Raspberry Pi向けUbuntu 22.10の新機能と変更点
「Raspberry Pi」向けの「Ubuntu 22.10」の新機能と変更点を紹介します。リリース情報
「Ubuntu 22.10」のリリース情報は、以下を参照してください。「Ubuntu 22.10」のリリースノートは、以下を参照してください。
- リリースノート:ReleaseNotes
- リリースノート(日本語):リリースノート
その他共通する「Ubuntu 22.10」の新機能と変更点は、以下を参照してください。
Raspberry Pi向けUbuntu
「Ubuntu」では「Ubuntu Desktop」及び「Ubuntu Server」共に、「Raspberry Pi」を公式にサポートしています。「Raspberry Pi」に最適化された「Ubuntu」のイメージをダウンロードするには、上記のリリース情報を参考にしてください。
組み込みディスプレイのサポート
「Ubuntu 22.10」では、以下の組み込みディスプレイがサポートされました。1.Raspberry Pi Touch Display
「Raspberry Pi Touch Display」は「Raspberry Pi」公式のディスプレイです。詳細は以下を参照してください。
Full KMSによるディスプレイ出力
デフォルトでクローズドなファームウェアを利用しないオープンソースによる「Full KMS」でディスプレイ出力を行っていますが、以下の問題があります。Full KMSではタッチスクリーンや画面の回転が機能しない
「Full KMS」によるディスプレイ出力では、タッチスクリーンが機能せず、ディスプレイの回転も無視されます。これらの機能を有効にするには「Full KMS」から「Fake KMS」へ切り替える必要があります。
Fake KMSへ切り替えるには
「Fake KMS」へ切り替えるには、「Ubuntu」の起動パーティションに配置されている「config.txt」ファイルを開き、「dtoverlay=vc4-kms-v3d」の設定を「dtoverlay=vc4-fkms-v3d」に変更してください。この問題の詳細は、以下を参照してください。
2.HyperPixelディスプレイ
「HyperPixel」ディスプレイがサポートされました。「HyperPixel」の詳細については、以下を参照してください。
3.Inkyディスプレイ
「Inky」ディスプレイがサポートされました。- Inky
- Inky(Python library for Inky pHAT, Inky wHAT and Inky Impression e-paper displays for Raspberry Pi.)
- [needs-packaging] inky
組み込みアプリ開発に
タッチスクリーン操作に対応したPythonベースのフレームワーク、「Kivy」も利用可能です。また「Raspberry Pi」固有のドライバーに依存せずアプリ開発が可能な「Qt」も活用できます。
「Qt」は「Kubuntu」や「Ubuntu Studio」、「Lubuntu」で活用されている非常に著名なフレームワークですね。
MicroPythonのサポート
「Raspberry Pi Pico」及び「Raspberry Pi Pico W」の開発環境が改善され、Ubuntu公式リポジトリーから「MicroPython」を利用できるようになりました。これにより接続した「MicroPython」デバイスにローカルディレクトリーをマウントするなど、「MicroPython」を利用したリモート開発が従来より簡単になりました。
同様に「rshell」も利用可能です。
また初心者向けの開発環境「Thonny」も利用可能です。
MicroPythonのドキュメント
「MicroPython」のドキュメントは、以下を参照してください。チュートリアル
特に「MicroPython」を初めて利用する方は、以下のチュートリアルが参考になるでしょう。非推奨のGPIO Sysfs Interfaceが無効に
「Ubuntu 22.10」で搭載している「Linux kernel 5.19」では、長年非推奨だった「GPIO Sysfs Interface」が無効になりました。- GPIO Sysfs Interface
- ABI obsolete symbols - /sys/class/gpio/
- Switch to libgpiod and disable CONFIG_GPIO_SYSFS
lgpioへの移行を
これにより「lgpio」への移行が必要になります。rpi-lgpioによるRPi.GPIOとの互換性
本件により「RPi.GPIO」を含むよく利用されていたライブラリーのいくつかは動作しなくなっています。この環境を支援するため「RPi.GPIO」との互換性を実現する「rpi-lgpio」が作成されました。
「rpi-lgpio」は「RPi.GPIO」のAPIをエミュレーションする「lgpio」向けのライブラリーです。
詳細は以下を参照してください。
WebKitが動作可能に
「GNOME」に含まれている「WebKit」コンポーネントが動作するようになりました。オフラインのヘルプビューアやオンラインアカウントのセットアップが正常に動作するようになりました。
raspi-configユーティリティーの改善
「raspi-config」ユーティリティーがアップデートされ、一部の機能が正常に動作するようになりました。「RealVNC」といった一部の機能は動作しませんが、サポートされていない機能を正常に検出して報告できるようになりました。
「overlayfs」といった機能は、期待通りに動作します。
WiFiの規制ドメインの選択サポート
「netplan」では、WiFiの規制ドメインの選択が設定を通じてサポートされました。「cloud-init」による初回起動時でもこの機能を利用可能です。
WiFiの規制ドメインの設定は、「netplan」の「regulatory-domain」設定で行います。
既知の問題や注意点
既知の問題や注意点です。1.カーネルモジュール
「initramfs」のサイズを削減するため、今まで「linux-modules-raspi」パッケージに含まれていたカーネルモジュールのいくつかが「linux-modules-extra-raspi」パッケージに移されました。アプリがカーネルモジュールの不足により動作しない場合は、以下のように「linux-modules-extra-raspi」パッケージをインストールしてください。
sudo apt install linux-modules-extra-raspi
2.MMALベースのカメラスタックはサポートされない
「arm64」では従来のMMALベースのカメラスタックはサポートされません。「arm64」でPi Camera Moduleは「libcamera」でサポートされています。
また公式のカメラモジュールは起動時の設定で、自動的に公式のカメラモジュールに対応したオーバーレイが読み込まれるようになっています。
非公式のカメラモジュールを読み込むには、起動パーティションにある「config.txt」に必要なオーバーレイ設定を追記してください。
3.自動削除可能なパッケージが残る
「Raspberry Pi」向け「Ubuntu Desktop」で初期ユーザーセットアップを行った後、自動削除可能なパッケージがいくつか残ります。自動削除可能なパッケージを削除するには、以下のコマンドを実行してください。
sudo apt autoremove --purge
4.好ましくないオーディオデバイスの選択
「Raspberry Pi」向け「Ubuntu Desktop」では、デバイスを再起動してもユーザーが選択したオーディオデバイスを「PipeWire」がそのまま維持し続けます。しかし「Raspberry Pi 400」では、デフォルトのオーディオデバイスに無効なオーディオデバイスが選択されます。
また同様に「Raspberry Pi 4」でも、デフォルトのオーディオデバイスに好ましくないオーディオデバイスが選択されます。
必要に応じて利用したいオーディオデバイスに切り替えてください。
5.crdaパッケージの削除
「Ubuntu 22.04 LTS」で「crda」パッケージが削除されました。これによりWiFiの規制ドメインの選択を「/etc/default/crda」経由で行えなくなりました。
上記でも紹介した通り「netplan」の「regulatory-domain」設定でWiFiの規制ドメインの設定を行ってください。
6.Totemが動作しない
「Totem」はデフォルトでインストールされているメディアプレーヤーです。「Totem」で動画ファイルを開くことができません。
不具合の詳細は以下を参照してください。