Yaruテーマの取り組みと改良
「Ubuntu」では「Ubuntu 18.10」以降、UIのテーマにコミュニティーが主導して開発している「Yaru」テーマを採用しています。「Yaru」は日本語の「やる」から名付けられた名称です。
さて「Yaru」テーマは、2020年4月にリリース予定の「Ubuntu 20.04 LTS」でさらなる改良が施されます。
テーマは、画面上で表示するUIのカラーリングやボーダー(枠)、影、サイズ、そしてUI要素(パーツ)の形状を定義するものです。
Yaruチームの取り組み
「Yaru」の開発チームは先週、Canonical DesignチームやUbuntu Desktopチームと「Yaru」の開発計画をすり合わせるため、ロンドン(Canonicalのオフィス)に訪れミーティングを行いました。Yaruが利用できるのはUbuntuだけじゃない
「Yaru」チームの取り組みにより、「Yaru」テーマは「Ubuntu」だけでなく「Fedora」や「Arch Linux」でも利用可能になっています。また昨年の10月、「Pop! OS」は「Yaru」をベースにテーマを開発しています。
FlatPakにも展開予定
「GNOME」や「GTK」を利用して開発を行っている開発者には、「Ubuntu」以外のディストリビューション上でアプリの開発を行っている開発者もいます。これらアプリ開発者は「Ubuntu」ユーザー向けにアプリを提供する際、「Ubuntu」の「Yaru」テーマでもアプリが適切に描画され、ユーザーに適切なUXを提供したいと考えています。
しかしアプリのテストを行うには、デュアルブートや仮想マシンを利用して「Ubuntu」環境を構築し、テスト用の環境を揃える必要があります。
この状況を手助けするため、「FlatPak」向けに「Yaru」テーマが提供される予定です。
Adwaitaとの互換性を維持する取り組み
「Yaru」テーマ使用時にアプリのデザインに発生し得る非互換を最小限に抑えるため、「Yaru」チームは昨年から、アップストリームの「Adwaita」テーマとより緊密に連携できるよう取り組んでいます。「GitHub Actions」の導入により、「Yaru」チームは自動的にアップストリームの「Adwaita」テーマの各変更を、「Yaru」リポジトリー上でプルリクエストとして受け取れるようになっています。
「Yaru」チームはこれにより「Adwaita」テーマの最新の変更に追従し、「Yaru」と「Adwaita」の乖離を抑えるのに役立てています。
Yaruに対する要望
「Yaru」テーマでは、「Linux Mint」や「Manjaro」、そして「Ubuntu」のフレーバーが使用しているカラーリングを採用したバリエーションが欲しいとの要望も受けています。カラーリングの変更
「Ubuntu 20.04 LTS」では、「Yaru」テーマに見た目の変更が入ります。主な変更点は、 チェックボックスとラジオボタン、そしてスイッチのカラーリングが、緑から「Ubuntu aubergine(濃い紫色)」に変わることです。
イメージの後ろにある画面が現在のカラーリングで、前面にある画面が変更後のカラーリングです。
ダークとライトとその中間
今から約10年前にリリースされた「Ubuntu 10.04 LTS」では、2種類のカラーバリエーションを持つテーマを提供し、ユーザーは好みのカラーリングを選択できるようになっていました。それはカラーリングに暗い色を採用した「Ambiance」テーマと、カラーリングに明るい色を採用した「Radiance」テーマです。
「GNOME 3.0」で提供している「Adwaita」テーマにはこのようなバリエーションがなく、カラーバリエーションがない1つのテーマを提供しています。
これは「GNOME」が意図して設計したデザインです。
しかしその後「macOS」や「Windows」でも「Ubuntu」と同様のアプローチが採用され、ダーク系のテーマとライト系のテーマが選択できるようになりました。
カラーバリエーションと切り替え
「Ubuntu 20.04 LTS」では、ダークカラーのバリエーションと、ダークなヘッダーと明るいコントロールカラーを組み合わせたデフォルトのバリエーション、そしてライトカラーのバリエーションが利用可能になります。(以下は「Ubuntu 19.10」でのイメージです。 )
またこれらのカラーバリエーションを「設定」から簡単に切り替えられるように、設定項目の導入が検討されています。
またトップバーや通知ウィンドウといったシェル要素のテーマも切り替えられるようにしたいとのことです。
ユーザーがログインし直すことなくシェル要素のテーマを切り替えられるようにするには「GNOME Shell」の修正が必要になりますが、修正内容は現在調査中です。
フォルダーアイコン
「Yaru」テーマのダークカラーとライトカラーの両方で良好なコントラストを維持しつつ、Ubuntuのアイデンティティーの確保を目的に、代替フォルダーアイコンの調査・検討が行われています。参加のハードルを下げる
テーマのアーキテクチャーを解説するドキュメントの整備や、Ubuntuの各フレーバー向けに様々なカラーバリエーションをサポートするビルドシステムの構築など、人々が「Yaru」テーマの開発に容易に参加できるように取り組みが計画されています。「Yaru」チームはGNOME Designチームのミーティングに定期的に参加しています。
またこのミーティングには、Canonical DesignチームやUbuntu Desktopチームも定期的に参加しており、アップストリームとのより良い連携を実現することができます。