deb版FirefoxからSnap版Firefoxへの移行
「Ubuntu 21.10」でdebパッケージ版「Firefox」からSnapパッケージ版「Firefox」へ移行する予定です。Firefoxはデフォルトのブラウザー
「Ubuntu Desktop」ではデフォルトのウェブブラウザーに「Firefox」を採用しています。「Firefox」は非常に著名なウェブブラウザーであり、今更説明は不要でしょう。
「Ubuntu 21.10」より前のバージョンでは「Ubuntu」の公式リポジトリーからdeb版「Firefox」が提供され、アップストリームのリリースに追従するように最新版の「Firefox」をユーザーに提供しています。
この時deb版「Firefox」をユーザーに直接提供しているのは「Ubuntu(Canonical)」であり、「Firefox」の開発元である「Mozilla」ではありません。
つまり「Mozilla」が最新版の「Firefox」をリリースした後、一旦「Ubuntu」でユーザーにその「Firefox」を提供する作業や手続きを行い、最終的にそれがユーザーに提供されます。
Ubuntu Desktop 21.10ではSnap版Firefoxがデフォルトに
「Ubuntu Desktop 21.10」をクリーンインストールした環境及び「Ubuntu Desktop 21.10」へアップグレードした環境では、Snap版「Firefox」がデフォルトになります。その一方で「Xubuntu」など「Ubuntu」のフレーバーでは、引き続きdeb版「Firefox」がデフォルトになります。
Ubuntu 21.10でも引き続きdeb版Firefoxは提供される
移行措置として「Ubuntu 21.10」でも従来の方針に基づき、引き続きdeb版「Firefox」が提供されます。サポートも同様に「Ubuntu 21.10」のサポート期間中はdeb版「Firefox」のアップデートが提供されます。
Ubuntu 22.04 LTSでSnap版Firefoxに完全移行
「Ubuntu 21.10」でSnap版「Firefox」に移行する取り組みは、次期LTSリリースである「Ubuntu 22.04 LTS」を見据えた取り組みであり、「Ubuntu 22.04 LTS」でdeb版「Firefox」からSnap版「Firefox」へ完全移行する予定です。言い換えれば「Ubuntu 22.04 LTS」ではdeb版「Firefox」は提供されず、Snap版「Firefox」に一本化され、ユーザーはSnap版「Firefox」を利用することになる、ということです。
もちろん「Xubuntu」など「Ubuntu」のフレーバーでもdeb版「Firefox」が提供されないため、同様の措置となります。
「Ubuntu 22.04 LTS」のリリーススケジュールは、以下を参照してください。
Snap版FirefoxはMozillaが提供する
Snapアプリケーションを提供する「Snap Store」では、「Mozilla」がSnap版「Firefox」を提供しています。つまりdeb版「Firefox」のように一旦「Ubuntu」を経由することなく、「Mozilla」が直接ユーザーに「Firefox」を提供します。
なぜSnap版Firefoxをデフォルトにするのか
Snap版「Firefox」への移行は、「Ubuntu(Canonical)」と「Firefox」の開発元である「Mozilla」が話し合いをして導き出した結論です。「Mozilla」が「Ubuntu(Canonical)」に連絡を取る際、「Mozilla」はSnap版「Firefox」の利点を念頭に置いて話し合いをしました。
例えば「Mozilla」が考える利点には、以下の利点が含まれていました。
1.クロスプラットフォーム
「Firefox」自身クロスプラットフォームで開発されているブラウザーですが、それとは別にLinuxには数々のディストリビューションが存在しています。多くのディストリビューションでは「Ubuntu」と同じように一旦ディストリビューション側で作業を行い、それをユーザーにリリースしています。
しかし「Snap」は「Snap(snapd)」がサポートされているディストリビューションなら、ディストリビューションを意識することなく横断的にアプリケーションを提供できます。
そして多くのディストリビューションでは「Snap(snapd)」をサポートしています。
「Mozilla」は「Snap Store」からあらゆるディストリビューションに「Firefox」の提供を一元化し、ユーザーに直接「Firefox」を提供できます。
2.信用と信頼
ユーザーが「Firefox」をインストールする際、ユーザーが信頼する「Mozilla」から直接「Firefox」をインストールできます。この「Firefox」はディストリビューション固有のパッチ等手が加えられていない「Firefox」であり、また出所不明な「Firefox」ではなく、ユーザーは安心して「Firefox」を利用できます。
3.迅速なアップデートの提供
従来のように一旦ディストリビューション側で作業を行う必要が無くなるため、ユーザーは「Mozilla」から直接かつ迅速なセキュリティーアップデートを受け取ることができます。4.メンテナンスコストの削減
この利点はディストリビューション側の利点になりますが、ディストリビューション側で行う作業が削減されるため、各ディストリビューションの開発者はもっと他のことに時間を割けるようになります。ユーザーの懸念やFAQ
「Snap」の登場以来、どうしても「Snap」に対するネガティブな印象を払拭しきれていない状況があります。「Snap」は日々改善されていますが、ユーザーが持った第一印象を覆すには継続的な啓発が必要でしょう。
1.以前も似たようなことなかった?
数年前にdeb版「Chromium」を廃し、Snap版「Chromium」へ移行・一本化する出来事がありました。Snap版「Chromium」へ移行した理由は、開発者にかかるメンテナンスの負担が大きく、この状況を改善・解消するためでした。
この判断は「Ubuntu」の開発者が下した判断であり、「Ubuntu」固有の事情に依存したものです。
しかし本件は上記でも紹介したように理由が異なります。
「Mozilla」と「Ubuntu(Canonical)」が協調して下した判断及び取り組みになります。
2.遅くなるんじゃない?
「Snap」に対するネガティブな印象の筆頭候補がこれでしょう。「Ubuntu」の開発者はそうならないように取り組んでいます。
実際すでにこの状況を改善するため、「Snap」に対する改善が行われてきました。
- The Hunt for Rogue Time – How we investigated and solved the Chromium snap slow startup problem
- Snap speed improvements with new compression algorithm!
以下も参考にしてください。
もちろんそれでも遅いと感じるなら、その具体的な内容をフィードバックして欲しいとのことです。
3.Firefox自身ウェブサイトをサンドボックスで隔離する機能がすでにあるのに、それでもSnapにする利点って何?
ブラウザーが持っているサンドボックス機能に加え、「Snap」によるさらにセキュアな環境を提供します。ブラウザーのサンドボックス機能は悪意あるコードからユーザーを保護しますが、「Snap」はブラウザー自身の悪意ある振る舞いからユーザーを保護します。
つまり2種類のセキュリティー機能により、より堅実なセキュリティーを提供できます。
4.どうしてもSnap版Firefoxを使わなければならないの?
「Ubuntu」としては将来的にdeb版「Firefox」を提供しなくなりますが、「Mozilla」はSnap版「Firefox」だけでなく、「amd64」及び「i386」向けにビルドした「Firefox」のバイナリーを引き続き提供します。Snap版Firefoxをインストールするには
「Snap」は特定のディストリビューションに依存しないため、「Ubuntu 20.04 LTS」など以前のバージョンでもSnap版「Firefox」をインストールできます。Snap版「Firefox」は、「Ubuntu ソフトウェア」や以下の「Snap Store」からインストール可能です。
パフォーマンスや動作確認含め、Snap版「Firefox」を試してみてはいかがでしょうか。