Unity8の名称変更へ
「Unity8」の名称が「Lomiri」に変わります。Unity8とは
「Unity8」は、デスクトップ環境及びシェルです。現在「Unity8」はモバイルデバイス向けOSである「Ubuntu Touch」に採用されています。
またかつては、「Ubuntu Desktop」で採用が検討されていたデスクトップ環境です。
元々「Unity8」は「Ubuntu」及び「Canonical」主導で開発が行われており、「Ubuntu Desktop」の次期デスクトップ環境になる予定でした。
当時「Ubuntu Desktop」はデスクトップ環境に「Unity7」を採用しており、その次のデスクトップ環境として「Unity8」を採用する予定でした。
しかし既報の通り「Unity7」の次に「Unity8」ではなく、「GNOME 3」が採用されました。
2017年10月にリリースされた「Ubuntu 17.10」で「Unity7」から「GNOME 3」に変更されました。
その時点で「Unity8」は「Ubuntu」及び「Canonical」の手を離れることになりました。
同時に「Ubuntu Touch」も「Canonical」の手を離れることになりました。
コミュニティーによる開発へ
「Canonical」の手を離れた「Unity8」及び「Ubuntu Touch」は、有志の人達が集まり、コミュニティー主導による開発へと移りました。そのコミュニティーが「UBports」です。
最初「Unity8」は別のコミュニティーが受け継いだのですが、その後紆余曲折あり、最終的に「UBports」に受け継がれました。
「UBports」は2015年に設立され、「Ubuntu Touch」を他のモバイルデバイスへ移植する取り組みを行っていたプロジェクト/コミュニティーですが、最終的に「Ubuntu Touch」及び「Unity8」の開発を主体的に行うプロジェクト/コミュニティーになりました。
また「UBports」では、法人化を目指す活動も行われています。
名称変更の理由
「Unity8」が「Canonical」の手を離れ約3年経ちました。今後様々なLinuxディストリビューションへの展開も見据え、「Unity8」の名称が「Lomiri」に変わります。
名称変更に関する議論では、常に名称を変更しないで欲しいとの反論を受けていまいたが、以下の理由により変更が決定されました。
1.Unityゲームエンジンと名称が衝突する
これが名称を変更した一番の理由です。要は紛らわしいということです。
「Unity」という名称は今や、ゲームエンジンの「Unity」を指すケースが一般的でしょう。
デスクトップ環境の「Unity」を調べたいユーザーにとって検索性が悪く、またゲームエンジンの「Unity」を調べたいユーザーにとってデスクトップ環境の「Unity」の情報は、不要な情報となります。
これは人々を混乱させる結果となり、この状況を解消するため名称の変更が必要であるとの判断に至っています。
2.ubuntuという名称を取り除くため
「Unity8」を構成するパッケージには、「ubuntu」という名称が含まれたパッケージが存在しています。例えば以下のパッケージが該当します。
- ubuntu-ui-toolkit
- ubuntu-download-manager
- qtubuntu
「Unity8」を様々なLinuxディストリビューションへ展開する際、「ubuntu」という名称が問題になるケースがあります。
「ubuntu」という名称が含まれたパッケージは受け入れられない可能性があると警告しているLinuxディストリビューションもあります。
この問題の解消も、名称変更の理由の一つとして挙げられています。
3.Unityが何を指しているのかわからない
「1.」とも関連しますが、会話でも文章でも「Unity」がどの「Unity」を指しているのか分かり辛い状況があります。「Unity」が「Unity7」を採用した「Ubuntu Unity」を指しているのか、それともゲームエンジンの「Unity」を指しているのか、ユーザーを混乱させる結果になります。
名称変更は外部から依頼されたものではない
今回の名称変更は、「Canonical」や「Ubuntu」コミュニティーなど外部から依頼されたものではなく、また法的な問題等から変更したものではありません。上記で挙げた理由から「UBports」が主体的に名称を変更しています。
名称が変わるソフトウェア
名称変更の対象になるソフトウェアは、プロジェクト名やパッケージ名に「ubuntu」や「unity」が含まれるものです。例えば以下のように変わります。
変更前 | 変更後 |
---|---|
unity8 | lomiri |
ubuntu-ui-toolkit | lomiri-ui-toolkit |
ubuntu-download-manager | lomiri-download-manager |
加えて各モジュールが外部に提供しているインターフェース名(API)も同様に変更されます。
例えば「QML」の「Ubuntu.Components」は「Lomiri.Components」に変更されます。
そのため「QML」アプリは、「import Ubuntu.Components 1.3」から「
import Lomiri.Components 1.3」へ修正する必要があります。
後方互換性の提供
近々「Ubuntu Touch」イメージでは、後方互換性を提供する予定です。ただし他のディストリビューションにアプリを提供する場合、変更後の新しいインターフェースを使用する必要があります。
名称変更作業
「lomiri-download-manager」など、すでに名称変更作業が行われています。現在「Debian testing/unstable」でビルドできるよう、コンポーネントのビルド準備や名称変更作業が行われています。
またアップストリームリポジトリーを「GitLab」へ移行する作業も行われています。
名称が変わらないソフトウェア
名称の変更作業には時間がかかります。そのため現在は、可能な範囲で対象プロジェクトを絞り、名称の変更作業を行っています。
現状以下のソフトウェアは、名称の変更予定はありません。
1.Ubuntu Touch関連
「Ubuntu Touch」は「Lomiri」を採用したモバイルデバイス向けOSです。「Ubuntu Touch」やアプリを配布する「OpenStore」、一部アプリの名称は変わりません。
2.名称にUnityやUbuntuを含まないコンポーネント
名称に「Unity」や「Ubuntu」を含まないコンポーネントは、名称が変わりません。そもそも名称を変更する必要がないためです。
例えば以下のコンポーネントやアプリが該当します。
- qtmir
- morph-browser
3.他のプロジェクトやディストリビューションに受け入られているコンポーネント
すでに他のプロジェクトで使用されているコンポーネントや、Linuxディストリビューションに受け入られているコンポーネントの名称は変わりません。例えば「gsettings-qt」は「D-Bus」の名前空間に「com.canonical.gsettings」を使用しています。
しかしこれはすでに「Debian」で受け入られている名称であり、そして「Deepin」デスクトップで使用されています。
Ubuntu Touchユーザーへの影響
今回の名称変更は、多くの「Ubuntu Touch」ユーザーに影響を与える変更ではありません。コンポーネント名の変更作業を行っても、ユーザーはその変化に気付くことはないでしょう。
「Ubuntu Touch」内で「Unity8」の名称が表に出ている場面がないためです。
その一方でパワーユーザーや一部アプリの開発者は、「Upstart」のジョブ名の変更や内部のAPI名変更に気付くかも知れません。
しかし「Ubuntu Touch」では後方互換性が提供されるため、影響はないでしょう。
質問や疑問は
名称の変更による影響に関し何かしら質問や疑問がある場合は、以下で質問を受け付けています。Unity7は無関係
本件は「Unity7」とは無関係です。そもそも「Unity7」は、サポート中の「Ubuntu 16.04 LTS」を除き、別のコミュニティーが開発を受け継いでいます。