Ubuntu 18.04 LTS、10年のサポートを表明
2018年11月14日、ベルリンで開催された「OpenStack Summit」にて、「Canonical」のCEO「Mark Shuttleworth氏」が基調講演を行いました。この基調講演で氏は、「Ubuntu 18.04 LTS」に10年間のサポート期間を提供するとの発表を行いました。
Ubuntuとサポート
現状の「Ubuntu」のサポートポリシーを振り返ってみましょう。補足
サポートと一口に言っても、サポート内容や程度はパッケージ毎に異なる点に留意ください。個々のパッケージに対するサポートの取り組みを紹介することは困難です。
誰がサポートするのか
「Ubuntu」で利用できるパッケージ(ソフトウェア)は、以下のいずれかの組織や個人がサポートを行います。- Ubuntuセキュリティーチーム(Canonical)
- Ubuntuコミュニティー
- パッケージ(ソフトウェア)の提供者
「1.」によるサポートは「Ubuntuセキュリティーチーム」によるサポートであり、例えばセキュリティーアップデートは「1.」によるサポートです。
「2.」は「Ubuntu」のコミュニティーによるサポートですが、パッケージのメンテナーによりサポートの程度(アップデートの頻度や内容)が異なります。
「3.」は、パッケージの提供者(ソフトウェアの開発者やプロジェクト)がサポートを行うケースです。
これもパッケージの提供者によりサポートの程度が異なります。
補足
そもそもオープンソースライセンスはソフトウェアを無保証で提供することを規定しており、開発者に何ら責任を求めることはできません(免責)。つまりソフトウェアの利用者は自己責任でソフトウェアを利用することになります。
その上で利用者にどのようなサポートを提供するのかは、提供者により異なります。
それは定期的なリリースかも知れませんし、継続的なアップデートの提供かも知れません。
もちろんリソース不足等により十分なサポートを行えないケースもあるでしょう。
誰がどのパッケージをサポートするのか
誰がどのパッケージ(ソフトウェア)をサポートするのかは、どこからそのパッケージが提供されるのかで決まります。「ソフトウェアとアップデート」を起動すると、リポジトリーの設定を行う画面が表示されます。
リポジトリーとは、パッケージ(ソフトウェア)を配置し、ユーザーに配置されているパッケージを提供する仕組みです。
Ubuntuのソフトウェア
「Ubuntuのソフトウェア」では、「Ubuntu」公式リポジトリーの設定を行うことができます。上記の内「main」と「restricted」に配置されているパッケージは、「1.Ubuntuセキュリティーチーム(Canonical)」によるサポートが行われます。
上記の内「universe」と「multiverse」に配置されているパッケージは、「2.Ubuntuコミュニティー」によるサポートが行われます。
「ソースコード」はソフトウェアのソースコード(ソースパッケージ)が配置されているリポジトリーであり、ソフトウェアとは別のものです。
他のソフトウェア
その一方で「他のソフトウェア」に列挙されているリポジトリーに配置されているパッケージは、各パッケージの提供者がサポートを行います。アップデート
「アップデート」は「Ubuntuのソフトウェア」の設定を補完します。つまり「Ubuntu」リリース後に提供されるアップデートに関する設定です。
上記の内「security」と「updates」は、Ubuntuセキュリティーチームによるサポートが行われます。
上記の内「backports」は、Ubuntuのコミュニティーによるサポートが行われます。
開発者向けオプション
開発者向けオプションも「Ubuntuのソフトウェア」の設定を補完します。つまり「Ubuntu」リリース後に提供されるアップデートに関する設定です。
「proposed」はパッケージの提供者がサポートを行います。
「開発者向け」とある通り、一般的なユーザーがこのオプションを有効にすることはありません。
Ubuntuとサポート期間
次に「Ubuntu」のサポート期間を見てみましょう。Ubuntuとバージョン番号
「Ubuntu」の各リリースでは、「Ubuntu 18.04」のようにバージョン番号が付けられます。このバージョン番号は、「Ubuntu」がリリースされた年と月で構成されます。
例えば「18.04」は、2018年4月にリリースされた「Ubuntu」であることを意味します。
また後述のLTSリリースでは、バージョン番号の後ろに「LTS」の文字が付きます。
つまり「Ubuntu 18.04 LTS」は、2018年4月にリリースされたLTSリリースの「Ubuntu」であることを意味します。
通常リリースとLTSリリース
「Ubuntu」は毎年4月と10月に新バージョンがリリースされます。つまり半年ごとに新バージョンがリリースされます。
このリリースには、通常リリースとLTSリリースがあります。
通常リリース
通常リリースでリリースされた「Ubuntu」は、9ヶ月間の無償サポートが提供されます。通常リリースの「Ubuntu」は、次期LTSリリースの「Ubuntu」の礎となるバージョンです。
新機能の搭載など大きな変化が積極的に行われます。
サポート期間が短いため、ユーザーは約半年ごとに新バージョンの「Ubuntu」にアップグレードしていくことになります。
LTS(Long Term Support)
LTSリリースでリリースされた「Ubuntu」は、5年間の無償サポートが提供されます。安定した「Ubuntu」を長期間利用したいユーザーや法人に推奨するリリースです。
LTSリリースは、2年に一度リリースされます。
現在最新のLTSリリース版「Ubuntu」は、「Ubuntu 18.04 LTS」です。
LTSから次期LTSの「Ubuntu」に直接アップグレードすることも可能です。
フレーバーについて
「Kubuntu」や「Xubuntu」など各フレーバーのサポート期間は、各フレーバーの開発チームがサポート期間を決定します。またLTSリリースを行うかどうかも各フレーバーの開発チーム決定します。
そのため「Ubuntu」のサポート期間とフレーバーのサポート期間は、分けて考える必要があります。
LTSリリースされたほとんどのフレーバーは、3年間のサポート期間を提供しています。
無償サポートと有償サポート
「Ubuntu」では、無償サポートと有償サポートを提供しています。無償サポート
ユーザーが費用を支払うことなく利用できる無償のサポートです。上記で紹介したに9ヶ月間や5年間のサポートは、この無償サポートによるサポート期間を表します。
ただし各パッケージごとに提供されるサポート期間やサポート内容が異なります。
また「Ubuntu」から見てそのパッケージがそもそもサポート対象かどうかも異なります。
「Ubuntu」から見た各パッケージのサポート期間の調べ方は、以下を参照してください。
有償サポート
有償サポートは「Canonical」が提供するサポートです。ESM(Extended Security Maintenance)
有償サポートの中には、「Ubuntu」の無償サポート期間終了後も一部コアパッケージのセキュリティーアップデートを継続的に提供する「ESM(Extended Security Maintenance)」というサービスがあります。「ESM」は「Ubuntu 12.04 LTS」で初めて導入されたサポートサービスです。
現状では無償サポート期間終了後も、追加で3年間のセキュリティーアップデートを提供します。
「ESM」はLTSリリースの「Ubuntu」で提供されるサービスであり、「Ubuntu 14.04 LTS」でも「ESM」のサービスが提供される予定です。
Ubuntu 18.04 LTSで10年間のサポート
前置きが長くなりましたが「Ubuntu 18.04 LTS」で10年間のサポートが表明されました。10年間のサポートの表明は、「6:50」辺りから見ると良いでしょう。
I’m also delighted to announce that Ubuntu 18.04 will be supported for a full 10 years.
In part because of the very long time horizons in some of those industries, financial services and telecommunications, but also in the IoT where manufacturing lines are being deployed that will be in production for at least a decade.
このサポート内容の詳細は、まだ明らかになっていません。
無償のサポート期間が10年間に伸びるのか、それとも無償サポート5年間に追加5年間の有償サポートが加わるのか、現状何とも言えません。
サポートには相応の負担が伸し掛かるため、もし無償サポート期間が10年間に伸びるとしたら「Canonical」に大きな負担が掛かります。
加えて上記はビジネス(産業/金融サービス/通信/IoT)向けの内容であり、来年IPO(株式公開)を目指している「Canonical」にとって、サポート期間の延長が収益に結び付くなど投資家に魅力的に思わせる展開が必要になるでしょう。
ビジネスにおいてシステムのリプレースは頻繁に行うものではないため、長期間のサポートの提供というのは理に適っています。
ユーザーにとって無償のサポート期間が10年に延びることは喜ばしいことかもしれませんが、有償サポートの可能性が高いという印象です。