Ubuntu 20.10の新機能と変更点
リリースノートから「Ubuntu 20.10」の新機能と変更点を紹介します。ここでは主に「Ubuntu Desktop 20.10」の内容を中心にピックアップします。
「Ubuntu 20.10」のリリースノートは以下で参照できます。
リリース情報
「Ubuntu 20.10」のリリース情報は、以下を参照してください。Ubuntu全般
「Ubuntu 20.10」全般に関する内容です。1.サポート期間
「Ubuntu 20.10」は通常リリースであり、リリースされてから9ヶ月間のサポートが提供されます。つまり2021年7月までサポートが提供されます。
長期サポートが必要なユーザーは
長期サポートが必要なユーザーは、最新のLTS版である「Ubuntu 20.04 LTS」を利用してください。「Ubuntu 20.04 LTS」は2025年4月まで無償サポートが提供されます。
また「ESM」によりさらにサポート期間を5年間延長できる有償サポートサービスも提供されています。
2.Linux kernel 5.8採用
「Ubuntu 20.10」は「Linux kernel 5.8」ベースの「Linux kernel」を採用しています。
これによりハードウェアのサポートが大幅に改善・改良されています。
CPU
- 第11/12世代Intel CPU(Ice Lake/Tiger Lake)のGPUサポート
- Zen3の初期サポート(AMD Family 19h)
- x86-64アーキテクチャーで5レベルページングのサポートをデフォルトで有効化
- CPUコアの発熱量の追跡とタスク配置の改善
- POWER10の初期サポート
インターフェース
- USB 4(Thunderbolt 3プロトコル)のサポート
その他
- AQL(Airtime Queue Limits)によるWiFI接続品質の向上
- Btrfs RAID1で3-Copy/4-Copyモードのサポートとチェックサムオプションの追加
- XFSのオンライン修復のサポート
- OverlayFSとVirtIO-FSの組み合わせをサポート
- ASPM(Active State Power Management)によるPCIe-to-PCIデバイスの省電力化改善
- General Notification Queueのサポート
その他アップストリームの変更点
前バージョンの「Ubuntu 20.04 LTS」では「Linux kernel 5.4」ベースの「Linux kernel」を採用していたため、4回分のメジャーバージョンアップが行われています。アップストリームの「Linux kernel 5.5」から「Linux kernel 5.8」の変更点は、以下を参照してください。
3.ツールチェーンのアップデート
ツールチェーンがアップデートされました。
これらのツールチェーンは様々なソフトウェアの核となるソフトウェアです。
- glibc 2.32
- OpenJDK 11
- rustc 1.41
- GCC 10
- LLVM 11
- Python 3.8.6
- ruby 2.7.0
- php 7.4.9
- perl 5.30
- golang 1.13
4.nftablesの採用
ファイアーウォールのデフォルトのバックエンドが「nftables」になりました。
これによりセキュリティーが改善されます。
Ubuntu Desktop
「Ubuntu Desktop 20.10」に関する内容です。1.Raspberry Pi 4向けUbuntu Desktopのリリース
「Ubuntu Desktop 20.10」で初めて「Raspberry Pi 4」向けの「Ubuntu Desktop」がリリースされました。「Raspberry Pi 4」に簡単に「Ubuntu Desktop」を導入することができます。
メモリーは最低でも4GiB以上搭載している必要があります。
2.GNOME 3.38の採用
デスクトップ環境に最新版の「GNOME 3.38」を採用しています。「GNOME 3.38」の新機能と変更点は、以下を参照してください。
3.アプリケーションのアップデート
アプリケーションがアップデートされました。- Firefox 81
- LibreOffice 7.0.2
- Thunderbird 78.3.2
4.サブシステムのアップデート
サブシステムがアップデートされました。- BlueZ 5.55(Bluetooth)
- NetworkManager 1.26.2(ネットワーク)
Raspberry Pi
「Raspberry Pi」に関する内容です。
1.Raspberry Pi 4向けUbuntu Desktop
上記でも紹介したように「Raspberry Pi 4」向けの「Ubuntu Desktop 20.10」がリリースされました。
この「Ubuntu Desktop」は「arm64」向けにのみビルドされており、メモリーは最低でも4GiB以上搭載している必要があります。
4GiB未満のメモリーでも「Ubuntu Desktop」が起動する可能性や、「Raspberry Pi 4」以前のモデルでも起動する可能性もありますが、それらの環境はサポート対象外です。
2.Compute Module 4のサポート
「Ubuntu Desktop」及び「Ubuntu Server」では「Compute Module 4」プラットフォームをサポートしています。
ただし「Ubuntu Desktop」では、メモリーを4GiB以上搭載しているモデルのみがサポート対象になります。
加えてイメージが8GBを超えるため16GB以上のeMMCもしくはSDカードストレージを搭載したモデルのみがサポート対象になります。
3.USB/ネットワークブートのサポート
デフォルトの起動プロセスから「U-Boot」が削除され、すべてのモデルでUSBやネットワークブートが利用可能になりました。
今回のリリースで「U-Boot」はブートパーティションにインストールされており、「config.txt」で設定することで引き続き利用可能ですが、将来的に非推奨になる予定です。
また「Ubuntu 20.04 LTS 」からアップグレードした場合、「U-Boot」が引き続き使用されます。
「U-Boot」を使用しないように設定する方法は、以下を参照してください。
既知の問題
既知の問題です。
1.EFI環境でメモリーテストを実行できない
ライブメディア(ライブUSB/ライブDVD)から「Ubuntu」を「EFI(UEFI)」環境で起動した場合、起動メニューからメモリーテストを実行できない不具合があります。
BIOS環境では問題張りません。
不具合の詳細は以下を参照してください。
2.リカバリーモードでドメイン名の解決に失敗する
リカバリーモードで「Enable networking」を選択しても「systemd-resolved」が起動せず、ドメイン名の解決に失敗します。
不具合の詳細は以下を参照してください。
3.VMWare PlayerでEasy Installが機能しない
「VMWare Player」で「Easy Install」が機能しません。
不具合の詳細は以下を参照してください。
4.GeForce RTX 3080/RTX 3090/MX450のサポートについて
本リリースに「NVIDIA 455」GPUドライバーは含まれていませんが、近日中にアップデートを通じて「NVIDIA 455」GPUドライバーが提供される予定です。
「GeForce RTX 3080/RTX 3090/MX450」のサポートは「NVIDIA 455」GPUドライバーでサポートされます。
5.Ubuntu Desktopを再インストールできない
既存のシステム上に「Ubuntu Desktop」を再インストールできない不具合があります。
不具合の詳細は以下を参照してください。
6.WaylandセッションでSnapのGUIアプリが起動しない
「GNOME」のWaylandセッションでSnapのGUIアプリが起動しない不具合があります。
不具合の詳細は以下を参照してください。
7.ライブセッションで音が鳴らない
「Safe graphics mode」で起動した「Ubuntu Desktop」のライブセッションで音が鳴らない不具合があります。
不具合の詳細は以下を参照してください。
8.gnome-sushiの不具合
選択されたファイル上でスペースキーを押しても何も起きず、「gnome-sushi」が期待通りに動作しない不具合が報告されています。
不具合の詳細は以下を参照してください。
この不具合はアップストリームの「gnome-sushi 3.38.0」で修正されたとのことです。
Raspberry Piの既知の問題
「Raspberry Pi」向けの既知の問題です。1.正しいサウンド出力デバイスが選択されない
「Raspberry Pi 4」向け「Ubuntu Desktop」で、起動毎に間違ったサウンド出力デバイスが選択される不具合があります。不具合及び回避策の詳細は以下を参照してください。
回避策は「/etc/pulse/default.pa」ファイルから以下の記述を削除することです。
.ifexists module-switch-on-connect.so
load-module module-switch-on-connect
.endif
ただしこの回避策を実施すると、USBサウンド出力デバイス接続時にそのデバイスが自動的に選択されなくなります。
2.サウンドの出力が乱れる
サウンドの出力が乱れる不具合があります。不具合及び回避策の詳細は以下を参照してください。
回避策は「/etc/pulse/default.pa」ファイルを開き、以下の記述を探します。
この記述を以下のように修正します。
その後デバイスを再起動します。
3.USBイーサネットが自動設定されない
USBイーサネット(USB接続のLAN)を接続しても、そのインターフェースに対し自動的にネットワーク設定が行われません。不具合及び回避策の詳細は以下を参照してください。
4.EEPROMを最新に保つために
既知に問題と言うより推奨事項ですが、「Raspberry Pi 4」でEEPROMを最新に保つために「rpi-eeprom」パッケージのインストールが推奨されています。「rpi-eeprom」パッケージは、以下のコマンドでインストールできます。
またUSB/ネットワークブートを試験利用したい場合、本作業が必要になります。
5.USBポートのホストモード
「Raspberry Pi Foundation」の「Compute Module 4」IOボードでは、USBポートが「DWC2 USB2コントローラー」にルーティングされており、デフォルトでホストモードではないため、キーボードといったデバイスを接続しても動作しません。ホストモードを有効にするには「config.txt」でコメントアウトされている以下の行を有効にしてください。