Ubuntu 17.10の新機能と変更点
2017年10月19日に「Ubuntu 17.10」がリリースされました。リリースノートから「Ubuntu Desktop」に関する「Ubuntu 17.10」の新機能と変更点を紹介します。
リリースノート
「Ubuntu 17.10」のリリースノートは以下を参照してください。近い将来、日本語版のリリースノートも提供される予定です。
またディスクイメージのダウンロードなどリリース情報は、以下を参照してください。
1.サポート期間は9ヶ月
「Ubuntu 17.10」は通常リリースとなるため、サポート期間は9ヶ月になります。従って2018年7月までサポートが提供されます。
さて今まで紹介してきた通り「Ubuntu 17.10」では、デスクトップユーザーに直接影響する数多くの変更が行われています。
その中で特に「GNOME(デスクトップ環境)」の採用と「Wayland(ディスプレイサーバー)」の採用は、使い勝手に大きく影響する変更です。
今までの使い方やトラブルシューティングが通用しないケースもあるでしょう。
例えば一部のスクリーンキャプチャーソフトや一部のドック(ランチャー)アプリケーションは、「Wayland」上で正常に動作しません。
アップグレードは慎重に
現在「Ubuntu」を利用しているユーザーは、即座に「Ubuntu 17.10」へアップグレードするのではなく、しばらく様子見するのも良いです。「Ubuntu 17.04」は2017年1月までサポートされるので、移行期間は十分にあります。
Ubuntu 16.04もおすすめ
初めて「Ubuntu」を利用するユーザーは、長期サポート版である「Ubuntu 16.04」の利用を検討したほうが良いでしょう。余計なトラブルを回避できますし、情報も多く見つかります。
また長期サポート版は安定性に優れています。
現在最新版の「Ubuntu 16.04.3」については、以下を参照してください。
Ubuntu 18.04へのアップグレードも可能
「Ubuntu 16.04」は来年、「Ubuntu 18.04」へ直接アップグレードできるようになる予定です。「Ubuntu 18.04」は「Ubuntu 16.04」同様、長期サポート版となります。
2.Linux Kernel 4.13採用
「Linux Kernel 4.13」を採用しています。「Ubuntu 17.04」では「Linux Kernel 4.10」を採用していたため、3回メジャーアップデートされています。
「Linux Kernel 4.10」から「Linux Kernel 4.13」までの変更点は、以下を参考にしてください。
3.ifupdownが非推奨に
「ifupdown」が非推奨になり、すべてのエディションで「netplan」に置き換わりました。新規インストール時、「ifupdown」はデフォルトでインストールされなくなりました。
インストーラーは「Ubuntu」のインストール時、「netplan」の設定ファイルを「/etc/netplan」に生成します。
設定ファイルには、「systemd-networkd」もしくは「NetworkManager」をバックエンドに指定し、それらのバックエンドを通じてネットワークの設定を行うよう記述されています。
どちらをバックエンドに指定するのかは、エディションにより異なります。
「netplan」に関しては、以下を参照してください。
「netplan」に関するドキュメントは、以下も参照してください。
Ubuntu Desktop
「Ubuntu Desktop」では以前のバージョンからすでに「netplan」が採用されており、「Ubuntu Desktop」ユーザーにとって本件は変更点ではありません。「Ubuntu Desktop」では、「NetworkManager」をバックエンドに指定します。
ネットワークの設定は、「設定」の「ネットワーク」 から行うと良いでしょう。
Ubuntu Server
しかし「Ubuntu Server」では「Ubuntu 17.10」から「netplan」が採用されます。「systemd-networkd」がバックエンドに指定され、「systemd-networkd」がネットワークデバイスを管理します。いずれも新規インストール時のみ適用されます。
ifupdown由来のコマンドは利用できない
「ifupdown」がデフォルトでインストールされなくなるため、「ifupdown」由来の「ifup」や「ifdown」コマンドが利用できなくなります。これらのコマンドは、「ip link set デバイスの識別子 up」や「ip link set デバイスの識別子 down」に置き換えてください。
以下も参考にしてください。
networkctlコマンドも利用可能
「networkctl」は、「systemd-networkd」から見えているネットワークの状態を表示するコマンドです。「systemd-networkd」を利用している環境なら、このコマンドでネットワークデバイスの状態を調べることができます。
例えば以下のコマンドを実行すれば、すべてのネットワークインターフェースに関する情報が表示されます。
networkctl status
以下のコマンドを実行すれば、特定のネットワークインターフェースに関する詳細な情報が表示されます。
networkctl status デバイスの識別子
4.Ubuntu Desktop 32bit版のディスクイメージは提供されない
「Ubuntu Desktop 32bit版(x86)」のディスクイメージは提供されません。ただしパッケージは従来通り提供されています。
以下を参考にしてください。
5.デスクトップ環境にGNOMEを採用
今までデスクトップ環境に「Unity」を採用していましたが、「Ubuntu Desktop 17.10」から「GNOME」に変更されました。もう何度も話題に上がっている内容ですね。
詳細は以下を参照してください。
6.Waylandの採用
今までデフォルトのディスプレイサーバーに「Xorg」を採用していましたが、「Ubuntu Desktop 17.10」から「Wayland」に変更されました。「Wayland」が利用できる環境でのみ、「Wayland」でログインできます。
「Wayland」に対応していない環境では、従来通り「Xorg」が使用されます。
また「Wayland」が利用できる環境では、ユーザーは「Wayland」と「Xorg」のどちらを利用するか選択することができます。
詳細は以下を参照してください。
また現在動作しているディスプレイサーバーが「Wayland」か「Xorg」か調べる方法は、以下を参照してください。
7.GDMの採用
今までディスプレイマネージャーに「LightDM」を採用していましたが、「Ubuntu Desktop 17.10」から「GDM」に変更されました。8.ウィンドウコントロールボタンが右に移動
今までウィンドウコントロールボタンは左側に配置されていましたが、右側への配置に変更されました。9.GNOME 3.26の採用
デスクトップ環境に「GNOME 3.26(.1)」を採用しています。「GNOME 3.26」の変更点は、以下を参照してください。
また以下も参考にしてください。
10.ドライバーレス印刷のサポート改善
「Ubuntu 17.04」で導入されたドライバーレス印刷のサポートが改善されました。「Ubuntu 17.10」では、以下の仕組みに対応したプリンターを、プリンター固有のドライバーなしに印刷できるようになりました。
プリンターの設定について
今までプリンターの設定は、「CUPS 設定ツール(system-config-printer)」から行っていましたが、「設定」からプリンターの設定を行えるようになりました。「設定」を起動し左側の項目一覧から「デバイス」を選択すれば、以下のように「プリンター」の設定を行う画面を表示できます。
プリンターの検出手法やドライバーの選択手法は、「CUPS 設定ツール(system-config-printer)」と同じ手法であり、また可能な限り多くのドライバレス印刷可能なプリンターを検出するようになっています。
一部のオプションはCUPS設定ツールから行う
プリンターの共有など一部のオプションにはまだ対応していません。そのような設定は従来通り「CUPS 設定ツール」から行ってください。
「CUPS 設定ツール」を起動するには、右下の「追加のプリンター設定」ボタンをクリックします。
11.Python 2がデフォルトのインストールから外された
「Python 2」がデフォルトのインストールから外され、デフォルトではインストールされなくなりました。必要ならユーザーは後から「Python 2.7」をインストールできます。
12.Ubuntu GNOMEがなくなった
「Ubuntu GNOME」はデスクトップ環境に「GNOME」を採用した「Ubuntu」フレーバーです。「Ubuntu」が「GNOME」を採用したことにより、「Ubuntu GNOME」は「Ubuntu」に統合されました。
今後「Ubuntu GNOME」のリリースはありません。
GNOMEセッションの利用を
「Ubuntu 17.10」では、「Ubuntu GNOME」ユーザーやアップストリームの「GNOME」を利用したいユーザー向けに、「GNOMEセッション」を提供しています。詳細は以下を参考にしてください。
さらに多くのGNOMEコアアプリケーションをインストールするには
デフォルトでインストールされているGNOMEコアアプリケーションに加え、さらに多くのGNOMEコアアプリケーションをインストールするには、「vanilla-gnome-desktop」パッケージをインストールしてください。
sudo apt install vanilla-gnome-desktop
13.その他の変更点
その他の変更点です。13-1.LibreOffice 5.4の採用
「LibreOffice 5.4.1.2」が採用されました。「LibreOffice 5.4」の変更点は、以下を参照してください。
13-2.Amazonアプリがデフォルトのブラウザーで起動するようになった
Amazonアプリ(Amazonへのショートカット)がデフォルトのブラウザーで起動するようになりました。13-3.オンスクリーンキーボードにCaribouを採用
今までオンスクリーンキーボードに「Onboard」を採用していましたが、「Caribou」に変更されました。13-4.カレンダーが繰り返しイベントに対応
「カレンダー(gnome-calendar)」が繰り返しイベントに対応しました。13-5.Rhythmbox
「Rhythmbox」はデフォルトで「Alternative Toolbar」プラグインが有効になっており、スリムでモダンなデザインに変更されています。13-6.シンプルスキャン
「シンプルスキャン」はデザインが一新され、コアアプリケーションの1つとなりました。13-7.ログビューワー
ログビューワーが「ログ(gnome-logs)」に変更されました。「ログ(gnome-logs)」は、「systemd journal」のログを表示するアプリです。