Ubuntu MATE 18.04の新機能や変更点をピックアップ(前編)
「Ubuntu MATE 18.04」の新機能や変更点を紹介します。「Ubuntu MATE」はデスクトップ環境に「MATE Desktop」を採用した「Ubuntu」のフレーバーです。
「Ubuntu」と共通したコアコンポーネントを採用しており、また「MATE」の採用により、昔からあるUIからモダンなUIまでユーザーの好みに応じたUIを提供し、テーマやコンポジターの変更など高いカスタマイズ性を提供します。
ここで紹介する変更点は、以前のLTSである「Ubuntu MATE 16.04」からの変更点も含まれています。
1.サポート期間
「Ubuntu MATE 18.04」のサポート期間は3年です。2021年4月までサポートが提供されます。
デスクトップの変更点
デスクトップ環境やデスクトップ全般に関する変更点です。1.MATEのアップデート
「GTK 3.22」ベースの「MATE Desktop 1.20.1」が採用されました。以前のLTSでは「GTK 2.24」ベースの「MATE Desktop 1.12」が採用されていました。
2.libinputのサポート
「libinput」がサポートされ、「libinput」がマウスやタッチパッドのデフォルトのドライバーになりました。これにより入力デバイスの応答性が大幅に改善され、マルチタッチによるジェスチャーもサポートされました。
3.アクセスシビリティーの改善
アクセスシビリティーの継続的な開発が行われ、アクセスシビリティー機能が改善されました。4.HiDPI
「MATE Desktop 1.20」で「HiDPI」ディスプレイのサポートが行われ、「HiDPI」ディスプレイ環境では自動的にピクセルスケーリングが有効になります。また「Ubuntu MATE」に搭載されているアプリ、テーマ、アイコン、ツールキットは、「HiDPI」を活用するようにアップデートされました。
また「Qt」アプリでも「HiDPI」を活用できるように、必要な設定が環境変数に追加されました。
HiDPIのスケーリングを無効化するには
デスクトップ画面の「HiDPI」スケーリングを無効化するには、「MATE Tweak」から設定を変更します。ログイン画面の「HiDPI」スケーリングを無効化するには、「コントロールセンター」の「ログイン画面」から設定を変更します。
5.Macro
「Macro」はウィンドウマネージャーです。ハードウェア(GPU)及びドライバーが「DRI3」をサポートしていれば、「Macro」でハードウェアアクセラレーションが有効になります。
これにより3Dの描画パフォーマンスが飛躍的に向上します。
特に3Dゲームでこの恩恵に与れるでしょう。
「DRI3」のサポートがない場合、ソフトウェアによる描画になります。
ウィンドウのタイリングのサポート
デスクトップを4分割するようにアプリのウィンドウをタイリング(配置)できるようになりました。カーソルキーによるウィンドウの切り替え選択
「Alt+Tab」キーでスイッチャーを表示している時、カーソルキーで切り替えるウィンドウを選択できるようになりました。キーボードショートカットの追加
異なるモニターにアプリのウィンドウを移動するショートカットキーが追加されました。アプリの変更点
アプリケーションに関する変更点です。1.Caja
「Caja」は、ファイルマネージャーです。以下の新機能が搭載されました。
- ファイル名の一括変換
- GnuPGによるファイル暗号化と復元
- ファイルのハッシュサムのチェック
- アクセスコントロールリスト(ACL)と拡張属性(xattr)の設定及び編集
- ファイルやフォルダーの色の変更及びエンブレムの設定
ファイル名の一括変換では、複数のファイル名を高度な条件を指定して一括で変更できます。
caja-gksuからcaja-adminの移行
廃止予定の「caja-gksu」から「caja-admin」へ移行しました。「caja-admin」は管理者権限が必要な処理を行うために、「PolicyKit」を使用しています。
また「gksu」が廃止され「Debian」からも「gksu」が削除されました。
「gksu」を使用していた箇所をすべて「PolicyKit」を使用するように変更されました。
2.アプリのアップデート
主要なアプリケーションは、以下のようにアップデートされました。- Firefox 59.0.2
- VLC 3.0.1
- LibreOffice 6.0.3.2
- Thunderbird 52.7.0
デスクトップレイアウトの変更点
「Ubuntu MATE」では、様々なデスクトップレイアウト(パネルレイアウト)を提供しています。デスクトップレイアウトは、「MATE Tweak」から変更できます。
1.Familiarの追加
新しいデスクトップレイアウトである「Familiar」が追加されました。「Familiar」は「Traditional」レイアウトをベースとしており、アプリのランチャーに「Brisk Menu」を採用しています。
この「Familiar」が、デフォルトのデスクトップレイアウトになりました。
「Traditional」も引き続き提供されます。
2.Superキーのサポート改善
「Super」キー(Windowsキーのこと)が多くのデスクトップレイアウトで利用できるようになりました。「Super」キーを押せばアプリのランチャーやメインメニューを開きます。
「Super」キーと組み合わせたショートカットキーも引き続き期待通りに動作します。
「Super + L」キーで画面をロックできます。
これは「Ctrl + Alt + L」キーでも可能です。
3.グローバルメニュー
グローバルメニューの実装が「TopMenu」から「Vala Panel Appmenu」に変更されました。「Vala Panel Appmenu」は、以下のアプリと互換性があります。
- GTK
- Qt
- LibreOffice
- Firefox
- Thunderbird
- Google Chrome
- Electron
- その他
つまり多くのアプリで期待通り動作するということです。
グローバルメニューは「Mutiny」及び「Cupertino」デスクトップレイアウトで使用されていますが、任意のパネルに追加できるようになりました。
4.インジケーター
すべてのデスクトップレイアウトでインジケーターを提供しています。デフォルトでは、以下のインジケーターを提供します。
- Optimus(有効な場合)
- Bluetooth
- ネットワーク
- 電源管理
- メッセージ
- サウンド
- セッション
5.Brisk Menu
「Brisk Menu」はデスクトップメニューです。いわゆるスタートメニューに相当します。
「Mutiny」及び「Cupertino」では、新しいダッシュスタイルでデスクトップメニューが表示されます。
それ以外では、従来のメニュー形式でデスクトップメニューが表示されます。
6.MATE Window Applet
最大化したアプリのウィンドウのウィンドウコントロールボタン(最大化/最小化/閉じる)をパネルに配置できるようになりました。7.Head-Up Display
「HUD(Head-Up Display)」は指をキーボードから離さずにメニューの操作を行えるようにする仕組みです。「HUD」は「MATE Tweak」から有効にできます。
「HUD」を有効にし「Alt」キーを押せば、現在アクティブなアプリからメニューの検索及び実行が可能になります。
「HUD」のタイムアウトはデフォルトで250msに設定されており、「Alt」キーを長押しすると「HUD」が起動しないようになっています。
また「HUD」は「HiDPI」をサポートしています。
MATE Dock Appletの変更点
「MATE Dock Applet」は、「Mutiny」及び「Netbook」で使用されるドックアプリです。1.ショートカットキー
「MATE Dock Applet」は、ドックにあるアプリの起動や切り替えを「Super + 数値キー」で操作できるようになりました。2.MATE Dock Appletの配置
カスタムパネルを作成し、「MATE Dock Applet」を配置できるようになりました。3.アイコンのスクロール
「Mutiny」では、ドックアプレットがパネルの余白を使い切った時にアイコンのスクロール機能が自動的に有効になります。またスクロール方法を視覚的に表示するようになりました。
それ以外のレイアウトでは、「MATE Dock Applet」の設定からこの機能を有効にすることができます。
4.アイコンのマッチング
アプリのアイコンのマッチングを「BAMF」を利用したマッチング方法に変更しました。これによりドックのアイコンをより適切に表示できるようになりました。
5.ウィンドウリストとアクションリストのデザイン
ウィンドウリストとアクションリストの角が丸みを帯びたデザインに変更されました。6.アクションリストを表示するまでの待ち時間
アプリのアイコン上にマウスを置いた時に、アクションリストを表示するまでの待ち時間が設定できるようになりました。7.ワークスペースのサポート
アプリを特定のワークスペースにピン留めできるようになりました。これにより、ワークスペースごとにドックにピン留めするアプリを設定できます。
8.ピン留め解除の通知メッセージ
アプリのピン留めを解除した時に通知メッセージが表示されるようになりました。また通知メッセージからピン留め解除をキャンセルできるようになりました。