Ubuntu 19.10の新機能と変更点
リリースノートから「Ubuntu 19.10」の新機能と変更点を紹介します。ここでは主に「Ubuntu Desktop 19.10」の内容を中心にピックアップします。
「Ubuntu 19.10」のリリースノートは以下で参照できます。
- ReleaseNotes
- ReleaseNotes(日本語)
リリース情報
「Ubuntu 19.10」のリリース情報は、以下を参照してください。Ubuntu全般
「Ubuntu 19.10」全般に関する内容です。1.サポート期間
「Ubuntu 19.10」は通常リリースであり、リリースされてから9ヶ月間のサポートが提供されます。つまり2020年7月までサポートが提供されます。
長期サポートが必要なユーザーは、最新のLTS版である「Ubuntu 18.04 LTS」を利用してください。
「Ubuntu 18.04 LTS」は2023年4月まで無償サポートが提供されます。
また「ESM」によりさらにサポート期間を5年間延長できる有償サポートサービスも提供されています。
2.32bit版(i386)はアップグレード不可
「Ubuntu 32bit版」を利用しているユーザーは、「Ubuntu 19.10」へアップグレードすることはできません。また「Ubuntu 19.10 32bit版」のディスクイメージはリリースされていませんし、サポートもされていません。
OSとしての「Ubuntu 32bit版」の提供は終了しました。
「Ubuntu 32bit版」を利用しているユーザーは「Ubuntu 18.04 LTS」に留まることになります。
3.Linux kernel 5.3採用
「Ubuntu 19.10」は「Linux kernel 5.3」ベースの「Linux kernel」を採用しています。これにより、ハードウェアのサポートが大幅に改善・改良されています。
ハードウェアのサポート改善
「AMD Navi GPU」や新しいARMのSoCのサポート、そして「ARM Komeda display」のサポートが行われています。また「Xeon」サーバーでは「Intel Speed Select」がサポートされています。
開発者向けの変更点
開発者向けの変更点としては、「pid」の再使用による競合を回避するための「pidfd」のサポートが行われています。また新しいMount APIの導入や、非同期I/O向けの「io_uring」インターフェースが導入されています。
カーネルの圧縮アルゴリズムの変更
起動時間を改善するため、デフォルトのカーネルの圧縮アルゴリズムが多くのアーキテクチャーで「lz4」に変更されています。また「initramfs」の圧縮アルゴリズムは、すべてのアーキテクチャーで「lz4」に変更されています。
その他アップストリームの変更点
「Ubuntu 19.04」では「Linux kernel 5.0」ベースの「Linux kernel」を採用していたため、3回分のバージョンアップが行われています。アップストリームの「Linux kernel 5.1」から「Linux kernel 5.3」の変更点は、以下を参照してください。
4.ツールチェインのアプデート
「Ubuntu 19.10」では以下のようにツールチェインがアップデートされています。- glibc 2.30
- OpenJDK 11
- rustc 1.37
- GCC 9.2
- Python 3.7.5
- Python 3.8.0(インタープリターのみ)
- ruby 2.5.5
- php 7.3.8
- perl 5.28.1
- golang 1.12.10
5.セキュリティーの改善
「Ubuntu 19.10」の「GCC」では、「Stack Clash Protection」や「Control-flow Integrity Protection」などセキュリティーを向上させるオプションが有効になっています。「main」に配置されているほぼすべてのパッケージは、この利点を活用するためリビルドされています。
6.その他ソフトウェアのアップデート
以下のようにソフトウェアがアップデートされています。- QEMU 4.0
- libvirt 5.6
- DPDK 18.11.2
- Open vSwitch 2.12
- MySQL 8.0
- cloud-init 19.2
7.Raspberry Pi 4のサポート
「Ubuntu 19.10」の「Raspberry Pi」向けイメージ(raspi3)は、「Raspberry Pi 4」プラットフォームをサポートしました。(32bit版/64bit版)これによりモダンなほぼすべての「Raspberry Pi」ファミリーをサポートしました。
- Pi 2
- Pi 3B
- Pi 3B+
- CM3
- CM3+
- Pi 4
8.KVMに最適化したゲストイメージ
「amd64 qcow2」イメージが新規に追加されました。Daily Buildのイメージ名は「eoan-server-cloudimg-amd64-disk-kvm.img」です。
またこのイメージは「linux-kvm」カーネルを含んでいます。
このイメージを利用すれば特定のKVMハイパーバイザーで起動時間の短縮など使い勝手が向上します。
Ubuntu Desktop
「Ubuntu Desktop 19.10」に関する内容です。1.GNOME 3.34
デスクトップ環境に「GNOME 3.34」を採用しています。「GNOME 3.34」では数多くの不具合が修正され、新機能の導入や応答性及びパフォーマンスの大幅な向上が行われています。
パフォーマンスの改善
高くそしてスムーズなフレームレートを実現しています。またXorg利用時に多くのGPUドライバーで出力遅延が抑えられています。
タッチパッドによるスクロールやキーボードと言った入力デバイスでは、入力遅延が抑えられています。
さらにCPUの使用率も抑えられています。
GNOME 3.34の変更点
「GNOME 3.34」の変更点は、以下を参照してください。2.Dockの改善
USBドライブの接続及びアクセスが「Dock」から直接行えるようになりました。3.新しいYaruテーマ
「Yaru」テーマでは、ライト系のテーマとダーク系のテーマを利用できるようになりました。テーマの切り替えは「GNOME Tweaks」から行えますが、デフォルトで「GNOME Tweaks」はインストールされていないため、別途「GNOME Tweaks」をインストールしてからテーマの切り替えを行ってください。
4.DLNA共有のサポート
デフォルトでDLNA共有がサポートされました。動画をスマートTVと共有して利用することができます。
5.Xwayland上で動作するアプリをrootで起動可能に
「Xwayland」上で動作するアプリを「root」で起動できるようになりました。6.WPA3のサポート
「WPA3(Wi-Fi Protected Access 3)」がサポートされました。7.deb版Chromiumの提供終了とSnap版Chromiumへの移行
「Ubuntu 19.10」ではdebパッケージ版の「Chromium」は提供されません。「Chromium」の提供はSnapパッケージ版の「Chromium」に移行しました。
詳細は以下を参照してください。
8.ZFS on root
「ZFS」をルートファイルシステムとして利用できるようになりました。ZFSファイルシステムとパーティションの作成及びそれらレイアウトは、インストーラーが自動的に作成や設定を行います。
ただし「Ubuntu 19.10」では、この機能は実験的な機能です。
詳細は以下を参照してください。
9.NVIDIA GPUドライバーの同梱
ディスクイメージにNVIDIA GPUドライバーが含まれるようになりました。NVIDIA GPUドライバーによりOS起動時に発生し得るトラブルを回避し、起動に関する安定性が改善されます。
- Ubuntu login screen sometimes doesn't appear on a single GPU Nvidia system (and setting WaylandEnable=false fixes it)
- Ubuntu boots to blank screen when using Nvidia (on a desktop with an unused Intel GPU)
また描画の滑らかさが改善され、フレームレートも改善されます。
10.その他ソフトウェアのアップデート
以下のようにソフトウェアがアップデートされています。- LibreOffice 6.3
- Firefox 69
- Thunderbird 68
- PulseAudio 13.0
既知の問題
既知の問題です。1.NVIDIAプロプライエタリードライバーとWaylandの利用
NVIDIAプロプライエタリードライバーで「Wayland」を利用する場合、以下のように不具合があり、推奨するものではありません。それでも「Wayland」を試すなら、別途以下の作業を行う必要があります。
- カーネルパラメーターに「nvidia-drm.modeset=1」を追加
- 「/usr/lib/udev/rules.d/61-gdm.rules」ファイルから「nvidia」の行をコメントアウト
- 「2.」の時点で以下の不具合が発生する可能性があります。その場合は「BIOS」の統合グラフィック/GPU機能を無効にする必要があるかもしれません。
2.Xorgで分数スケーリング利用時に発生する現象
「Xorg」セッションで「分数スケーリング(Fractional scaling)」を有効にすると、パフォーマンスの低下やスクリーンのティアリングが発生する可能性があります。この場合スケール値を100%の倍数にするか、「Ubuntu on Wayland」でログインし「Wayland」を使用してください。
3.ライブセションの起動に時間がかかる
古いハードウェアで遅いメディアを使用してライブセッションを起動する場合、ライブセッションの起動に数分かかる可能性があります。4.確認ダイアログにZFSではなくext4と表示される
「ZFS」で「Ubuntu」をインストールする際、ディスクに変更を書き込むか確認するダイアログで、「ext4」パーティションを作成するとのメッセージが表示されます。最終的に「ZFS」が作成されます。
5.ログイン画面でシャットダウンや再起動ができない
ログイン画面でシャットダウンや再起動を選択しても、シャットダウンや再起動は行われません。6.ドライブの選択とブートローダーの選択が一致しない
複数のドライブを持つシステムに「Ubuntu」をインストールする際、2番目以降のドライブを選択すると、ドライブの選択とブートローダーの選択が一致しない現象が発生することがあります。この現象が発生すると、OSを起動できなくなります。
この問題を回避するには、以下の手順を実施します。
- 「インストールの種類」で「その他」を選択します。
- 「ブートローダーをインストールするデバイス」でブートローダーのインストール先デバイスを選択します。
- 「戻る」ボタンをクリックします。
- 後はいつも通りにインストーラーによるインストール方法を選択し、インストール先デバイスを選択してインストールします。
これで期待するドライブにルートファイルシステムの作成とブートローダーのインストールが行われます。