Ubuntu 20.04 LTSベースのUbuntu Touch OTA-1
2023年3月27日、「Ubuntu 20.04 LTS」ベースの「Ubuntu Touch OTA-1」がリリースされました。初のUbuntu 20.04 LTSベースのUbuntu Touch
今回リリースされた「Ubuntu Touch OTA-1」は、初の「Ubuntu 20.04 LTS」ベースの「Ubuntu Touch」です。「Ubuntu 16.04 LTS」ベースの「Ubuntu Touch」は、以前紹介した「Ubuntu Touch OTA-25」で最後になります。
最初は限定的なリリース
今回のリリースは初リリースということもあり、サポート対象デバイスは限定的です。また以前のOTAと異なり、ユーザーが明示的にアップグレードする必要があります。
今後次期OTAの「Ubuntu Touch OTA-2」のリリースが控えていますが、「Ubuntu Touch OTA-2」で不具合の修正及び更なる動作確認を行った後、サポート対象デバイスが拡大されていく予定です。
対象デバイス
今回リリースされた「Ubuntu Touch OTA-1」は、以下のデバイスが対象になっています。- Fairphone 4
- Google Pixel 3a
- Vollaphone 22
- Vollaphone X
- Vollaphone
他のデバイスについて
その他の一部のデバイスでも「Ubuntu Touch OTA-1」を利用できますが、一部の機能が利用できないなど、動作に制限が出る可能性があります。詳細は以下を確認してください。
Pine64について
以下のデバイスについては、個別にアップデートが提供されます。- PinePhone
- PinePhone Pro
- PineTab
stableチャンネルでのアップデートリリースでは、「OTA-1」の名称は付きません。
主な変更点
主な変更点をピックアップします。1.ベースOSの変更
ベースOSが「Ubuntu 16.04 LTS」から「Ubuntu 20.04 LTS」へ変更されました。2.サポートデバイス
「Android 9」以降のデバイスがサポートデバイスになりました。3.デスクトップ環境の名称変更
「Unity 8」が「Lomiri」に名称変更(フォーク)され、多くのコンポーネントの名称が「Lomiri」の名前空間に沿うように変更されました。これにより「Ubuntu」以外のディストリビューションでも「Lomiri」を利用できるようになりました。
4.systemdに変更
起動システムが「Upstart」から「systemd」に変更されました。5.Ayatana Indicatorに変更
インジケーターの仕組みが「Ubuntu Indicator」から「Ayatana Indicator」に変更されました。6.Waydroidに変更
Linux上でAndroidアプリを動かすためのシステムが、「Anbox」から「Waydroid」に変更されました。7.GCC 12とQt 5.15に対応
多くのコンポーネントが「GCC 12」と「Qt 5.15」でビルドできるようになりました。8.Network Managerのバックポート
「Network Manager」はネットワークを管理するためのソフトウェアです。「Ubuntu 22.04 LTS」からバックポートされた「Network Manager 1.36.6」が採用されています。
9.Bluezのバックポート
「Bluez」はBluetoothデバイスを管理するためのソフトウェアです。「Ubuntu 22.04 LTS」からバックポートされた「Bluez 5.64」が採用されています。
10.セルブロードキャストの試験的なサポート
セルブロードキャストが試験的にサポートされました。11.MMSのサポート改善
「Nuntium」の改善によりMMSを受信する際の様々な問題が修正されました。12.USB-CとUSB-PDのサポート
「USB-C」と「USB-PD」がサポートされました。13.Aethercast
「Fairphone 4」及び「Xiaomi Mi A2」で「Aethercast」が有効になりました。14.マイクをミュートにできない不具合の修正
一部のデバイスで電話中に電話のマイクをミュートにできない不具合が修正されました。UIの改善
「Lomiri」などUIの改善点です。1.インジケーター
インジケーターメニューを半透明で表示できるようになりました。キーボードインジケーターがC言語で書き直されました。
2.視覚効果の改善
見た目のUI効果が新しくなりました。3.PINコードの改善
時計のような円状のPINコード入力画面が追加されました。またPINコードは従来4桁に制限されていましたが、4桁から12桁のPINコードがサポートされました。
4.デスクトップモードの改善
「Ubuntu Touch」にはPCのデスクトップのようなUXを提供するデスクトップモードがありますが、デバイスをドッキングステーションに接続した時に、電話モードとのデスクトップモードの切り替えがより適切に切り替わるようになりました。またデスクトップモードでは、ワークスペースが試験サポートされました。
5.壁紙の追加
壁紙が追加されました。6.X11アプリのサポート改善
「Mir」及び「qtmir」で「Xwayland」の統合が改善され、従来のX11アプリのサポートが改善されました。アプリの改善
アプリの改善点です。1.Morph Browser
「Morph Browser」はデフォルトのウェブブラウザーです。レンダリングエンジンの「QtWebEngine」が「QtWebEngine 5.15.11」にアップデートされました。
2K動画再生のハードウェアアクセラレーション
「QtWebEngine」のハードウェアアクセラレーションに対応した動画再生機能により、有名な動画サイトでハードウェアアクセラレーションによる2K動画再生がサポートされました。ビデオチャットのサポート
「Jitsi Meet」によるビデオチャットがサポートされました。2.カメラアプリ
「lomiri-camera-app」によるバーコードリーダー機能が提供されており、アプリの開発者はこれを利用したバーコード連携機能を提供できます。3.ダイヤラー及びメッセージアプリ
ダイヤラー及びメッセージアプリは、Lomiriのランチャーに未読メッセージ数を表示できるようになりました。またメッセージアプリでは、ピンチアウト操作でメッセージを拡大表示できるようになり、メッセージの読み込み速度も改善されています。
4.アドレスブックアプリ
連絡先とURLアドレスにメモを追加できるようになりました。5.カレンダーアプリ
カレンダーアプリでは、パフォーマンスが改善されています。6.ミュージックアプリ
ミュージックアプリでは、Content Hubサービスからファイルを読み込めるようになりました。既知の問題
既知の問題です。1.黒ウィンドウが表示される
「Pixel 3a」及び「Xiaomi Mi A2」で「Xwayland」利用時に、黒ウィンドウが表示されます。2.画面がちらつく
「Fairphone 4」でシャットダウン時や通常の操作時に、画面がちらつくことがあります。回避策は電源ボタンの長押しによる強制シャットダウンです。
3.WiFiホットスポットがオフにならない
スイッチをオフにしてもWiFiホットスポットがオフにならないことがあります。4.WiFiホットスポットが動作しない
「Volla Phone」や「Samsung Galaxy S7」でWiFiホットスポットが動作しません。5.HFPがSIMカードとして表示される
HFPに対応したBluetoothデバイスは、ネットワークインジケーターでSIMカードとして表示されます。またデバイスを再起動してもこの項目が消えることはありません。
アプリの既知の問題
アプリ関連の既知の問題です。1.アップデートの進捗表示が途中で止まる
システム設定のアップデートの進捗表示で、ダウンロードの進捗表示が時々止まってしまうことがあります。この場合一旦システム設定を終了させ、再度起動すれば、正しいダウンロードの進捗が表示されます。
2.ノートアプリ
ノートアプリで新しいEvernoteアカウントを追加することができません。3.連絡先アプリ
連絡先アプリはGoogle APIの廃止により、Google連絡先と同期することはできません。4.時計アプリ
アラーム時計の設定でカスタムサウンドやメロディーを指定している場合、他の選択肢が選択されている状態でも常にカスタムサウンドやメロディーが再生されます。Waydroidの既知の問題
「Waydroid」に関する既知の問題です。1.Waydroidコンテナーを初期化するUIがまだない
「lomiri-system-setting」にWaydroidコンテナーを初期化するUIがまだ実装されていません。実装されるまで代わりに「Waydroid Helper」を利用してください。
2.センサーの未サポート
「Waydroid」でまだセンサーがサポートされていません。そのためデバイスを回転してもアプリは回転しません。
3.Ubuntu TouchアプリとAndroidアプリの未区別
将来的にLomiriランチャーでUbuntu TouchアプリとAndroidアプリが区別される予定です。4.プリインストールアプリがない
「F-Droid」など「Waydroid」にプリインストールされているストアアプリはありません。そのため「Waydroid」に内蔵のウェブブラウザーで別途必要なアプリを入手する必要があります。
5.画面下部の描画の問題
AndroidアプリやAndroidのホーム画面で、画面下部の数ラインが正しく描画されません。6.アプリのフリーズ
Lomiriランチャーから直接Androidアプリを起動した場合、ボトムバーのナビゲーションボタンをクリックした時に、アプリがフリーズします。Ubuntu Touch OTA-1をインストールするには
「Ubuntu Touch OTA-1」のインストール方法です。1.すでにUbuntu 20.04 LTSベースのUbuntu Touchを利用している場合
すでに「Ubuntu 20.04 LTS」ベースの「Ubuntu Touch」を利用している場合、システム設定のアップデート画面からアップデート設定画面を開き、チャンネルの設定を「20.04 Stable」に切り替えてください。その後アップデートを実施してください。
2.Ubuntu 16.04 LTSベースのUbuntu Touchを利用している場合
現在「Ubuntu 16.04 LTS」ベースの「Ubuntu Touch」を利用している場合、「1.」と同じ方法でアップグレード可能です。もしくは「Ubuntu Touch」のインストーラーを利用してワイプオプションをオフにしたまま「Ubuntu Touch OTA-1」をインストールしてください。
いずれにせよデバイスが「Ubuntu Touch OTA-1」に対応しているかどうかを以下で確認した上で、アップグレードを行ってください。
ちなみに「Ubuntu Touch OTA-1」へのアップグレード及びアップデートは、2023年3月27日からデバイスごとにランダムに提供されます。
これは「Ubuntu Touch OTA-1」に重大な問題が見つかった時に「Ubuntu Touch OTA-1」の提供を中止するためです。
3.Ubuntu Touchを新規にインストールする場合
「Ubuntu Touch」を新規にインストールする場合、以下を参考にして「Ubuntu Touch OTA-1」をインストールしてください。Ubuntu Touchとは
「Ubuntu Touch」は、スマートフォンやタブレットなどモバイルデバイス向けのOSであり、ユーザーのプライバシーと自由を尊重するOSです。UbuntuベースのOS
「Ubuntu Touch」は「Ubuntu」ベースで開発されているOSであり、開発は「UBports」コミュニティーにより行われています。モバイルのUXとデスクトップのUX
外部ディスプレイとキーボード、そしてマウスをモバイルデバイスに接続すれば、UIがデスクトップ向けのUIに変化し、デスクトップとして活用することもできます。つまり1つのモバイルデバイスで、モバイルのUXとデスクトップのUXを利用することができます。
Ubuntu Touchがサポートしているデバイス
「Ubuntu Touch」がサポートしているデバイスや、各デバイスで利用可能な機能及び制限は、以下を参照してください。Ubuntu Touchインストーラー
「Ubuntu Touch」は「UBports Installer」を利用してインストールします。「UBports Installer」は、「Windows」「macOS」「Linux」に対応しています。
「UBports Installer」の使い方は、以下の動画を参考にしてください。