Ubuntu MATE 19.10の新機能と変更点
リリースノートから「Ubuntu MATE 19.10」の新機能と変更点を紹介します。「Ubuntu MATE 19.10」は品質の向上に大きな焦点があてられました。
QAチームの大幅な拡大や積極的なテストにより、UXの低下につながる不具合の発見と修正が行われ、安定性と品質が向上しています。
「Ubuntu MATE 19.10」のリリースノートは以下で参照できます。
リリース情報
「Ubuntu MATE 19.10」のリリース情報は、以下を参照してください。1.MATE Desktop 1.22.2
デスクトップ環境に「MATE Desktop 1.22.2」を採用しています。「MATE Desktop 1.22」の変更点は以下を参考にしてください。
また「Ubuntu MATE 19.10」で採用している「MATE Desktop 1.22.2」には、開発版のスナップショットから有用な修正がバックポートされています。
「Ubuntu MATE 19.10」の「MATE Desktop」パッケージには、67の追加パッチが適用されており、このパッチには以下の修正が含まれています。
- サスペンドから復帰した時に発生するスクリーンのロックに関する修正
- ファイルマネージャーにメディア情報拡張の追加
- ウィンドウマネージャーのパフォーマンス改善
- Super + Pキーによる外部ディスプレイ循環切り替え機能追加
2.MATE Desktopの修正
「Ubuntu MATE 19.10 β版」以降、以下の修正が行われました。- HiDPI環境で発生するウィンドウコントロールの描画に関する不具合の修正
- MATEコントロールセンターで不適切なアイコンサイズの修正
- HiDPI環境でMATEコントロールセンターの描画改善
- Caja拡張がロードされない不具合の修正
- 「mate-power-manager」が「upower-glib」の「get_devices2()」を使用するように修正
- Plumaプラグインがロードされない不具合の修正
- 「MATE Dock Applet」が「adjust_minimise_pos()」でクラッシュする不具合の修正
- 「gnome-keyring」が「mate-session-manager」でタイムアウトする不具合の修正
- 「Software Boutique」のコーデックのアップデートに関する修正
- 「Advanced MATE Menu」のアイコンに「start-here」を使用し、すべてのメニューの一貫性を確保
- 「Ubuntu MATE Guide」のアップデート
- 「Ubiquity(インストーラー)」のスライドショーのアップデート
3.ZFS on root
「Ubuntu 19.10」と同様にインストーラーで「ZFS on root」のオプションがサポートされています。ただしこの機能は実験的な機能です。
詳細は以下を参照してください。
Marcoの改善
「Marco」に新機能の追加や不具合の修正が行われています。「Marco」は「MATE Desktop」向けのウィンドウマネージャーです。
1.XPresentのサポート修正
「XPresent」のサポートが修正され、スクリーンティアリング(ちらつき)が発生しなくなりました。2.不可視ウィンドウコーナー
不可視のウィンドウコーナーにより、ウィンドウのリサイズがもっと簡単に行えるようになりました。今までのようにウィンドウの端に正確にマウスカーソルを合わせなくても、ウィンドウのリサイズが可能です。
3.HiDPIのサポート改善
様々なテーマやコンポーネントで発生していたHiDPI環境における描画に関する問題が修正されました。例えばウィンドウのコントロールがHiDPI環境で綺麗に描画されるようになりました。
左が修正前で、右が修正後です。
違いが顕著ですね。
4.ナビゲーション
「Alt + Tab」によるナビゲーションでは、キーボードやマウスでアプリを切り替えられます。5.メニューボタンの削除
ウィンドウのコントロールからメニューボタンが削除されました。メニューは、ウィンドウのタイトルバーを右クリックするか、「Alt + Space」で表示できます。
CompizとCompton
「Compiz」と「Compton」は、デフォルトのインストールから外されました。「Marco」の改良や「Magnus」が提供する機能により、これらのソフトウェアが提供している機能を十分に実現できること、そしてこれらのソフトウェアは「MATE Desktop」との組み合わせで発生する不具合や統合に関する問題があり、デフォルトでインストールする積極的な理由がなくなったためです。
またウィンドウマネージャーを1つに絞ることで新機能の開発など効果的に開発リソースを活用できるようになります。
Compizが必要なら
「Compiz」が必要なら、以下のコマンドで「Compiz」をインストールすることも可能です。
sudo apt install compiz compiz-core compiz-mate compiz-plugins compiz-plugins-default
新しいキーバインディング
キーバインディング(ショートカットキー)の見直しが行われました。1.ウィンドウの配置
内容 | キーバインディング |
---|---|
ウィンドウの最大化 | Super + ↑ |
ウィンドウの復元 | Super + ↓ |
ウィンドウを右側に配置 | Super + → |
ウィンドウを左側に配置 | Super + ← |
ウィンドウを中央に配置 | Alt + Super + C |
ウィンドウを右上に配置 | Alt + Super + → |
ウィンドウを左上に配置 | Alt + Super + ← |
ウィンドウを右下に配置 | Shift + Alt + Super + → |
ウィンドウを左下に配置 | Shift + Alt + Super + ← |
ウィンドウのシェード切り替え | Ctrl + Alt + S |
2.アプリの起動やシステム操作
内容 | キーバインディング |
---|---|
外部ディスプレイの循環切り替え | Super + P |
スクリーンのロック | Super + L |
矩形のスクリーンショット | Shift + PrintScreen |
ファイルマネージャーの起動 | Super + E |
端末の起動 | Super + T |
コントロールセンターの起動 | Super + I |
ファイル検索の起動 | Super + S |
タスクマネージャーの起動 | Ctrl + Shift + ESC |
システム情報を開く | Super + Pause |
また従来の「Ctrl + Alt + T」キーによる「端末」の起動や、「Ctrl + Alt + L」キーによるスクリーンのロックも利用可能です。
「Ubuntu MATE」で利用可能な全てキーバインディングは、「Ubuntu MATE Welcome(ようこそ)」の「始めましょう」から確認できます。
パネルとインジケーターの改善
パネルとインジケーターに関する改善です。1.Brisk Menu
「Brisk Menu」では、以下の修正を含む改善や不具合の修正が行われています。- 頻繁にクラッシュする不具合の修正
- メニューのカテゴリーカラムは必要に応じてスクロールバーを表示するように修正
- メニューエントリーをロールオーバーした時に音が鳴らないように修正
2.MATE Dock Applet
「MATE Dock Applet」は、頻繁にクラッシュする不具合の修正やその他不具合の修正が行われています。3.MATEパネル
MATEパネルでは、パネルのリセット時やパネルの置き換え時にクラッシュする不具合が修正されています。この修正によりパネルレイアウトの切り替え時にクラッシュしてレイアウトが中途半端になる現象が起きなくなりました。
また「MATE Tweak」は修正されたMATEパネルの振る舞いに沿うように修正され、パネルレイアウトの切り替えは100%安定しています。
4.インジケーターのアイコンサイズ
インジケーターによってはインジケーターのアイコンが非常に大きく表示される不具合がありました。この不具合が修正され、適切なサイズでアイコンが表示されるようになりました。
5.日付インジケーター
日付インジケーターが追加され、時計アプレットが日付インジケーターに置き換えられました。日付インジケーターはMATE Desktopと統合され、時計とセッションインジケーターの配置位置を調整します。
6.インジケーターとアプリで使用するアイコンの区別
モノクロのシンボリックアイコンの中には、インジケーターだけでなくアプリのアイコンとしても利用されているケースがあります。このようなケースでは、ウィンドウのベースからに対し見づらさが感じられる状況や、モノクロのシンボリックアイコンとフルカラーのアイコンの混在により見た目の一貫性に欠く状況がありました。
この問題が修正されました。
モノクロのシンボリックアイコンはインジケーターでのみ使用されるようになり、フルカラーのアイコンはコントロールセンターやサウンド設定などにのみ使用されるようになりました。
7.MATE Window Applets
「MATE Window Applets」は、現在選択されているテーマから動的にウィンドウコントロールアイコンを読み込むようになりました。これによりユーザーによる手動設定が必要なくなりました。
またメモリーリーク等不具合の修正が行われています。
8.その他の修正
- ネットワークステータスアイコンが2つ表示される不具合の修正
- VPN接続時、ネットワークインジケーターのアイコン上にロックアイコンを表示
- バッテリーインジケーターの改良と充電時に大きめの充電中シンボルの表示
9.通知センター
通知センターを提供する新しいインジケーターが追加されました。「indicator-notifications」は新機能の追加や「MATE Notifications Daemon」との統合が行われています。
通知ポップアップの表示をオフにする「do not disturb」機能が搭載されています。
通知の内容は通知センターに捕捉されるため、後から通知内容を確認することも可能です。
通知のブラックリスト
通知のブラックリストもサポートし、ブラックリストの対象になる通知は通知センターに保存されなくなります。通知ヒント
通知ヒントの修正も行われ、通知にアイコンやサウンドなど追加メディアを設定できるようになりました。Evolutionの採用
デフォルトのメールクライアントが「Thunderbird」から「Evolution」に変更されました。「Evolution」自身はPIMアプリケーションであり、メールだけでなくスケジュール管理やアドレス帳管理など、広範な機能を提供します。
「MATE Desktop」との統合や「LibreOffice」との相互運用、ディスクイメージのサイズ削減につながるなどの利点を考慮し、「Evolution」が採用されました。
日付インジケーターとの連携
日付インジケーターとも連携でき、イベントの作成やイベントの確認をインジケーターから行えます。Thunderbirdも引き続き利用可能
もちろん引き続き「Thunderbird」は提供されているので、後からインストールすることも可能です。「Thunderbird」と「Evolution」のインストールやアンインストールは、「Software Boutique」から簡単に行なえます。
GNOME MPVの採用
デフォルトのメディアプレーヤーが「VLC」から「GNOME MPV(Celluloid)」に変更されました。「GNOME MPV」の方が「MATE Desktop」環境と統合し易く、ディスクイメージのサイズ削減につながっています。
「GNOME MPV」のデフォルトのUIはCSDを使用しないように変更され、「MATE Desktop」環境に合うUIになっています。
サウンドインジケーターとの連携
「GNOME MPV」は「MPRIS」を実装しており、サウンドインジケーターと連携して動作できるようになっています。VLCも引き続き利用可能
もちろん引き続き「VLC」は提供されているので、後からインストールすることも可能です。「VLC」のインストールは、「Software Boutique」から簡単に行なえます。
ディスクイメージサイズの最適化
NVIDIA GPUドライバーをディスクイメージに同梱したことで、約115MBほどディスクイメージサイズが増加します。NVIDIA GPUドライバーの同梱は、NVIDIA GPUを利用するユーザーにとって大きな価値があるものですが、その一方でディスクイメージのサイズを抑えるには、最適化が必要になります。
1.Braseroの削除
デフォルトのインストールから「Brasero」が外され、ディスクイメージからも「Brasero」が削除されました。引き続き「Brasero」は提供されているので、後からインストールすることも可能です。
「Brasero」のインストールは、「Software Boutique」から簡単に行なえます。
2.ディスクイメージに含める言語パッケージの変更
ディスクイメージに含める言語パッケージの変更されました。中国語、日本語、インド語がディスクイメージから削除され、ロシア語が追加されました。
これは統計データに基づいた判断です。
ディスクイメージには、以下の言語パッケージが含まれています。
- 英語
- スペイン語
- ポルトガル語
- ドイツ語
- フランス語
- イタリア語
- ロシア語
日本語が含まれていなくてもインストーラーは日本語で利用できますし、インターネットに接続した状態でインストールすれば、インストール後の環境は日本語になります。
3.その他
- 気象観測所データベースのフォーマットを変更し、サイズを15MB削減
- Qt 4コンポーネントの削除
- fcitxをライブ環境から削除
- ship-live seedから古いソフトウェアの削除
- 「usb-creator-gtk」をデフォルトのインストールから削除(GNOME Disksで代用可)
- 「Ubuntu MATE Welcome」と「Software Boutique」Snapsのサイズ削減
- デフォルトのテーマ、アイコンテーマ、壁紙のバックカタログの画像データの最適化
その他
その他の変更点です。1.NVIDIA GPUドライバーの同梱
ディスクイメージにNVIDIA GPUドライバーが同梱されており、インストーラーでサードパーティー製のソフトウェアをインストールするオプションを有効にしてインストールすれば、オフラインインストールでもNVIDIA GPUドライバーのインストールが可能です。このNVIDIA GPUドライバーは署名されているため、セキュアブート環境でも利用可能です。
ハイブリッドグラフィックス
ハイブリッドグラフィックスをサポートする環境なら、「MATE Optimus hybrid graphics applet」が表示されます。2.ZFS on root
「Ubuntu 19.10」と同様にインストーラーで「ZFS on root」のオプションがサポートされています。ただしこの機能は実験的な機能です。
詳細は以下を参照してください。
3.MATE Tweak
「MATE Tweak」は、カスタムレイアウト間の切替時にユーザー設定を保持するようになりました。4.Ubuntu MATE Welcome
「Ubuntu MATE Welcome」からデスクトップレイアウトを変更できるようになりました。5.Magnus
「Magnus」はスクリーンの一部を拡大表示するソフトウェアです。マウスポインター周辺を別のウィンドウに拡大表示します。
「Magnus」がデフォルトでインストールされています。
6.Ubuntu MATEテーマ
Ubuntu MATEテーマが他のSnapアプリから使われる「gtk-common-themes」に追加されました。これによりSnapアプリでUbuntu MATEのテーマが適用できるようになりました。
この改善は「Ubuntu MATE 16.04」にも適用される改善です。
不具合の修正
- ツリービューのエクスパンダ―のサイズが適切なサイズになり、クリックしやすくなりました。
- CSD上でウィンドウコントロールが適切な位置で配置されるようになりました。
既知の問題
既知の問題です。1.Caja dropboxが動作しない
「Dropbox」が配布している「libdropbox_apex.so」共有オブジェクトのファイルパーミッションが間違っており、Caja dropboxが動作しません。- Caja dropbox does not start because of some updates in the binary part - complains about libdropbox_apex.so
- How to fix `libdropbox_apex.so` problem with latest Dropbox?
この問題を回避するには、以下のコマンドを実行します。
sudo chmod a+rx /var/lib/dropbox/.dropbox-dist/dropbox-lnx.x86_64-*/libdropbox_apex.so