Linux MintがMozillaとパートナーシップを締結
2022年1月10日、「Linux Mint」は「Mozilla」とのパートナーシップの締結をアナウンスしました。Mozilla
「Mozilla」と言えば「Firefox」の開発元ですね。他にも「Thunderbird」の開発元としても有名です。
「Firefox」は様々なLinuxディストリビューションでデフォルトのウェブブラウザーとして採用されています。
「Linux Mint」でも同様に「Firefox」がデフォルトのウェブブラウザーとして採用されています。
今回のパートナーシップの締結にあたり、「Firefox」にいくつか変更点がもたらされます。
Firefoxで何が変わるのか?
「Linux Mint」ユーザーに提供される「Firefox」で何が変わるのか、あるいは何が変わらないのかを見て行きましょう。引き続きdebパッケージで提供される
引き続き「Firefox」はdebパッケージで提供されます。「Linux Mint」は「Ubuntu」をベースに開発されており、「Ubuntu 22.04 LTS」ではSnap版「Firefox」に完全移行します。
しかし「Linux Mint」ではSnap版「Firefox」を採用せず、引き続きdeb版「Firefox」を提供します。
このdeb版「Firefox」は従来と同様に「Linux Mint」の公式リポジトリーから提供されます。
Mozillaの設定や構成を優先する
「Ubuntu」が提供しているdeb版「Firefox」と同様に「Linux Mint」でも「Linux Mint」固有の設定や構成を「Firefox」に適用してユーザーに提供しています。今後これらの独自の設定は適用されず、「Mozilla」が指定しているデフォルトの設定を優先するようになります。
つまり「Mozilla」が提供する「Firefox」とほぼ同じ設定になります。
例えば以下の設定がこれに該当します。
- デフォルトのスタートページがLinux Mint公式サイトからMozillaのデフォルトのスタートページになる
- デフォルトの検索エンジンにYahooやDuckDuckGoといったLinux Mintの検索パートナーが含まれなくなり、GoogleやAmazon、Bing、DuckDuckGo、EbayといったMozillaの検索パートナーが含まれるようになる
- Linux MintやDebian、Ubuntuが行っているディストリビューション固有の修正や変更が含まれなくなる
また今回の変更により「Linux Mint」が提供する「Firefox」は、「Mozilla」が保有するIP(名称やブランド)に従った「Firefox」が提供されるようになります。
例えば「Firefox」のアイコンは「Mozilla」が指定するアイコンになります。
すべてのユーザーに同一のFirefoxを提供したい
「Firefox」はクロスプラットフォームで開発されているブラウザーであり、「Linux」だけでなく「macOS」や「Windows」など様々なユーザーに提供されています。「Mozilla」はすべてのユーザーに同一の「Firefox」を提供したいと考えています。
つまり「Mozilla」は「Firefox」の提供を一元化したいということです。
開発プロセスがもっとシンプルに
提供を一元化することで開発プロセスが今までよりもシンプルになり、「Firefox」の開発や不具合の修正、そしてメンテナンスコストを従来よりも抑制できます。Linux Mintも開発コストを削減できる
ディストリビューション固有の作業を削減できるため、「Linux Mint」の「Firefox」に関連する開発コストも大幅に節約できます。FAQ
FAQです。これって商業的な提携?それとも技術的な提携?
両方です。「Mozilla」と提携することで両者間の調整ごとや「Linux Mint」が提供する「Firefox」の改善が容易になります。
かつて「Linux Mint」では「Cinnamon」のパネルに配置されているウィンドウリストに「Firefox」が現在ダウンロードしているファイルの進捗状況を示す機能を追加しました。
また「Firefox 96」では「Firefox」自身がウィンドウの角に丸みを持たせる機能を実装していますが、この機能のサポートが改善されます。
このような改善の取り組みがもっと容易になります。
Firefox自身からアップデート可能に
「Firefox」のアップデート方法においても「Linux Mint」と「Mozilla」が連携して取り組む予定です。「Firefox」のアップデートと「Linux Mint」の「アップデートマネージャー」が協調して動作できるようにし、ユーザーは「Firefox」自身からアップデートの通知やアップデートの適用を直接行えるようにする予定です。
いつ移行するの?
「Linux Mint 19.x/20.x」及び「LMDE」では、「Firefox 96」から移行する予定です。スケジュールは2022年1月11日〜2022年1月12日が予定されています。
「Linux Mint 20.3」では「Linux Mint 20.3 β版」の「Firefox 95」ですでに移行しています。
ユーザーの設定は引き継がれるの?
引き継がれます。ただしユーザーが設定していない項目は、「Mozilla」のデフォルト設定になります。
Googleをデフォルトの検索エンジンにしているんだけど、そのまま使えるの?
使えます。ただし今回の変更により「Google」がシステムの検索エンジンに追加されるため、ユーザー独自の設定という扱いではなく、システムが提供している検索エンジンという扱いになります。
デフォルトの検索エンジンにYahoo、DuckDuckGo、StartPageを使っているんだけど、このデフォルト設定も引き続き利用できるの?
システムの検索エンジンが変更されたため、そのまま利用することはできません。デフォルトの検索エンジンである「Google」が設定されるでしょう。
また「DuckDuckGo」は引き続きシステムの検索エンジンに登録されていますが、検索パートナーが「Linux Mint」から「Mozilla」に変わるため、URL自体が変更されています。
Linux Mintに収益をもたらす検索エンジンはどれ?
「Firefox」では「Google」のみ「Linux Mint」に収益をもたらします。その他のブラウザーでは「Yahoo」、「DuckDuckGo」、「StartPage」が「Linux Mint」に収益をもたらします。
なんかパフォーマンスに影響する?
しないどころか移行によりわずかにパフォーマンスが向上します。なんか表示されるバージョンが変なんだけど?
「mint-001 - 1.0」は「Linux Mint」にインストールされている「Firefox」を識別するための識別子であり、「Firefox」のバージョンともパッケージのバージョンとも無関係です。中央付近に「Firefox」のバージョンが表示されています。
ブラウザーがあなたの組織によって管理されているって出るんだけど?
気にしなくて良いです。「Linux Mint」では「アップデートマネージャー」がすべてのソフトウェアのアップデートを管理しています。
ソフトウェアのアップデートには管理者である「root」権限が要です。
多くの場合、管理者=ユーザーですね。
同様に「Firefox について」の画面でも「システム管理者によって、更新が無効化されています」とメッセージが表示されますが、こちらも同じ理由で気にしなくて良いです。
ユーザーが不安に感じるこれらのメッセージは、今後分かりやすい表現に改善される予定です。
またうまくいけば2022年後半に「Firefox」から直接「Firefox」をアップデートできるようになる予定です。