Ubuntu Dock」ではなく「Dash to Dock」を利用したいユーザーは、別途「Dash to Dock」をインストールして利用することも可能です。3.SRU(Stable Release Updates)
「Ubuntu」では一旦正式版がリリースされたあと、一部のソフトウェアを除き、メジャーアップグレードなど大きな変更のあるアップデートは許されません。アップデートでは不具合の修正のみが行われ、UIの動作や機能の変更は許されず、安定性が重視されます。
このルールに沿ったアップデートを行うには、「Ubuntu」が主体的にGNOMEシェル拡張を管理する必要があります。