ESMによる延長サポート期間拡大へ
「Ubuntu 14.04 ESM」及び「Ubuntu 16.04 ESM」の「ESM(Extended Security Maintenance)」によるサポート期間が拡大され、標準セキュリティーサポート期間と合わせて10年間のサポートが提供されるようになりました。LTSによる5年間の標準セキュリティーサポート
LTSとは「Long Term Support」の略称であり、長期サポートを意味します。LTS版の「Ubuntu」では、5年間の標準セキュリティーサポートを提供しています。
LTS版の「Ubuntu」は2年に一度4月にリリースされ、現在最新版のLTS版の「Ubuntu」は2020年4月にリリースされた「Ubuntu 20.04 LTS」です。
2年に一度リリースされるということは、次のLTS版「Ubuntu」は2022年4月にリリースされるということです。
「Ubuntu」のバージョンはリリースされた「年.月」で表されるため、次のLTS版「Ubuntu」のバージョンは「Ubuntu 22.04 LTS」となります。
「Ubuntu 22.04 LTS」のリリーススケジュールは、以下を参照してください。
ちなみにLTS版の「Ubuntu」から次のLTS版の「Ubuntu」へ直接アップグレードすることもできます。
余談ですがLTS版ではない通常リリース版「Ubuntu」の標準セキュリティーサポートは9ヶ月間提供されています。
ESMによる5年間のサポート期間の延長
「ESM」ではLTSによる5年間の標準セキュリティーサポートに加え、さらに5年間のサポート期間を提供します。つまり「LTS」の5年間と「ESM」による5年間が合わさって10年間になるわけです。
ESM
「ESM」とは「Canonical」が提供する拡張セキュリティーアップデートサービスです。「ESM」はLTS版の「Ubuntu」に限り利用可能です。
通常リリース版の「Ubuntu」では「ESM」は提供されていません。
Ubuntu Advantage
「ESM」は「Canonical」が提供する「Ubuntu Advantage(Ubuntu Advantage for Infrastructure)」を通じて利用できるようになっています。「Ubuntu Advantage」は「Canonical」が提供するサポートサービスであり、企業を支援する様々なサポートサービスを提供しています。
中には個人利用に限り無償で利用できるサービスもあります。
個人利用に限り無償で利用することも可能
「Ubuntu Advantage for Infrastructure」では個人利用に限り無償で利用できるサービスも提供しています。そのサービスを通じて「ESM」を3台のマシンまで無償で利用することも可能です。
(公式のUbuntuコミュニティーメンバーなら50台まで可)
ESMによるソフトウェアのサポート
「ESM」によるサポート内容は標準セキュリティーサポートとは異なり、エンタープライズ向けに最適化された内容となっています。「ESM」でサポートされるソフトウェア(パッケージ)は、以下を参照してください。
ESMによるサポート期間
「ESM」の対象になっている「Ubuntu」のバージョン別サポート期間は以下のようになっています。OS | 開発コード | リリース日 | ESMによるサポート期間 |
---|---|---|---|
Ubuntu 14.04 | Trusty Tahr | 2014年4月 | 2024年4月 |
Ubuntu 16.04 | Xenial Xerus | 2016年4月 | 2026年4月 |
Ubuntu 18.04 | Bionic Beaver | 2018年4月 | 2028年4月 |
Ubuntu 20.04 | Focal Fossa | 2020年4月 | 2030年4月 |
元々「Ubuntu 14.04 ESM」及び「Ubuntu 16.04 ESM」の「ESM」によるサポート期間は3年間でしたが、それぞれ2年追加され5年間に拡大されました。
今回のアナウンスはこの変更に関するアナウンスです。
企業のシステムの移行を支援するためのサービス
「ESM」は主に企業のシステムの移行(OSのアップグレード)を支援するためのサービスです。「Ubuntu」は決まった間隔で新バージョンがリリースされており、企業はその間隔に合わせ移行計画を立てやすくなっています。
しかし銀行がそうであるように、システムの骨幹となるOSやソフトウェアを「Ubuntu」の標準サポート期間内に都合よくアップグレードできるとは限りません。
そこには様々な(大人の)事情が存在します。
「ESM」はそのような事情をカバーするために活用できます。
さらにサポート期間を5年間延長することで、余裕を持った移行計画を立てられるようになります。
「ESM」の活用事例については、以下を参照してください。
- Interana uses ESM to maintain system security while upgrading its customers to Ubuntu 18.04 LTS across public clouds
- TIM ensures system security and client confidence with ESM
カジュアルなUbuntuユーザーは
「ESM」は主にエンタープライズ(企業・法人)に向けたサービスです。「ESM」は普通のカジュアルなデスクトップユーザーを幅広くサポートするためのサービスではありません。
ですのでカジュアルな「Ubuntu」ユーザー(特にデスクトップユーザー)は、「ESM」によるサポートは気にせず、標準セキュリティーサポート期間内に標準セキュリティーサポートが提供されている「Ubuntu」へ移行するのが良いでしょう。
現状は最新LTSリリース版の「Ubuntu 20.04 LTS」か、通常リリース版の「Ubuntu 21.04」を利用するのが良いでしょう。
また2022年4月に次のLTSリリース版である「Ubuntu 22.04 LTS」がリリースされます。
もちろん「ESM」の内容を理解した上で「ESM」を利用するのも良いです。