LMDE 3の開発コードとリリース予定日
「LMDE 3(Linux Mint Debian Edition 3)」の開発コードとリリース予定日の紹介です。「LMDE」は「Debian」ベースのエディションであり、「Ubuntu」ベースの「Linux Mint」とは大きく異なります。
「LMDE」のユーザー数は「Linux Mint」のユーザー数よりも非常に少ないですが、「LMDE/Linux Mint」の開発チームは「LMDE」の重要性を認識しており、「Linux Mint」にとっても「LMDE」の継続的なサポートは重要です。
「Ubuntu」が万が一無くなった時の選択肢として、そして「Linux Mint」の外側で開発されている技術や様々なプロジェクトとの互換性を確保していくため、「LMDE」の存在は重要です。
ただしユーザー数が少ないため、「LMDE」に対する緊急性(優先順位)はそれほど高くありません。
開発コード
「LMDE 3」の開発コードは、「Cindy」です。「Debian 9」の開発コードである「Stretch」に因んでいます。
リリース時期
「LMDE 3」のリリース時期は、2018年の第一四半期を予定しており、「Cinnamon 3.8」を採用したエディションがリリースされる予定です。Linux MintとFlatpak
「Linux Mint」は、2年に一度リリースされる「Ubuntu」のLTS版がベースになっています。そのため「Linux Mint」で提供されるほとんどのパッケージは、「Ubuntu」の方針に従い提供されています。
パッケージはメジャーアップデートしない
「Ubuntu」がリリースされると、その「Ubuntu」で提供されるパッケージは、基本的にメジャーアップデートが行われることはありません。つまり「Ver 1.0」のアプリが「Ver 2.0」になることはないということです。
ただし「Firefox」等一部のパッケージはメジャーアップデートされますし、その他のパッケージでもマイナーアップデートが行われることはあります。
セキュリティーアップデートの対象となるパッケージは、サポート期間中であれば継続的にアップデートが提供されます。
この方針は「Linux Mint」にも引き継がれます。
安定した環境を提供
ソフトウェアがメジャーアップデートしないということは、安定した環境を継続的に提供することを意味します。ソフトウェアを大きくバージョンアップすれば、ソフトウェア環境が大きく変わることになります。
特にライブラリーのバージョンアップは、そのライブラリーを利用するすべてのソフトウェアに影響を与えます。
場合によっては互換性が失われ、クラッシュしたり起動しないソフトウェアも出てくるでしょう。
その都度テストを行ったり修正を行うのは、数万を超えるパッケージを提供する「Ubuntu」にとって、現実的なことではありません。
「Ubuntu」には様々なエディションがあり、個人だけでなく法人含め幅広い層をターゲットとしています。
安定した環境の継続的な提供は、個人の初心者にとっても法人にとっても非常に重要な要素です。
ある日アップデートしたらアプリのUIが大きく変わり使い勝手が変わってしまった、あるいはプラグインが動作しなくなってしまった等、バージョンアップに伴うリスクを軽減し、ユーザーにとって変わらない環境を提供することができます。
一方「Ubuntu」のバージョン自体に区切りを持たせ、「Ubuntu」の新しいバージョンと共に新しいソフトウェアを提供することで、ユーザーはその区切りを意識した運用を行うことができます。
つまり、アップデートしたらいきなりデスクトップ環境が「Unity」から「GNOME」に変わってしまった、ということは起きません。
ユーザーは「Ubuntu 17.04」や「Ubuntu 17.10」といったバージョンごとに事前に変化を把握し、変化に応じた準備を行うことができます。
サポート期間は5年
LTS版の「Ubuntu」と同様に、「Linux Mint」でも5年間のサポート期間が提供されます。つまり5年間、ソフトウェアがメジャーアップデートしないということになります。
ほとんどのソフトウェアは、5年も経てば大きくバージョンアップします。
そのソフトウェアがユーザーにとって魅力的なソフトウェアであれば、積極的に新しいバージョンにアップデートしたいと考えるでしょう。
しかし「Linux Mint」自体が新しいバージョンに移行しない限り、そのソフトウェアのバージョンはアップデートされません。
ソフトウェアによっては、そのソフトウェアが開発者のサイトで配布されているケースもあります。
しかし新しいソフトウェアは新しいライブラリーに依存していることがあり、新しいライブラリーが「Linux Mint」から提供されているとは限りません。
またコアコンポーネントは異なるバージョンを共存してインストールすることが困難なため、無理やり新しいライブラリーをインストールしようとすると、システムが破綻します。
隔離されたソフトウェア環境
「Linux Mint」に影響を与えずに、また「Linux Mint」が提供しているソフトウェアに依存せず、新しいバージョンのソフトウェアを利用するための仕組みがあります。その仕組みは、そのソフトウェアが依存するソフトウェアも含め、完全なソフトウェア環境をソフトウェアごとに提供する仕組みです。
この仕組みにはいくつか種類があり、「Snap」や「Flatpak」、「AppImage」がこれに該当します。
Flatpakを採用
「Linux Mint」では「Flatpak」を採用しました。「Flatpak」は「Linux Mint」にとって将来性があり、実装は非常に安定しています。
「Linux Mint 18.3」で「Flatpak」の完全なサポートが追加されます。
「Flatpak」にはAPTやDebのようにリポジトリーを利用して、ソフトウェアの配布を行います。
「Flatpak」のパッケージ同士の依存関係はありますが、それは「Flatpak」内で完結する依存関係であり、「Linux Mint」に影響を与えません。(この点だけは「Snap」も同じ)
また「Flatpak」は柔軟性に優れ、開発者とユーザーの間に中間者を配置する必要がありません。
開発者とユーザーは、望めば、第三者が管理するリポジトリー(アプリストア)を利用することも可能です。
もちろん開発者は直接リポジトリーを作成し、ソフトウェアを配布することも可能です。
ユーザーは好みのリポジトリーを選択してソフトウェアをインストールできます。
ソフトウェアマネージャーからFlatpakアプリをインストール可能に
「Linux Mint 18.3」では、「ソフトウェアマネージャー」から「Flatpak」アプリをインストールできるようになります。デフォルトでは、以下の2種類のリポジトリーが登録されています。
- Flathub
- gnome-apps
もちろんユーザーはリポジトリーの追加と削除が可能であり、リポジトリーを追加すれば新たなアプリが「ソフトウェアマネージャー」に現れます。
リポジトリーごとに利用可能なアプリを探すこともできます。
同じ操作方法でアプリの管理が可能
「APT」と「Flatpak」は大きく異なる仕組みですが、「ソフトウェアマネージャー」ではその違いを吸収し、統一的な手段でソフトウェアのインストールやアンインストール等の操作を提供します。APTとFlatpakの相違点
「APT(deb)」からインストールしたソフトウェアと「Flatpak」からインストールしたソフトウェアでは、いくつか相違点があります。テーマが異なる
「Flatpak」からインストールしたソフトウェアは、「Adwaita」テーマを使用します。そのためウィンドウやボタンなどウィジェットのデザインが「Linux Mint」と異なります。
最終的に「Linux Mint」のテーマと同じになるように修正されますが、その修正は「Linux Mint 18.3」には間に合わない予定です。