デスクトップ環境をKDE Plasmaに変更
「Ubuntu Studio 20.10」では、デスクトップ環境が従来の「Xfce」から「KDE Plasma」に変更されます。Ubuntu Studio
「Ubuntu Studio」は、「DTM(音楽作成)」や動画作成などクリエーター向けに最適化された「Ubuntu」の公式フレーバー(OS)です。他の公式フレーバーと大きく異なる点の1つは、他の公式フレーバーは主にデスクトップ環境の選択に着目した開発ですが、「Ubuntu Studio」はデスクトップ環境の選択ではなくクリエーターに着目した開発である、という点です。
例えば「Xubuntu」はデスクトップ環境に「Xfce」を採用し、「Xfce」を好むユーザー向けに最適化されたフレーバーです。
他の多くのフレーバーも同様の観点で開発しています。
しかし「Ubuntu Studio」は、クリエーターに最高のUXを提供するために開発されているOSであり、デスクトップ環境の選択はその一環で行われているものです。
かつてKDE Plasma版もリリースする計画だった
今から約2年ほど前、「Ubuntu Studio」の開発チームはXfce版に加えKDE Plasma版の「Ubuntu Studio」もリリースする計画でした。しかしKDE Plasma版の「Ubuntu Studio」をリリースするには、新たなフレーバーとしてリリースするのと同様の手続きが必要であり、リソース規模の小さい開発チームでそのコストを受け入れるのは、あまりにも非現実的でした。
そのためこの計画は破棄されました。
Ubuntu Studio Installerに計画変更
そこで開発チームは「Kubuntu」等他のフレーバー上に「Ubuntu Studio」環境を構築できるようにするため、「Ubuntu Studio Installer」の開発に舵を切りました。「Ubuntu Studio Installer」によりユーザーは好みのデスクトップ環境上に「Ubuntu Studio」環境を構築できます。
「Ubuntu Studio Installer」が無くなることはありませんが、開発チームは「Ubuntu Studio」のデフォルトのデスクトップ環境を「KDE Plasma」に変更するという大きな決断に至りました。
Xfce版Ubuntu StudioはUbuntu Studio 20.04 LTSが最後に
Xfce版「Ubuntu Studio」は、「Ubuntu Studio 20.04 LTS」が最後になります。「Lubuntu」がそうだったようにデスクトップ環境の変更に伴い、「Ubuntu Studio 20.04 LTS」からそれ以降へのアップグレードは互換性がなくなります。
つまり「Ubuntu Studio 20.04 LTS」から「Ubuntu Studio 20.10」以降へのアップグレードはシステムが壊れる可能性があります。
KDE Plasma版Ubuntu Studio
「KDE」はデスクトップ環境だけでなく、「KDE」環境向けのアプリケーションも数多く開発しています。クリエーターに優れたアプリケーションを提供
「KDE」は「Gwenview」や「Krita」、「Dolphin」など、グラフィックアーティストや写真家にとって使いやすいアプリケーションを提供しています。加えてワコムタブレットのサポートが他のデスクトップ環境よりも優れています。
開発チームはすでにKubuntuを利用している
「Ubuntu Studio」の開発チームのほとんどは「Ubuntu Studio Installer」を利用して「Kubuntu」上に「Ubuntu Studio」環境を構築し、日々「Kubuntu」を利用しています。そのため「KDE Plasma」への移行タイミングは、今がちょうど望ましい時期になっています。
システムリソース
例えばオーディオ制作では、メモリーなどシステムリソースの使用状況に何ら変化はありません。またもしディスプレイコンポジターが何かしら問題を起こすならば、「Alt + Shift + F12」でディスプレイコンポジターを無効にすることも可能ですし、ログイン時に無効化することも可能です。
XfceとKDE Plasmaのメモリー使用量の比較
以下で「Xfce(Xubuntu 19.10)」と「KDE Plasma(Kubuntu 19.10/KDE Neon)」のメモリー使用量の比較が行われています。「Xubuntu 19.10」と「Kubuntu 19.10」の差は、約80MBほどです。
開発チームによる比較
開発チームが「Ubuntu Studio 20.04 LTS」とKDE Plasma版「Ubuntu Studio 20.10」デイリービルドのメモリー使用量を比較した所、前者が約620MB、後者が約670MBでした。50MB程度の差は「Ubuntu Studio」がクリエーター向けのOSであるという点を加味すれば、問題ないでしょう。
他のオーディオ制作向けLinuxディストリビューション
「Fedora Jam」や「KXStudio」などオーディオ制作に最適化されたLinuxディストリビューションでも「KDE Plasma」を以前から採用しており、十分な実績があります。移行作業はほぼ完了している
すでに「KDE Plasma」への移行作業はほぼ完了しており、現在はKDEテーマ(Materia)とアイコンテーマ(Papirus)の調整作業が行われています。またOSのインストーラーの修正作業が残っています。
「Kubuntu」のインストーラーを流用するのか、それとも別の新しいインストーラーを採用するのか、その検討も含め修正作業が行われます。