Linux Mint 20へアップグレードするには
2020年7月9日、「Linux Mint 19.3」から「Linux Mint 20」へアップグレードできるようになりました。「Linux Mint 19.3」から「Linux Mint 20」へアップグレードする方法を紹介します。
公式のアップグレード手順は、以下を参照してください。
1.アーキテクチャーの確認
まず現在利用してる「Linux Mint 19.3」のアーキテクチャーを確認します。Linux Mint 19.3 64bit版が対象
以前紹介したように「Linux Mint 20」では「Linux Mint 20 32bit版」を提供しておらず、「Linux Mint 20 32bit版」のサポートも行われていません。そのため現在「Linux Mint 19.3 64bit版」を利用しているユーザーのみ、「Linux Mint 20」へアップグレードできます。
Linux Mint 19.3 32bit版を利用しているユーザーは
現在「Linux Mint 19.3 32bit版」を利用しているユーザーは、そのまま「Linux Mint 19.3」を利用してください。「Linux Mint 19.3」は、2023年4月までサポートされます。
64bit版かどうか確認するには
現在利用している「Linux Mint 19.3」が64bit版かどうか確認するには、「端末」を起動し以下のコマンドを実行します。
dpkg --print-architecture
上記のように「amd64」と出力されれば64bit版です。
「i386」と出力されれば32bit版です。
「Linux Mint 20」へアップグレードするには、「amd64」と出力される「Linux Mint 19.3」を利用している必要があります。
2.APTと端末/CLIに慣れが必要
アップグレード作業は主に「端末」上で行います。またアップグレード作業は「Linux Mint 19.3」のパッケージベースを「Linux Mint 20」のパッケージベースへ移行する作業が主体であり、幅広いパッケージで大規模なアップデート処理が実施されます。
その処理過程でユーザーの環境によっては、依存関係が衝突するパッケージの削除や、アップグレードを妨げるパッケージの削除等、既存のパッケージに対し削除や調整が必要な状況が発生するかもしれません。
そのため「端末」の使い方や「APT」の操作、及び「APT」が出力するメッセージに対し一定の理解や慣れが必要であり、初心者が気軽に実施できる作業ではありません。
バックアップ必須
というわけで、アップグレードの失敗に備え事前のバックアップは必須です。復元方法も併せて把握しておきましょう。
アップグレード作業に自信がない場合は、必要なデータをバックアップして「Linux Mint 20」をクリーンインストールする方法も検討すると良いでしょう。
3.すべてのパッケージをアップデート
まずすべてのパッケージ(ソフトウェア)を最新の状態にアップデートしておきます。3-1.アップデートマネージャーの起動
「メニュー」を開き 「システム管理」>「アップデートマネージャー」をクリックし、「アップデートマネージャー」を起動します。3-2.パッケージのアップデート
「再読込」ボタンをクリックしてアップデートの確認を行います。以下のようにパッケージのアップデートが存在する場合は、「すべて選択」ボタンをクリックし、「アップデートをインストール」ボタンをクリックしてすべてのパッケージをアップデートしてください。
すべてのパッケージをアップデートした後、PCを再起動します。
3-3.アップデート完了
すべてのパッケージがアップデートされていれば、以下の画面が表示されます。4.システムスナップショットの作成
次にシステムスナップショット(システムのバックアップ)を作成します。アップグレード作業で問題が発生した場合は、ここで作成したスナップショットからシステムを復元し、アップグード作業を行う前の状態に戻します。
4-1.Timeshiftの起動
スナップショットの作成作業やスナップショットによる復元作業は、デフォルトでインストールされている「Timeshift」から行います。「メニュー」を開き 「システム管理」>「Timeshift」をクリックし、「Timeshift」を起動します。
4-2.スナップショットの作成
「Timeshift」では、「Create」でスナップショットを作成し、「Restore」でスナップショットから復元します。スナップショットによる復元は、現在起動している「Linux Mint」上やライブメディア(DVD/USB)から起動した「Linux Mint」上で「Timeshift」を起動し、その起動した「Timeshift」から復元作業を実行できます。
5.PPAとサードパーティーリポジトリーのパージ
「PPA」及びサードパーティーリポジトリーが提供しているパッケージのバージョンが、「Linux Mint 20」が提供するパッケージよりも新しいバージョンだった場合、アップグレード時に問題が発生し、アップグレードに失敗する可能性があります。「PPA」及びサードパーティーリポジトリーのパージは必須ではありませんが、強く推奨される作業です。
5-1.ソフトウェアソースの起動
「メニュー」を開き 「システム管理」>「ソフトウェアソース」をクリックし、「ソフトウェアソース」を起動します。5-2.追加リポジトリーの無効化
左側の項目一覧から「追加のリポジトリ」を選択します。右側に現在登録されている追加リポジトリーの一覧が表示されるので、すべてのリポジトリーのチェックマークをオフにします。
5-3.PPAの無効化
左側の項目一覧から「PPA」を選択します。右側に現在登録されている「PPA」の一覧が表示されるので、すべての「PPA」のチェックマークをオフにします。
5-4.APTキャッシュの更新
画面上部にAPTキャッシュの更新を促すバーが表示されるので、「OK」ボタンをクリックしてAPTキャッシュを更新します。5-5.外部パッケージのダウングレード画面の表示
左側の項目一覧から「メンテナンス」を選択します。右側に「外部パッケージのダウングレード」ボタンがあるので、このボタンをクリックします。
5-6.外部パッケージのダウングレード
以下の画面が表示され、ダウングレード可能な外部パッケージの一覧が表示されます。ダウングレード可能な外部パッケージが存在する場合は、「全て選択」ボタンをクリックし「ダウングレード」ボタンをクリックしてください。
ダウングレード完了後、PCを再起動します。
またPCを再起動した後に、再度スナップショットを作成しておきます。
6.アップグレードツールのインストール
「端末」で以下のコマンドを実行し、アップグレードツールをインストールします。
apt install mintupgrade
「続行しますか? [Y/n] 」を聞かれたらそのまま「エンター」キーを押します。
7.アップグレードチェック
以下のコマンドを実行し、アップグレードの内容をチェックします。
mintupgrade check
以下の確認画面が表示されたら、「y」キーを押して「エンター」キーを押します。
表示されているユーザーのパスワードを入力し、「エンター」キーを押します。
以下の確認画面が表示されたら、「エンター」キーを押します。
出力内容の確認を
このコマンドはリポジトリーを一時的に「Linux Mint 20」のリポジトリーに書き換え、アップグレード時にパッケージが受ける影響を出力します。コマンド実行後にアップグレードされるパッケージや新たにインストールされるパッケージ、削除されるパッケージ等の情報が出力されます。
出力内容に問題がなければ(満足できる内容ならば)、次のステップに進みます。
システムに影響はない
コマンド実行後にリポジトリーは元の状態に戻されるため、このコマンドを実行してもシステムに影響はありません。コマンドの実行を中断した場合は
コマンドの実行を中断した場合は、リポジトリーの内容が元に戻りません。以下のコマンドを実行し、リポジトリーを復元してください。
mintupgrade restore-sources
8.パッケージのダウンロード
以下のコマンドを実行し、「Linux Mint 20」のパッケージをダウンロードします。
mintupgrade download
このコマンドは「Linux Mint 20」のパッケージをダウンロードするだけで、ダウンロードしたパッケージをシステムに適用することはありません。
9.ダウンロードしたパッケージの適用
次にダウンロードしたパッケージをシステムに適用します。注意
この作業を行うとシステムを元に戻すことができなくなります。もしパッケージの適用に失敗するなどアップグレードに問題が発生した場合は、スナップショットからシステムを復元してください。
パッケージの適用
「端末」で以下のコマンドを実行し、「8.」でダウンロードしたパッケージをシステムに適用します。
mintupgrade upgrade
10.外部パッケージのダウングレード
「Linux Mint 20」が提供するパッケージの中には、「Linux Mint 19.3」よりもバージョン番号が低いパッケージが含まれている可能性があります。整合性を確保するため、「5-5.」と同じ手順で外部パッケージをダウングレードしてください。
11.外部パッケージの削除
インストールされているパッケージの中には、「Linux Mint 20」が提供していないパッケージが含まれているかも知れません。このようなパッケージは、以下の手順で削除できます。
11-1.外部パッケージ削除画面の表示
「5-1.」と同様の手順で「ソフトウェアソース」を起動し、左側の項目一覧から「メンテナンス」を選択します。右側に「外部パッケージを削除」ボタンがあるので、このボタンをクリックします。
11-2.外部パッケージの削除
以下の画面が表示され、削除可能な外部パッケージの一覧が表示されます。削除可能な外部パッケージが存在する場合は、「全て選択」ボタンをクリックし「削除」ボタンをクリックします。
12.設定ファイルについて
「/etc」以下に配置されている設定ファイルの内容は、デフォルトの設定で上書きされます。特定の設定を元に戻したい場合は、アップグレード前に「Timeshift」で作成したスナップショットから個別に設定ファイルを抽出し、ファイルの中身を元に戻してください。LightDMの設定を元に戻すには
「LightDM」の設定を元に戻すには、ログイン画面の設定から各種設定を行います。(sudo lightdm-settings)トラブルシューティング
アップグレードに関するトラブルシューティングです。1.mintupgradeをインストールできない時は
「mintupgrade」が公式リポジトリーに存在せずインストールできない場合は、ミラーをデフォルトのミラーに切り替えAPTキャッシュをアップデートしてください。その後再度「mintupgrade」のインストールを実行してください。
2.スナップショットからの復元
「Timeshift」でスナップショットからシステムを復元する際、「Disclaimer」ウィンドウの中身が空になる(メッセージが表示されない)ことがあります。メッセージが表示されるまで約2分ほどこの状態で待ってください。
その後メッセージが表示されたら「Next」ボタンをクリックして復元作業を続行してください。
このメッセージが表示される前に「Next」ボタンをクリックして復元作業を続行すると復元に失敗するので注意してください。
もしこの状態になったら、PCを再起動して再度復元作業を行ってください。
3.スナップショットの作成をスキップするには
「Timeshift」ではなく別のソフトウェアでバックアップの作成や復元を行う場合、以下のコマンドを実行し「Timeshift」の実行要求をスキップすることができます。
sudo touch /etc/timeshift.json
アップグレードが完了したら、このファイルを削除しておくと良いでしょう。
4.アップグレード実行中にPCがフリーズした場合
アップグレード実行中PCによってはハードウェアリソースに大きな負荷がかかり、一時的にデスクトップがフリーズすることがあります。特に性能が低いPCではこの現象が発生しやすく、10分から数時間程度フリーズ状況が続くこともあります。
この状態でもアップグレード処理は正常に実行されているため、その状態で待ち続けてください。
もしこの状況が不都合なら、全ユーザーがログアウトしている状態で「Ctrl + Alt + F2」キーを押して仮想コンソールに移動し、そのコンソールから「mintupgrade upgrade」コマンドを実行してください。
5.Linux Mintが起動しなくなった場合
「Linux Mint」が起動しなくなった場合、「Linux Mint 19.3」のライブメディアから「Linux Mint 19.3」を起動してください。ライブセッション上で「Boot Repair」を起動し、修復を行ってください。
もしそれでも「Linux Mint」が起動しない場合は、ライブセッション上で「Timeshift」を起動し、スナップショットからシステムを復元してください。
6.Linux Mint起動時の警告メッセージについて
「Linux Mint」起動時に「ACPI」に関連する警告メッセージや、「initramfs unpacking」関連のメッセージが表示されます。これらのメッセージは起動に影響しない警告であるため、無視してかまいません。