Snap版Steamの強化と今後の取り組み
以前紹介したようにSnap版Steamが登場し、早期アクセス版のリリースから半年が経過しました。その間の取り組みと今後の取り組みが以下で紹介されています。
Snapとは
Snapパッケージは、ソフトウェアをパッケージング及びデプロイするための新しいパッケージフォーマットです。Snapパッケージを利用できるOSは「Ubuntu」だけでなく、「Debian」「Fedora」「Arch Linux」「openSUSE」など、様々なOSで利用できます。
Snapは隔離された環境にソフトウェアを配置するため、他のソフトウェアや既存のシステムに影響を与えることなくソフトウェアのインストールや利用が可能です。
またもしソフトウェアで不具合などの問題が発生すれば、以前のバージョンにロールバックする機能も備えています。
SnapパッケージはLinuxのソフトウェアをパッケージ化するための次世代のパッケージフォーマットです。
Snapの利用方法
Snapの利用方法は、以下を参照してください。各OSごとにSnapを利用する方法が紹介されています。
「Ubuntu」では、デフォルトで「Snap」が利用できるようになっています。
またデフォルトでインストールされている「Ubuntu Software」から、Snapパッケージ(Snapアプリ)の検索やインストールが可能です。
Snap版Steam
以前紹介したSnap版Steamに関しては、以下を参照してください。Snap版Steam公開後、Snap版Steamのダウンロード回数は7.5万回に及び、以下で数多くのフィードバックや要望、コメントが寄せられました。
各Linuxディストリビューションの事情を吸収できる
Snap版Steamというより「Snap」が持っている特徴の一つですが、「Snap」は特定のLinuxディストリビューションやそれらのバージョンに影響を受けずにアプリケーションをインストールできます。その特徴を受け継いでいるSnap版Steamも同様です。
特にゲーム環境ではパフォーマンスを改善するために、最新のソフトウェアが必要になりますが、各Linuxディストリビューションごとに利用可能なソフトウェアのバージョンが異なります。
例えば「Ubuntu 18.04 LTS」は今から約4年前にリリースされたOSであり、どうしても多くのソフトウェアが古くなってしまいます。
その課題に対する一つの解が「Snap」ですね。
従来は「Ubuntu」で新しいソフトウェアをインストールするためにPPA(サードパーティーのリポジトリー)を追加したり、あるいはそもそも必要なソフトウェアが提供されていなかったり、新しいソフトウェアをインストールすると既存のソフトウェアと衝突するなど、問題が起きていたケースもあるでしょう。
「Snap」ではアプリが動作するのに必要なソフトウェアをまとめて配布できるので、ユーザーはこれらの追加作業や頭を悩ませる問題から解放されるでしょう。
Mesa
「Mesa」はグラフィックAPIを提供するソフトウェアです。「Mesa」は「OpenGL」や「OpenGL ES」、「Vulkan」といった描画に関する主要な機能を提供しています。
描画に関して言えば「Windows」で言うところの「Direct 3D」だと思えば分かりやすいでしょう。
オープンソースのGPUドライバーの多くは「Mesa」に対応しており、Intelの内蔵GPUやAMD GPUを利用しているなら、それらほとんどのGPUが「Mesa」を利用して動作しています。
NVIDIA GPUドライバーに関しては、IntelやAMDと比較すると対応が限定的であり、プロプライエタリーなNVIDIA GPUドライバーの方が、機能面でもパフォーマンスでも好ましいでしょう。
プロプライエタリーなNVIDIA GPUドライバーは簡単にインストールできる
ちなみに「Ubuntu」では、簡単にプロプライエタリーなNVIDIA GPUドライバーをインストールできるようになっています。例えば以下のインストール画面や「ソフトウェアとアップデート」の「追加のドライバー」からプロプライエタリーなNVIDIA GPUドライバーをインストールできるようになっています。
Snap版Steamには最新版のMesaが含まれる
さて最新のMesaを利用したい「Ubuntu」ユーザーの中には、以下のいずれかの著名なPPAを利用しているユーザーも多いでしょう。Snap版Steamではデフォルトで「2.」のPPAで提供されている「Mesa」を導入しています。
これによりユーザーは別途PPAを追加する作業から解放されます。
Snap版Mesaの移行へ
ユーザーが利用したい「Mesa」を切り替えられるように、Snap版Steamから「Mesa」を分離し、Snap版Mesaを別途提供する計画が立ち上げられました。現状予定されているSnap版Mesaは、以下の3種類が予定されています。
- oibaf-latest(デイリービルドのMesa/Snap版Steamのデフォルト)
- kisak-fresh(最新版のポイントリリースのMesaと、大きな影響がない範囲でのバックポート)
- kisak-turtle(上記より安定志向のMesa)
GameMode
「GameMode」はハードウェアを省電力モードから性能重視のモードへと移行するように、各種ハードウェアの設定を調整するソフトウェアです。「Ubuntu Desktop」では「GameMode」がデフォルトでインストールされています。
ゲーム環境では省電力さより性能が重視されるため、「GameMode」を活用することでゲームが動作する時にハードウェアを性能重視で動作させられるようになります。
SteamのゲームとGameModeを簡単に連携できるように
現在Steamのゲームを起動する時に簡単に「GameMode」を活用できるように、対応作業が進められています。この作業によりSteamのゲームが「gamemoderun %command%」で起動できるようになります。
MangoHUD
「MangoHUD」はゲーム画面上に現在の「FPS(いわゆるフレームレート)」やハードウェアの温度、CPUやGPUの使用率を表示するソフトウェアです。ゲームパフォーマンスの把握やベンチマーク的な使い方に活用できるでしょう。
「MangoHUD」をSnap版Steamに含める作業が行われています。
検証が不十分なゲームタイトルの有効化
「Proton」は「Windows」のゲームを「Linux」上で動かす仕組みです。現在「Steam」では検証が不十分なゲームタイトルも利用可能にする設定がデフォルトで無効になっており、ユーザーは自分でその設定を有効にする必要があります。
Snap版Steamではこの設定をデフォルトで有効化する作業が進められています。