Ubuntu 24.10 の開発方針とロードマップ
Ubuntu 24.10 の開発方針とロードマップを紹介します。ロードマップはあくまで方針であり、途中で変更になる可能性もあります。
前回紹介したロードマップは、以下を参照してください。
ちなみに今回紹介するロードマップには、Ubuntu 24.04 LTS 向けの方針も含まれています。
Ubuntu on Windows
UbuntuではWSL向けUbuntuやHyper-V向けのUbuntuも、公式にサポート対象として取り組んできます。Hyper-V向けUbuntu 24.04 LTSのリリース
WindowsのHyper-V向けUbuntu 24.04 LTSのディスクイメージがリリースされました。これにユーザーはWindows上の仮想マシンで簡単にUbuntu 24.04 LTSマシンを構築できるようになりました。
また近々、Hyper-Vのクイック作成からUbuntu 24.04 LTSの仮想マシンを構築できるようになる予定です。
WSL向けUbuntuで環境構築をもっと簡単に
Ubuntu 24.04 LTSのリリースに合わせ新しいcloud-initがリリースされました。このcloud-initで簡単にUbuntuの環境構築を行えるようになりました。
Windows側のボリュームにcloud-configファイルを作成し、ファイル内に環境設定を記述すれば、WSLでUbuntu 24.04 LTSをクリーンインストールする時に、自動的にこの設定ファイルから必要な処理を行い、環境を構築してくれます。
Active Directoryのサポート改善
マシンの管理にActive Directoryを導入している企業に向け、Active Directoryのサポートが改善されます。UbuntuではUbuntuクライアントでActive Directoryに対応するため、Active Directory Group PolicyクライアントソフトウェアのADSysを開発及び提供しています。
Ubuntuデバイスの管理を容易に
ADSysを利用すれば、Active Directory環境でUbuntuのシステム構成作業を簡略化できます。ADSysはSSSDやWinbindが提供する既存のユーザー認証機能を活用し、広範なデバイスやユーザーポリシーを管理できます。ADSysを利用するには、Ubuntu Proの契約が必要です。
Ubuntu 24.04 LTSでサポート改善
Ubuntu 24.04 LTSでは、以下のポリシーに対応しました。- 権限の管理とローカル管理者の削除
- リモートスクリプトの実行
- AppArmorプロファイルの管理
- ネットワーク共有設定
- プロキシー設定
- 証明書の自動登録
クラウドベースのIDプロバイダー対応
Authdは、OpenID ConnectやEntra ID(Azure Active Directory)といったクラウドベースのIDプロバイダーに対応した新しい認証デーモンです。Authdのドキュメントは、以下からアクセスできます。
Authdの開発が進められており、テスト版のAuthdがリリースされ、テストのフィードバックが求められています。
現在の実装では、ログイン画面でデバイスを認証するQRコードを表示するため、GNOME Shellに対する修正が加えられています。
また対話的なリモート認証をサポートするため、OpenSSHにも修正が加えられています。
OEMインストールのサポート
OEMインストールとは、予めUbuntuをPCにプリインストール及び初期セットアップしておき、ユーザーが初回起動時にユーザーアカウントを作成して、Ubuntuを利用できるようにする機能です。WindowsプリインストールPCでよく見かける機能です。
SubiquityとGNOME Initial Setup
インストーラーのバックエンドであるSubiquityと、ユーザー環境の設定を促すGNOME Initial Setupに、OEMインストールの機能を実装する計画があります。この計画の一環として、Ubuntu 24.04.1 LTSでOEMインストールのサポートに向けた改良作業が行われました。
GNOME Initial Setupはユーザーアカウントがシステムに存在しない時にトリガーされ、設定ファイルに基づき、ユーザーに各種設定を促します。
GNOME Initial Setupの画面では、Ubuntuのブランディングに沿うようにカスタマイズされ、オプションでEULA(ライセンス同意)PDFファイルを表示する機能や、ホスト名を設定する機能が利用できます。
またキーボードによる操作性も向上しました。
GNOME 46.2
Ubuntu 24.04 LTSユーザーに、GNOME 46.2をリリースする作業が行われています。Ubuntu 24.04 LTS向けGNOME 46.2では、NVIDIA Waylandセッション利用時、古いアプリのレンダリングをサポートするために必要なXwayland関連の機能が動作するように、パッチが適用されています。
この問題はUbuntu 24.04 LTSで提供しているNVIDIA GPUドライバーに起因する問題ですが、Ubuntu 24.10で対応される見込みです。
Snapの改善
Snapの改善作業が進められています。Snapはアプリをパッケージング及びデプロイする仕組みであり、その仕組みに基づきアプリのインストールやアップデート、そしてアプリの実行環境を提供するなど、アプリ全体を管理する仕組みも提供しています。
Ubuntu 24.04 LTSでプリインストールされるFirefoxやThunderbirdは、Snapで提供されています。
このSnapの使い勝手の改善がUbuntu 24.10で予定されています。
アップデート通知の改善
Snapアプリにアップデートが見つかった時、デスクトップ上に通知が表示され、ユーザーにアプリのアップデートを促しています。実行中のアプリがアップデート可能だった場合、ユーザーはアップデート通知をクリックすると、App Centerのアプリ管理画面に移動するようになりました。
また複数のSnapアプリがアップデート可能だった場合、それぞれにアップデート通知を提供するのではなく、一つの通知にグルーピングされて表示されるようになりました。
アップデート処理の改善
Snapアプリは実行中に自身をアップデートすることができません。そこで実行中のSnapアプリが終了した時に、そのSnapアプリをアップデートすることになります。
Snapアプリのアップデートは基本的にバックグラウンドで実施されるため、アップデート状況がユーザーから分かりにくかったのですが、この状況が改善されます。
Snapアプリ終了時に、以下のようにアップデートの進捗を示す画面が表示されるようになります。
またバックグラウンドでSnapアプリがアップデートされる時には、以下のようにドックに登録されているアプリのアイコン上に、アップデートの進捗が表示されるようになります。
他にも改善を予定
今後更にSnapの使い勝手を改善するための作業が予定されており、具体的な内容は今後明らかになっていく予定です。Ubuntu Core Desktop on Core 24
Ubuntu Core DesktopはSnap版Ubuntu Desktopです。現在のUbuntu Desktopは、debパッケージが主体となって構成されており、一部のプリインストールソフトウェアがSnapで提供されています。
Coreパッケージ
CoreパッケージはSnapで動作するアプリを支えるSnapパッケージ(ベースコンポーネント)です。Coreパッケージに含まれるソフトウェアはUbuntu LTSから構成され、Core 24パッケージはUbuntu 24.04 LTSから構成されています。
現在Core 24への移行が積極的に行われており、Ubuntu Core Desktopもその一つです。
開発者プレビュー版Ubuntu Core Desktopのリリースに向け、アーキテクチャー周りの議論が行われています。