フレーバー化の提案通らず
昨日「Technical Board Meeting」にて「Ubuntu Unity」のフレーバー化に関する議題が取り上げられ、フレーバー化の可否について議論が行われました。残念ながらフレーバー化に関する懸念に対し「Ubuntu Unity」側が十分な答えを提示できず、「Ubuntu Unity」のフレーバー化は認められませんでした。
懸念とは何か
フレーバー化の懸念に関しては、以下を参考にしてください。以前も紹介したように「Ubuntu」の公式フレーバーになるには、開発体制やソフトウェアの品質など持続性や将来性の審査が行われ、その審査に合格する必要があります。
フレーバー化に関する懸念とは、まさしく持続性のことです。
「Ubuntu」はデスクトップ環境に「GNOME」を採用したため、「Ubuntu」が主体的に「Unity」のメンテナンスを行うことはありません。
同様に以前紹介したように「LightDM」のメンテナンスも、「LightDM」を採用しているフレーバーが困らない程度の最小限のメンテナンスのみ行われる方針です。
ただし「Ubuntu 16.04」などデスクトップ環境に「Unity」を採用しており、かつ、現在サポートされているバージョンに関しては、現在のサポートポリシーに基づき「Unity」のメンテナンスが行われますが、それはまた別の話です。
地に足がついた体制を
ポイントは、誰が主体的にそして具体的に「Unity」のメンテナンスを行っていくか、ということです。コアコンポーネントがバージョンアップすれば、それが「Unity」の動作に影響を与える可能性があります。
その時チームとして「Unity」の品質を確保する体制ができているのかが論点になりました。
「Unity」は「Compiz」「GTK+」「nux」など、様々なコンポーネントで構成されます。
それぞれのコンポーネントに対し、十分なメンテナンススキルのあるエンジニアがチームに属しており、責任や役割が明確であり、適切なプロセスに沿った運用が担保されなければなりません。
そしてそれらを外から見て判断するには、相応の実績が必要です。
残念ながらこの点において「Ubuntu Unity」は、彼らが納得する答えを提示できませんでした。
懸念事項の提示がミーティングの直前だったということもありましたが、「Ubuntu Unity」の開発チームが考えていた実績の基準と、彼らが期待する実績の基準に乖離があり、ミーティングではその点がうまく噛み合っていませんでした。
フレーバーには一定の品質が求められる
手を挙げればどのディストリビューションでも、フレーバーになれるわけではありません。フレーバーになるには、ソフトウェアに一定の品質が求められます。
もちろんそれは一時の品質ではなく、継続的に求められる品質です。
そしてその品質の確保は、チームやチームに属する人達が主体的に行っていく必要があります。
もちろん外部からの貢献は歓迎されますが、チーム体制はフレーバーの可否に大きく影響を与えます。
たとえ多くのユーザー(開発には参加しないユーザー)から支持を得ていても、それは十分な判断材料にはなりません。
もし品質の低いディストリビューションでもフレーバーになれる基準だったとしたら、フレーバーや「Ubuntu」はユーザーから信用を失うことになるでしょう。
それはユーザーだけでなく開発者にとっても不幸なことです。
今後どうなる?
ミーティングが終わったばかりなので今後の具体的な活動方針はこれからですが、いくつか今後に対する予測が立てられています。Ubuntu Unity Remixとしてリリースする
本タイミングでのフレーバー化は見送り、「Ubuntu 18.04」では「Ubuntu Unity 18.04 Remix」としてリリースする案です。今後もフレーバー化を諦めるということではなく、今回はフレーバー化を見送り、Remixとしてリリースを行い、フレーバー化に向けた実績と体制を作っていきます。
懸念を解消し、再挑戦する
2018年1月の「Technical Board Meeting」までに今回懸念事項として挙げられた内容を解消し、彼らが納得する回答を用意し、そのミーティングで再度フレーバーの可否について議論する案です。懸念事項を解消するためには、「Unity」スタックをメンテナンスできるスキルを持つエンジニアの参加が必要です。
この時点で懸念事項を解消できなければ、「Ubuntu 18.04」でのフレーバー化は難しいかもしれません。
また将来的にもこの懸念事項が解消されなければ、フレーバーを目指すこと自体叶わないでしょう。