Ubuntu 21.10の新機能と変更点
リリースノートから「Ubuntu 21.10」の新機能と変更点を紹介します。ここでは主に「Ubuntu Desktop」の内容を中心にピックアップします。
「Ubuntu 21.10」のリリースノートは以下で参照できます。
リリース情報
「Ubuntu 21.10」のリリース情報は、以下を参照してください。サポート期間
「Ubuntu 21.10」は通常リリースであり、リリースされてから9ヶ月間のサポートが提供されます。つまり2022年7月までサポートされます。
長期サポートが必要なユーザーは
長期サポートが必要なユーザーは、最新のLTS版である「Ubuntu 20.04 LTS」を利用してください。「Ubuntu 20.04 LTS」は2025年4月まで無償サポートが提供されます。
また「ESM」によりさらにサポート期間を5年間延長できる有償サポートサービスも提供されています。
Linux kernel 5.13採用
「Ubuntu 21.10」は「Linux kernel 5.13」ベースの「Linux kernel」を採用しています。これによりハードウェアのサポートが改善・改良されています。
Linux kernelの変更点
前バージョンの「Ubuntu 21.04」では「Linux kernel 5.11」が採用されており、2回分のメジャーアップデートが行われています。「Linux kernel 5.12」及び「Linux kernel 5.13」の主要な変更点は、以下を参照してください。
ツールチェーンのアップデート
ツールチェーンがアップデートされました。- GCC 11.2.0
- binutils 2.37
- glibc 2.34
- LLVM 13(デフォルト)
- golang 1.17.x(デフォルト)
- rustc 1.51(デフォルト)
またパッケージのビルドには使用されていませんが、「OpenJDK 18」が利用できるようになりました。
システム
システムに関連する変更点です。nftables
ファイアーウォールのデフォルトのバックエンドが「nftables」になりました。systemd
「systemd」がデフォルトで「cgroup v2」に切り替えられました。従来の「cgroup v1」が必要な場合、起動時のカーネルパラメーターに「systemd.unified_cgroup_hierarchy=0」を指定して「cgroup v1」に切り替えることも可能です。
useradd
「Ubuntu 20.04.3 LTS」以降、数字だけで構成されたユーザー名でユーザーを作成できないようになりました。例えば「123」や「1337」のように数字だけで構成されたユーザー名は利用できません。
このようなユーザー名は「systemd」などいくつかのコンポーネントで問題が起きるためです。
Ubuntu
「Ubuntu」に関連する変更点です。GNOME 40
デスクトップ環境に「GNOME 40」を採用しています。「GNOME 40」は2021年3月24日にリリースされた1つ前のバージョンですが、「Ubuntu 21.10」に搭載されている「GNOME 40」は、不具合の修正や機能の改善などマイナーアップデートが実施されているバージョンです。
「GNOME 40」の新機能や変更点は、以下を参照してください。
NVIDIA GPUドライバーのサポート改善
NVIDIA GPUプロプライエタリードライバー使用時にWaylandセッションを利用できるようになりました。Bluetoothのサポート改善
「PulseAudio 15」が採用され、「Bluetooth」で使用される「LDAC」及び「AptX」音声圧縮コーデックに対応しました。また「HFP」プロファイルに対応しました。
Snap版Firefoxへの移行
デフォルトのブラウザーにSnap版「Firefox 93」が採用されています。Snap版「Firefox」は「Mozilla」及び「Canonical」によりメンテンナンスされます。
また従来のdeb版「Firefox」も「Ubuntu」公式リポジトリーから引き続き提供され、「Ubuntu 21.10」のサポート期間中はdeb版「Firefox」も同様にサポート対象になります。
その他
その他ソフトウェアもアップデートされています。- LibreOffice 7.2.1
- Thunderbird 91.1.2
- PulseAudio 15.0
- BlueZ 5.60 55
- NetworkManager 1.32.12
- OpenLDAP 2.5.6
- Telegraf 1.19.2
- PHP 8.0.8(デフォルト)
- Apache 2.4.48
- QEMU 6.0
- Libvirt 7.6
- Open vSwitch 2.16
- Chrony 4.1
- Bind9 9.16.15
- Containerd 1.5.5
- Runc 1.0.1
- Corosync 3.1.2
- OpenStack Xena
Raspberry Pi
「Raspberry Pi」に関連する変更点です。Sense HATのサポート
「Sense HAT」がサポートされました。「Sense HAT」を利用するには、以下のコマンドを実行し「sense-hat」パッケージをインストールしてください。
sudo apt install sense-hat
またSense HATデスクトップエミュレーターを利用するには、以下のコマンドを実行し「sense-emu-tools」パッケージをインストールしてください。
sudo apt install sense-emu-tools
u-bootの削除
ブートシーケンスから「u-boot」が削除されました。またクリーンインストール及びアップグレーダーでUSB MSDブートがサポートされました。
Raspberry Pi Compute Module 3が非サポートに
本リリースを以って「Raspberry Pi Compute Module 3」が非サポートになりました。「Raspberry Pi Compute Module 3」には4GBのeMMCストレージが搭載されていますが、「Raspberry Pi」向け「Ubuntu Server」がこの容量を超えるためです。
一方で8GB以上のeMMCストレージが搭載されている「Raspberry Pi Compute Module 3+」は引き続きサポートされます。
既知の問題
既知の問題です。ZFSで構築したファイルシステムが破損する不具合
「Linux kernel 5.13.0-19」に含まれる「ZFS」ドライバーに不具合があり、ZFSで構築したファイルシステムが破損する可能性があります。「ZFS」を利用しているユーザーはこの不具合が修正された「Linux kernel」のアップデートが提供されるまで、「Ubuntu 21.10」へのアップグレードは待ったほうが良いでしょう。
本不具合の詳細や対応状況は、以下を参照してください。
インストーラーがフリーズする
「Ubuntu Desktop」のインストーラーである「Ubiquity」が、NTFSパーティションをリサイズ可能かどうかチェックする処理でフリーズする可能性があります。この現象は「アップデートと他のソフトウェア」画面から次の画面に移る際に発生する可能性があります。
もしこの現象が発生したらPCを再起動し、再度インストール作業を行ってください。
Snap版Firefoxのレンダラープロセスがクラッシュする
「VT(仮想コーンソール)」の切り替え時やサスペンドからの復帰時に、Snap版「Firefox」のレンダラープロセスがクラッシュします。この現象は以下の不具合と同様の原因で引き起こされる現象です。
この不具合は今後リリースされる「Firefox 94.0」で修正されます。
すでにSnap版「Firefox」の「beta」チャンネルでは、この不具合に対応した「Firefox」が提供されています。
Raspberry PiでHDMI出力が動作しない
「Raspberry Pi」向け「Ubuntu Desktop」では、KMSサポートによりHDMI出力が動作しません。この現象は「100 Hz」を超えるような高リフレッシュレートのモニターでよく発生します。
この問題を回避するには以下の作業を行います。
1.config.txtファイルを開く
SDカードを別のマシンに挿入します。「system-boot」ラベルがついたパーティションにある「config.txt」ファイルをテキストエディターで開きます。
2.設定の変更
以下の記述を検索します。
dtoverlay=vc4-kms-v3d
この内容を以下のように書き換えます。
dtoverlay=vc4-fkms-v3d
編集したらファイルを保存します。