Linux Mint月刊ニュース
「Linux Mint」開発チームは、Linux Mint月刊ニュースにて「Linux Mint」の開発状況や取り組みを紹介しています。リポジトリーの負荷分散
以前紹介したように、「Linux Mint」が提供するパッケージリポジトリーの負荷が高くなっており、この負荷の軽減のためFastlyを活用した新しいパッケージリポジトリーの提供が予定されています。現在このリポジトリーのテストが呼びかけられています。
このリポジトリーの利用方法は、上記リンク先を参照してください。
Linux Mint 公式サーバー
現在の「Linux Mint」公式サーバーはシカゴに配置されており、1 Gbpsのネットワーク帯域で接続されています。ユーザーがこの公式サーバーにアクセスする際、シカゴから遠くなるほど遅延が大きくなります。
また「Linux Mint」のリリースやサイズの大きいパッケージがアップデートされた時に、多くのユーザーが一斉にこのサーバーにアクセスすると、サーバーのネットワーク帯域をアクセスしてきたユーザー間で共有するため、ダウンロード速度が大きく低下したり、エラーが発生します。
2006年に「Linux Mint」が登場して以来、プロジェクトの規模が大きくなるに連れ、ユーザー数の拡大と共にサーバーへの負担も大きくなっていきました。
それに合わせサーバーを増強し、負荷の分散を図ってきました。
しかしそれでもサーバーの負荷問題は依然として残っています。
CDNによる負荷分散
そこでFastlyによる負荷分散の導入が予定されています。FastlyはCDNであり、世界中にサーバーが配置されています。
そのためシカゴからの距離はもはや関係ありません。
またFastlyはリポジトリーをキャッシュするため、「Linux Mint」公式サーバーがダウンしてもFastlyからリポジトリーを提供できます。
Linux Mintの利用統計
「Linux Mint」はDatadogとパートナーシップを結び、「Linux Mint」の利用統計を計測するようになりました。以前紹介した各エディションの利用統計は、Datadogを利用した分析結果から得られています。
「Linux Mint」はDatadogの活用により、リポジトリーで提供しているパッケージの内、最も利用されているパッケージやバージョン、i386アーキテクチャーの利用状況など、様々な情報を把握できます。
これらの情報は「Linux Mint」の開発に活用されます。
ちなみにこの利用統計は「Linux Mint」公式ウェブサイトのダウンロードページから収集されたものであり、OS内でテレメトリー情報の収集は行っていません。
Jargonaut
「Jargonaut」は現在開発中の新しいチャットアプリです。現在開発の進捗は75%であり、順調に開発作業が進められています。
Matrixの導入
「Matrix」はSlackやDiscordに似た使い勝手を提供するオープンなコミュニケーションプラットフォーム(プロトコル)です。「Linux Mint」は「Matrix」へ移行し、次期メジャーバージョンの「Linux Mint 22」では、「Jargonaut」の代わりに「Matrix」のクライアントアプリである「Element」が導入される予定です。
Linux MintとMatrixの統合
「Element」の導入にあたり「Linux Mint 22」では、「Matrix」ウェブアプリがプリインストールされます。このウェブアプリは「Element」を利用して「Linux Mint」のスペースに接続します。
このウェブアプリはWebApp Managerで管理されており、異なるMatrixクライアントを指定したり、このウェブアプリが不要なら削除することも可能です。
ちなみに「Linux Mint」のスペースは以下からアクセス可能です。
プリインストールアプリ
「Linux Mint 22」では、以下の方針でプリインストールアプリが採用されます。プリインストールから削除されるアプリ
フォントを表示する「GNOME Font Viewer」はプリインストールアプリから外されます。プリインストールアプリのダウングレード
以下のアプリは「GTK 3」を利用しているバージョンにダウングレードされます。- Celluloid
- GNOME Calculator
- Simple Scan
- Baobab
- System Monitor
- GNOME Calendar
- File Roller
- Zenity
「GTK4/libAdwaita」を用いたGNOMEアプリはGNOMEのデザイン方針に沿ったアプリであり、「Linux Mint」のデザインとは調和しないためです。
また将来を見据えこれらのアプリはZenityを除き、フォークが検討されています。
またZenityの利用は中止される予定です。
「libAdwaita」はGNOMEアプリのために用意されている機能(ライブラリー)であり、またGNOMEのアプリはGNOME上での動作が想定されているアプリです。
XAppプロジェクト
「Linux Mint」では特定のLinuxディストリビューションやデスクトップ環境に依存しないアプリを開発するXAppプロジェクトを推進しています。XAppプロジェクトの成果は現状主に「Linux Mint」で活用されていますが、XAppプロジェクトでは「Linux Mint」以外にもGNOMEのデザインが調和しない他のLinuxディストリビューションとの連携及び連携強化に取り組んでいきます。
Adwaitaテーマの削除
「Cinnamon 6.2」で「Adwaita」テーマはテーマ一覧から削除されます。「Adwaita」テーマは以下のようにGNOME以外でサポートされていないためです。
ちなみに「GTK」が「Adwaita」テーマに依存するため、「Adwaita」テーマ自身を削除することはできません。
そこでテーマ一覧から「Adwaita」テーマを非表示にする修正が加えられます。
また「MATE」や「Xfce」でも同様に対応が取られる予定です。
Flatpakアプリの検証と信用
「Linux Mint」のソフトウェアマネージャーはFlatpakに対応しており、ユーザーは簡単にFlathubで公開されているFlatpakアプリをインストールできるようになっています。そのFlatpakアプリ、信用できますか?
Flatpakアプリは第三者が提供しているアプリであり、その提供者も様々です。例えば以下でFlatpak版Google Chromeが提供されています。
Google Chromeは非常に著名なウェブブラウザーであり、恐らく多くのカジュアルユーザーは、Flatpak版Google ChromeはGoogleが公式に提供しているものだと思うでしょう。
しかし実態は異なります。
Flatpak版Google ChromeはGoogleが公式に提供しているものではなく、第三者が提供しています。
つまりユーザーはFlatpak版Google Chromeをインストールする時に、提供者を確認及び検証しない場合、その第三者を暗黙のうちに信用することになります。
ちなみにFlathubでは各アプリのリンクタブから、アプリの提供者を確認できるようになってはいますが、ユーザーが適切に提供者を確認及び検証できるかどうか、そしてその提供者を信用するかどうかはユーザーに委ねられています。
検証済みアプリ
Flathubではアプリの提供者が開発元であると確認できた場合や、その開発元が承認した第三者であると確認できた場合に、検証済みのマークを表示するようになっています。現在Flathubでは42%のFlatpakアプリが検証されています。
ソフトウェアマネージャーの改善
残念ながら世の中には悪意あるソフトウェアが存在しており、「Linux Mint」ではそのリスクを軽減するため、ソフトウェアマネージャーの改善が予定されています。まずFlathubで未検証となっているFlatpakアプリは、デフォルトでソフトウェアマネージャーに表示されないようになります。
未検証のアプリも表示するように設定を変更することも可能です。
次に未検証のアプリも表示する場合、未検証のアプリの評価スコアに0が表示されます。
また未検証であることを示すマークも表示されます。
ただ最終的な意思決定は引き続きユーザーが行うことになります。