32bit版(i386/x86)の提供終了へ
「Ubuntu 19.10」以降、32bit版(i386/x86)のパッケージ(ソフトウェア)は提供されなくなります。x86
「x86」は、主に昔のデスクトップPCやノートPCが採用していたCPUのアーキテクチャーです。いわゆる「Ubuntu 32bit版」がこれに該当します。
今時のデスクトップPCやノートPCが採用しているCPUのアーキテクチャーは「x86_64/x64」です。
いわゆる「Ubuntu 64bit版」がこれに該当します。
昨年の議論
昨年「Ubuntu」の開発コミュニティーは、「i386」をUbuntuアーカイブに継続的に残していくかどうか検討しました。アップグレードパスの提供中止
当時の議論では最終的な判断は行われていませんでしたが、「Ubuntu 20.04 LTS」で「i386」の提供を終了する可能性が十分にあり、「Ubuntu 18.04 LTS 32bit版」で「Ubuntu 18.10 32bit版」以降へのアップグレードパスの提供を中止しました。「Ubuntu 18.10」から「Ubuntu 19.10」は通常リリースであり、9ヶ月のサポート期間が提供されます。
そのため「Ubuntu 20.04 LTS」より前に32bit版の提供を中止すると、32bit版ユーザーは通常リリースの「Ubuntu」に留まってしまうことになり、9ヶ月という短いサポート期間内に移行作業を余儀なくされます。
一方「Ubuntu 18.04 LTS」はLTSリリースであり、5年間の無償サポート期間が提供されます。(2023年4月までサポート)
「Ubuntu 18.04 LTS」に留まってもらうことで、ユーザーに5年間の移行猶予が提供されます。
フレーバーのサポート期間
「Kubuntu 18.04 LTS」や「Xubuntu 18.04 LTS」等「Ubuntu」のフレーバーの殆どは、3年間のサポート期間を提供しています。そのため2021年4月までサポートが提供されます。
2019年2月の議論
2019年2月に本件の議論が再び行われ、2019年の半ばに最終的な判断を下すことになりました。そして今
そして2019年の半ばになりました。Ubuntuエンジニアリングチームは現状を精査し、「i386」の継続的な提供の中止を判断しました。
これを受け「Ubuntu 19.10」以降、32bit版(i386/x86)のパッケージ(ソフトウェア)は提供されなくなります。
今後「Ubuntu 19.10」から「i386」を無効化する作業が行われます。
32bit版提供中止に伴うFAQ
32bit版提供中止に伴うFAQです。1.i386って何?
「i386」は「Ubuntu」や「Debian」そしてその他Linuxディストリビューションが内部的に使用しているアーキテクチャー名です。「i386」は多くのIntel CPU及びIntel互換CPUで使用されている32bitの命令セットです。
一般的にLinuxディストリビューションで「i386」版をインストールすると、「i386」向けにビルドされた「Linux kernel」やアプリケーションそしてライブラリーを実行できます。
一方「amd64」は64bitアーキテクチャーを指す名称として広く利用されているアーキテクチャー名です。
「amd64」という名称ですが、AMD CPUだけでなくIntelや互換CPUメーカーが製造するCPUでも利用可能なアーキテクチャーです。
これらのアーキテクチャー名をもっと一般化して表現すると、「i386」は32bit命令セットである「x86」と表現され、「amd64」は64bit命令セットである「x86_64」や「x64」と表現されます。
しかし「Ubuntu」では内部的に「i386」や「amd64」という名称を利用しています。
2.32bit版のみ開発しているアプリの開発者だけど、どうやってアプリをビルドしてUbuntuユーザーに提供すれば良い?
アプリをSnapパッケージでリリースする方法が推奨されます。「core18」ランタイムを利用すれば、既存の「Ubuntu 18.04」のアーカイブ経由で32bit版の動作がサポートされます。
3.Ubuntu 16.04 LTS/Ubuntu 18.04 LTS 32bit版をインストールしてるけど、どんなアップグレードオプションがある?
「Ubuntu 18.04 LTS」は標準セキュリティーサポート(無償)が2023年4月まで提供されます。セキュリティーサポートが提供されている間は、それぞれのバージョンに留まることができます。また「Ubuntu 16.04 LTS 32bit」は「Ubuntu 18.04 LTS 32bit」にアップグレード可能です。
この期間は2020年4月にリリース予定の「Ubuntu 20.04 LTS」や2022年4月の「Ubuntu 22.04 LTS」を見越しても32bitのアプリから移行するのに十分な期間となります。
またどうしても32bitアプリを利用する必要があるなら、「Ubuntu 18.04 LTS 32bit版」のコンテナーや仮想マシンを64bit環境上で利用する方法もあります。
4.64bit版のUbuntuが動作しないハードウェアなんだけど、どんな選択肢がある?
「Ubuntu 18.04 LTS 32bit」やそのフレーバーを利用する方法があります。「Ubuntu 18.04 LTS」はLTSリリースであり5年間の無償サポート期間が提供され、2023年4月まで利用できます。
「Kubuntu 18.04 LTS」や「Xubuntu 18.04 LTS」等「Ubuntu」のフレーバーの殆どは、3年間のサポート期間を提供しています。
そのため2021年4月までサポートが提供されます。
また新しいPCを購入する方法もあります。
ここ10年で販売された多くのデスクトップ及びノートPCは、64bitをサポートしています。
Intel CPUの詳細は以下を参照してください。
AMD CPUの詳細は以下を参照してください。
5.フレーバーを利用している場合、どうなるの?
「Kubuntu」や「Xubuntu」、「Lubuntu」といった「Ubuntu」の公式フレーバーを利用している場合、フレーバーは「Ubuntu」と同じ共通基盤を利用して構築されているため、これらのフレーバーでも32bitの提供は無くなります。32bitのフレーバーがどうしても必要な場合、18.04 LTSのフレーバーを利用してください。
6.Ubuntuの派生ディストリビューションはどうなる?
派生ディストリビューションとは、「Linux Mint」や「Pop!_OS」、「Zorin」といった「Ubuntu」から派生したLinuxディストリビューションのことを指します。「Ubuntu」のアーカイブに依存し、32bit版を提供している派生ディストリビューションも影響を受けます。
「Ubuntu 18.04 LTS」から派生したディストリビューションなら、「Ubuntu 18.04 LTS」は32bit版をサポートしているため、派生ディストリビューションでも32bit版の提供が可能です。
しかし派生ディストリビューションの中には、すでに64bit版のみ提供している派生ディストリビューションもあります。
現在32bit版を提供している派生ディストリビューションは今後「Ubuntu」と同様に、32bit版の提供を中止する可能性があります。
7.Steamって32bitライブラリー使ってない?ゲームをプレイできるの?
「Steam」は「Steam」クライアントの動作に必要な32bitのライブラリー群を含んでいます。加えて「Steam」経由でインストールするゲームは、動作に必要な32bitライブラリーも一緒に配布できる可能性があります。
「Ubuntu Desktop」開発チームは、「Valve」と「Ubuntu 19.10」以降のサポートに関し協議しています。
LXDコンテナー内で「Ubuntu 18.04 LTS 32bit」を動作させ、その上で32bit版しか提供されないゲームを実行する方法も可能でしょう。
GPUをコンテナーにパススルーし、32bit環境でゲームを動かす方法です。
8.32bit版Wineが利用できないなら、32bit版のWindowsアプリはどうやって動かすの?
まず64bit版の「Wine」を利用してみてください。多くのアプリはそのまま動きます。
もし動作しないなら、仮想マシンやLXDコンテナー内で「Ubuntu 18.04 LTS 32bit」を動かし、その上で32bitアプリを動かすことになります。
9.32bitのプロプライエタリーアプリケーション持ってるんだけど、64bit環境でどうやって動かすの?
仮想マシンやLXDコンテナー内で「Ubuntu 16.04 LTS 32bit」や「Ubuntu 18.04 LTS 32bit」を動かし、その上で32bitアプリを動かすことになります。10.何故なの?何故今なの?青天の霹靂だわ!
本件は以前から「ubuntu-devel」メーリングリストで議論されてきたことであり、また「i386」の提供中止の決定は1年以上かけて考えられてきたことです。「i386」アーキテクチャーのサポートを「Ubuntu」がサポートしている他のアーキテクチャーと同様にメンテナンスすることはもはや困難です。
アップストリームの「Linux kernel」やツールチェーン、ウェブブラウザーの中には、十分な「i386」のサポートを提供していないケースもあります。
また32bit版における最新のセキュリティー機能や脆弱性の影響を軽減する機能の開発は、64bit版のようにタイムリーに開発されていません。
さらにi386アーカイブ(パッケージ/ソフトウェア)のメンテナンスは、開発者やQAに多大なコストを要求しますが、32bitハードウェアの利用者は少なく、今後も減少していきます。
「Ubuntu」のインストールベースの内「Ubuntu 32bit版」がインストールされる割合は約1%程度です。
これらを含めユーザーに十分な品質のソフトウェアを継続的に提供していくことが困難な状況になっています。
また「i386」のメンテナンスをやめることで、「amd64」への注力を強化することもできます。