Mirニュースレター
「Mir」開発チームは、ニュースレターで「Mir」の取り組みや開発状況を紹介しています。Mirが動作するディストリビューションの拡大
すでに「Ubuntu」「Fedora」「Arch」では、それぞれのディストリビューションのリポジトリーから「Mir」が利用できるようになっています。そして「Debian」「Alpine Linux」「Pop!_OS」「Solus」では、「Mir」のビルド及び実行が可能になりました。
また各ディストリビューション(ダウンストリーム)から、それぞれのディストリビューション上で発生する「Mir」の問題や修正のフィードバックが行われています。
Debian sid
「Debian」に「Mir」と「Unity8」を提供するための作業が行われています。今まで以下の不具合により「Debian」に「Mir」を提供できない状況がありましたが、本不具合が修正され「Debian」向けに「Mir」を提供する準備が整いました。
「Debian」向けの「Mir」は「Debian 10(Buster)」で「Mir」のバージョンの固定を避けるため、「Experimental」へのアップロードが計画されています。
Alpine Linux
「Alpine Linux」は「Ubuntu」や「Fedora」と異なり、「glibc」の代わりに「musl」を採用しています。この違いにより、そのまま「Mir」をコンパイルすることも実行もすることもできません。
「Alpine Linux」上で「Mir」をコンパイルできるようにするため、以下の不具合報告やパッチ(修正コード)が寄せられました。
- Support libcs with POSIX ioctl arguments
- Only use dlvsym when it’s available
- Compile error on Alpine linux
- <sys/poll.h> include is incorrect, use <poll.h>
- ifdef pthread_getname_np as musl doesn’t have it
- WIP: Adjust some tests for musl, ifdef out thread tests as they don’t work
- Fix “unused parameter ‘type’” warning/error on musl
これらの修正はレビューが行われており、「master」ブランチへ取り込むための作業が行われています。
「Alpine Linux」上で「Mir」を利用できるようにするための修正と、上記の「Debian」の修正が完了したら、それらの修正を盛り込んだ「Mir」のバグフィックスリリースが行われる可能性があります。
そうすればダウンストリームは、「Mir」チームがリリースしたソースコードを直接利用できるようになります。
グラフィックスタック
グラフィックスタックは、グラフィック表示に関連する仕組みや、それに関連する一連のハードウェア及びソフトウェアのことを指します。NVIDIAとegmde
「egmde」はデスクトップ向けシェルのサンプルです。「NVIDIA」のプロプライエタリードライバー上で「Mir」は、「Wayland」クライアントのみサポートしています。
一方「egmde」は従来の「mirclient API」を使用していたため、「NVIDIA」のプロプライエタリードライバー上で「egmde」は期待通り動作していませんでした。
「egmde」の修正が行われ、「egmde」は「mirclient API」から「Wayland」へ移行しました。
これにより「NVIDIA」のプロプライエタリードライバー上で「egmde」も動作するようになりました。
Snap版egmdeへの反映はまだ
以前から提供されているSnap版「egmde」に本修正はまだ反映されていません。またドライバーはオープンソースの「Mesa」のみ含まれている状況であり、「NVIDIA」のスタックをどのように提供するのが最善なのか、現時点で明確な決定はありません。
記事の更新
「egmde」に関する記事の追加や更新が行われました。以下の記事では、「Ubuntu 16.04 LTS」で「xdg-shell」を利用する時に発生する問題の回避策を紹介しています。
以下の記事では、従来の「mirclient」APIの利用を完全に無効化する方法を紹介しています。
Libhybris/Android
先日紹介したように「Ubuntu Touch OTA-7」がリリースされ、その中で次のアップデートとなる「Ubuntu Touch OTA-8」に関する構想が紹介されています。「Ubuntu Touch OTA-8」では「Mir 1.1」の採用が検討されています。
「Mir 1.1」では「mirclient」も「Wayland」も期待通り動作しており、またパフォーマンスも向上したとの報告が「Ubuntu Touch」の開発者から寄せられました。
ただし「Qualcomm」デバイスで動作がおかしい課題を抱えています。
「Ubuntu Touch OTA-8」では「Mir 1.1」の採用を検討しますが、「Unity8」クライアントプロセスを「mirclient」から「Wayland」へ移行する作業は、その後の将来的な話になるでしょう。
またモバイルデバイス上で動作する伝統的なデスクトップアプリケーションのサポートに関し特に方針や話題はありませんが、もしそのサポートを行うなら、「Wayland」をサポートした「Mir」により、サポート方法に新たな選択肢がもたらされます。
ARM Mali
「ARM Mali」は「GPU」です。「ARM Mali」上で「Mir」を動作させるための作業が行われました。
結果、「Pine64」上で「Mir」が動作したとの報告が寄せられています。
不具合の修正
以下の「Mir」の不具合が修正されました。- When installed from the ppa, mir_performance_tests fails
- "make clean" removes checked-in generated files from the working copy