2018年のMirを振り返って
2018年は「Mir」に着実な進展が見られた1年でした。2018年に「Mir」のリリースは5回行われています。
1.Mir 0.30(2018年2月)
2018年2月に「Mir 0.30」がリリースされました。「Mir 0.30」は「Wayland」とディストリビューションを横断的にサポートする大きな進展となるリリースであり、以下の動画で「Mir 0.30」の内容が紹介されています。
「LibreOffice」の起動やFedora上で「Mir」が動作しています。
2.Mir 0.31(2018年3月)
2018年3月に「Mir 0.31」がリリースされました。「GTK+」アプリケーションを「Mir」上で動作できるようにするため、「xdg-shell V6」拡張プロトコルのサポートが行われました。
3.Mir 0.32(2018年6月)
2018年6月に「Mir 0.32」がリリースされました。「Mir 0.32」はデスクトップに必要な機能を実現するため、デスクトップに注力した機能が実装されました。
「logind」のサポートやカット&ペーストを行う「Wayland」拡張プロトコルのサポートが行われました。
4.Mir 1.0(2018年9月)
2018年9月に「Mir 1.0」がリリースされました。「Mir 1.0」は「Mir」にとって最も意義の大きいリリースです。
「Mir 1.0」では、「Wayland」サポートで発生していた問題の修正や「xdg_shell stable」拡張のサポートが行われました。
またGUIを持つSnapアプリのサポート改善や、ディスプレイの設定をカスタマイズする方法がサポートされました。
5.Mir 1.1(2018年12月)
2018年12月に「Mir 1.1」がリリースされました。NVIDIA GPU向けプロプライエタリードライバーのサポートが行われ、NVIDIAのプロプライエタリードライバー上で「Wayland」クライアントの動作がサポートされました。
ディストリビューションのサポート
すべてのサポート対象の「Ubuntu」に対し、「mir-team PPA」を通じて最新版の「Mir」を提供しています。また継続的に「Ubuntu」公式リポジトリーに「Mir」を配置する作業も行われています。
Ubuntu以外にもMirを提供
「Mir」を「Ubuntu」以外にも提供する作業が行われています。- Fedora
- Arch
- Debian
他にも「Pop!」上で「Mir」の動作報告や、「Alpine」上で「Mir」を動作させるため「PostmarketOS」のコミュニティーからフィードバックを得るなど、他ディストリビューションへの展開行われています。
Snap版Mir
Snap版「Mir」も利用できるようになっています。1.mir-kiosk
「mir-kiosk」は「Mir」が持つ機能を簡潔に紹介するため、キオスクスタイルのアプリケーションと「Mir」サーバーを単一パッケージに統合したパッケージです。本パッケージに「Mir」が含まれているため、1コマンドで完全なグラフィックスタックをインストールすることができます。
「mir-kiosk」は様々なGUI環境で利用可能な枠組みを提供します。
必要ならマウスカーソルをスクリーン上に提供し、必要なアプリケーションを動作させ、簡単にキオスクアプリの構築を可能にします。
情報端末向けのサンプル
「chromium-mir-kiosk」は、キオスクやデジタルサイネージなど情報端末で「Chromium」ブラウザーを利用するサンプルです。「Mir」のキオスクモードで「Chromium」が動作します。
車内のエンターテイメントスタックやホームオートメーションに
「Running a kiosk on Ubuntu Core」は「Ubuntu Core」上で「Mir」を起動し、Qtアプリを動作させるキオスクスタイルのサンプルです。車内のエンターテイメントスタックや産業用のコントロールパネル、ホームオートメーションの構築に参考になるサンプルです。
その他IoTデバイス向けのサンプル
「Make a secure Ubuntu kiosk」は、IoTや情報端末で動作するGUI Waylandクライアントアプリを構築するためのチュートリアルです。「Make a X11-based Kiosk Snap」は、IoTや情報端末で動作するX11クライアントアプリを構築するためのチュートリアルです。
2.egmde
「egmde」はデスクトップ向けのサンプルシェルです。その他
「Ubuntu Touch」は「Mir」を採用しているモバイル向けOSです。「Ubuntu Touch」は来年の前半に最新版「Mir」を採用する計画を立てています。
最新版「Mir」を採用することで「Wayland」サポートなど、「Mir」が提供する利点を活用できます。
他にも「MATE」を「Wayland」へ移植する作業や、将来「Lubuntu(LXQt)」が「Wayland」をサポートする計画があります。