Ubuntu 25.10 で導入された大きな変更
2025年9月26日、Ubuntu 25.10 で導入された大きな変更やその振り返りが、以下で紹介されています。Ubuntu 25.10 のリリースまで後もう少し
Ubuntu 25.10 のリリースまで残り約2週間となりました。Ubuntu 25.10 は2025年10月9日にリリースされる予定です。
Ubuntu 26.04 LTS への布石
Ubuntu 25.10 は次期 LTS リリースの Ubuntu 26.04 LTS の一つ前のバージョンということもあり、すでに何度か紹介しているようにシステムに大きな変更が含まれています。Ubuntu 24.10 から Ubuntu 25.10 までに取り込まれた変更は、Ubuntu 26.04 LTS への布石となります。
LTSリリースの Ubuntu では安定性と信頼性に優れた OS を提供し、通常リリースの Ubuntu では野心的で刺激的な OS を提供します。
ただしこれは通常リリースの Ubuntu の実用性に難があるという意味ではなく、積極的にモダンな OS にしていくために、通常リリースの Ubuntu には大きな変更が入りやすいということを意味しています。
sudo-rs の導入
以前紹介しましたが、sudo は Rust で実装された sudo に置き換わりました。完全な互換性はない
sudo-rs は sudo-ws(従来の実装)と完全な互換性はありません。しかし幅広く利用されている機能は sudo-rs で実装されており、多くのユーザーにとってこの非互換が問題になることはないでしょう。
sudo-rs と sudo-ws の主な違いについては、以下を参照してください。
従来の sudo も利用可能
従来の sudo(sudo.ws)も引き続き利用可能です。sudo.ws は次期バージョンの Ubuntu 26.04 LTS でも利用可能です。
また Ubuntu 25.10 では、従来の sudo も sudo-rs と共にインストールされており、ユーザーは従来の sudo を追加インストールすることなく利用できます。
従来の sudo はコマンド名の最後に .ws がついています。
ちなみに sudo-rs はコマンド名の最後に -rs がついています。
デフォルトでは sudo を実行すると、sudo-rs の sudo が実行されるようになっています。
sudo コマンドを従来の sudo に戻す方法
もし sudo-rs 由来の sudo コマンドに運用上の問題があり、従来の sudo.ws 由来の sudo コマンドに戻したいなら、以下の方法で元に戻すことができます。ただしこの方法は積極的に推奨される方法ではありません。
対話的に変更する方法
まず対話的にデフォルト設定を変更するには、端末で以下のコマンドを実行します。sudo update-alternatives --config sudo
以下のようにデフォルトで使用する sudo コマンドの一覧が表示されるので、/usr/bin/sudo.ws の選択肢の番号を入力してエンターキーを押します。
この画面の例では、選択肢の番号は 1 ですね。
そうすると以下のようにデフォルトの sudo コマンドは、sudo.ws 由来の sudo コマンドが使用されるようになります。
直接変更する方法
次に直接 sudo.ws 由来の sudo コマンドに変更するには、端末で以下のコマンドを実行します。sudo update-alternatives --set sudo /usr/bin/sudo.ws
sudo-rs 由来の sudo コマンドに戻すには、端末で以下のコマンドを実行します。
sudo update-alternatives --set sudo /usr/lib/cargo/bin/sudo
現在の sudo を確認するには
現在の sudo を確認するには、以下のコマンドを実行します。update-alternatives --display sudo
以下のように「リンクは現在」の行に現在の設定が表示されます。
以下の例では sudo.ws 由来の sudo コマンドが設定されています。
rust-coreutils
こちらも以前紹介しましたが、coreutils は Rust で実装された coreutils に置き換わりました。rust-coreutils 0.2.2
現在採用されている rust-coreutils は rust-coreutils 0.2.2 です。最新バージョンにアップデートしたことで Base64 のパフォーマンスの問題が解消されています。
完全な互換性はない
Rust 版 coreutils も従来の GNU 版 coreutils と完全な互換性がありません。従来の coreutils も利用可能
そのため従来の coreutils も引き続き利用可能です。GNU 版 coreutils に戻すには
もし Rust 版 coreutils 由来の各種コマンドに運用上の問題があり、従来の GNU 版 coreutils 由来のコマンドに戻したいなら、以下の方法で元に戻すことができます。端末で以下のコマンドを実行します。
sudo apt install --allow-remove-essential coreutils-from-gnu coreutils-from-uutils-
逆に Rust 版 coreutils に戻したいなら、端末で以下のコマンドを実行します。
sudo apt install coreutils-from-uutils
ツールチェーン
Ubuntu 25.10 では開発者体験を向上させるツールチェーンが採用されています。OpenJDK
OpenJDK 25 が利用可能です。OpenJDK 25 は2025年9月16日にリリースされた最新 LTS リリースの OpenJDK です。
Zig
Zig はプログラミング言語です。端的に言えば Rust の競合に位置するプログラミング言語だと思えば分かりやすいでしょう。
Ubuntu 25.10 では amd64 及び arm64 向けに Zig 0.14.1 が採用されています。
将来的にサポートするアーキテクチャーが拡大される予定です。
デフォルトのバージョンをインストールする zig-defaults パッケージは現在 Zig 0.14.1 をインストールするようになっています。
sudo apt update && sudo apt install zig
zig version
zig version
Zig のスタータープロジェクトの作成とビルドは、以下のようにコマンドを実行します。
zig init && zig build
実行可能ファイルは、以下のように実行できます。
./zig-out/bin/root
.NET
2025年11月にリリース予定の .NET 10 が LTS リリースになります。Ubuntu 25.10 では最新の .NET 10 RC 版が利用可能です。
また .NET Snapcraft Plugin の改良によりモノレポのサポートが改善され、カスタムフラグ属性を通じた MSBuild の開発者体験が向上ました。
PowerShell
Snap 版 PowerShell は amd64 に加え、arm64、ppc64el、s390x アーキテクチャーもサポートしています。GraalVM
Snap 版 GraalVM CE では amd64 に加え arm64 もサポートされ、最新の v25 と v21 を利用可能です。Spring
devpack-for-spring は Spring プロジェクトの開発を支援するコマンドラインツール群を提供する Snaps です。devpack-for-spring にインストールや開発環境の構築を支援する新しいセットアップコマンドが追加されました。
開発者向けのドキュメント
Ubuntu で開発を始めたい開発者は、以下の開発者向けドキュメントを参照すると良いでしょう。また開発者向けのポータルサイトは、以下からアクセスできます。
RISC-V
Ubuntu 25.10 では RISC-V 向けの Ubuntu 25.10 も提供されます。RVA23S64 ISA プロファイル
RVA23S64 ISA プロファイルでは、スケーラブルベクターやポインターマスキングのサポートなど、RISC-V に数々の新しい機能がもたらされます。他にもオプションで制御フロー整合性やベクター暗号もサポートされています。
これにより ARM や x86 アーキテクチャーと比較しても遜色ないパフォーマンスが期待できるでしょう。
ベースラインを上げる
さて RISC-V 向け Ubuntu 25.10 ではこれに合わせ、ベースラインが RVA23 へ上げられました。これに伴う main リポジトリーの再構築では、数件の問題が発生しました。
GCC に関連する不具合が2件ありましたが、これらの不具合はいずれもアップストリームによって修正されました。
ただ s390x 上の QEMU によるエミュレーション環境では、エンディアンの問題が残ったままになっています。
Ubuntu 26.04 LTS ではリポジトリー全体の再構築が予定されています。
RVA23 に対応したハードウェアはまだ無い
RVA23 に対応したハードウェアはまだ市場に流通していません。そのため RISC-V 向け Ubuntu 25.10 では、QEMU 環境のみがサポートされます。
既存のハードウェアに関しては、Ubuntu 24.04 LTS でサポートされます。
Raspberry Pi
起動プロセスの改善のため、新しいブートパーティションレイアウト(A/B boot)が導入されました。ブートアセットの検証
これにより新しいブートアセットがブートパーティションに書き込まれる時に自動的にテストが実行され、問題があれば既存の正常な状態にロールバックすることができ、起動プロセスの信頼性が向上します。A/B boot の詳しい情報は、以下を参照してください。
ARM64
Qualcomm Snapdragon 搭載のノート PC で UEFI セキュアブートを利用できるようになりました。リリース関連
Ubuntu のリリース関連の変更点です。月次スナップショットの導入
Ubuntu 25.10 ではリリースプロセスが一部変更され、月次スナップショットのリリースが導入されました。Ubuntu 25.10 では月次スナップショットが4回リリースされました。
- Questing Snapshot 1 がリリースされました・ディスクイメージのダウンロード
- Questing Snapshot 2 がリリースされました・ディスクイメージのダウンロード
- Questing Snapshot 3 がリリースされました・ディスクイメージのダウンロード
- Questing Snapshot 4 がリリースされました・ディスクイメージのダウンロード
そして Questing Snapshot 4 の後に Ubuntu 25.10 β版がリリースされました。
そして最後に安定版の Ubuntu 25.10 がリリースされます。
Ubuntu 25.10 β版や安定版の Ubuntu 25.10 のリリースも月次に含めるなら、Ubuntu 25.10 β版が月次5回目のリリースにあたり、安定版の Ubuntu 25.10 が月次6回目のリリースにあたります。
Ubuntu は6ヶ月に一度リリースされるため、6ヶ月間毎月リリースされていることになりますね。
ちなみに Ubuntu 26.04 LTS でも Ubuntu 25.10 と同様に、月次スナップショットがリリースされます。
Dangerous Daily Desktop
Ubuntu 25.10 では開発者やテスター向けに、Ubuntu Desktop に導入される Snaps を edge チャンネルに切り替えたデイリービルドの Ubuntu Desktop をリリースするようになりました。Ubuntu で開発を始めたい開発者の支援
Ubuntu で開発を始めたい開発者を支援するため、開発者向けのドキュメントを充実させる活動が行われています。Ubuntu for Developers
Ubuntu for Developers では、Ubuntu でサポートされているツールチェーンのチュートリアルやセットアップといった開発環境を構築するための手引きなど、各ツールチェンを利用したソフトウェア開発のガイドが紹介されています。Ubuntu for Developers では以下の2種類のドキュメントが追加されました。
- Compiling Spring Boot applications to native executables
- Fast start for Spring Boot apps using OpenJDK CRaC
前者のドキュメントは Spring Boot 3+ を利用して Java アプリケーションをネイティブな実行ファイルにコンパイルするためのチュートリアルです。
後者のドキュメントは OpenJDK の Coordinated Restore at Checkpoint(CRaC))を紹介するドキュメントです。
Ubuntu project documentation
Ubuntu project documentation では、Ubuntu プロジェクトでソフトウェアがどのように開発されメンテナンスされているのか、Ubuntu プロジェクトの方針や Ubuntu プロジェクトへの関わり方が紹介されています。Ubuntu プロジェクトに参加してソフトウェア開発に関わりたい、貢献したい、Ubuntu をより優れたものにしていきたい開発者向けのドキュメントです。
Ubuntu project documentation は現在作成途中であり、コンテンツの充実はこれからになります。
Ubuntu 26.04 LTS に向けて
最後に Ubuntu 26.04 LTS に向けた話題です。3週間後には Ubuntu 26.04 LTS の開発が始まります。
Ubuntu 26.04 LTS は文字通り LTS リリースの Ubuntu であり、長期サポートが提供されるリリースです。
個人ユーザーは元よりエンタープライズの分野でも幅広く活用されるリリースになります。
安定性の確保
安定性の確保に向けたさらなる取り組みが実施されます。Ubuntu 25.10 における rust-coreutils のテストでは、rust-coreutils の一部の機能でパフォーマンスが大幅に低下する問題が発見されました。
- base64 implementation almost 8x slower than GNU for some large files
- cksum implementation up to 17x slower than GNU for some large files
この問題は早期にアップストリームに報告され、すでに rust-coreutils 0.2 で修正されています。
そして Ubuntu 26.04 LTS の開発では、rust-coreutils のテスト範囲が大幅に拡大されます。
問題が見つかった場合、アップストリームと蜜に連携して対応していく方針です。
apt コマンドの改良
apt コマンドにパッケージ操作の履歴を表示する新機能の搭載が計画されています。コマンドの実行例は以下のようになります。
- apt history-info
- apt history-list
これらの機能によりユーザーは、パッケージの状態をより詳細に把握できるようになります。これらの新機能は Ubuntu だけでなく、Debian にも導入される予定です。
さらにパッケージ操作を元に戻す(アンドゥ)機能の実装も計画されています。
Rust 及び Go 向けの開発支援
上述したように .NET や Java を利用する開発者を支援する取り組みが行われました。この取り組みは Rust 及び Go を利用する開発者にも拡大されます。
具体的な内容は今後アナウンスされますが、Golang に対しては開発を支援する devpack の準備が行われています。














