30）・新しいアプリケーションストアやソフトウェアの更新の改善など

Ubuntu Desktop開発チームの取り組み

2023年6月30日、Ubuntu Desktop開発チームは以下で開発チームの取り組みを紹介しています。

Pulse 13 - Ubuntu Desktop engineering update

前回の紹介内容は以下を参照してください。

Ubuntu Desktop開発チームの取り組み・以前のUbuntuフォントファミリーの提供やGNOME Shell 44.2のリリース作業など

今回の取り組みをいくつかピックアップします。

polkitd 122がUbuntu 23.10に登場

polkitdの最新版「polkitd 122」が「Ubuntu 23.10」に登場しました。

Polkit

Polkitはユーザー認証と権限の昇格で使用される仕組みです。
例えば設定からユーザーを追加する時など管理者権限が必要な時に、Polkitでユーザー認証を行い権限を昇格させます。

sudoと異なり権限の昇格範囲を必要最低限に絞ることで、セキュリティーを向上させることができます。
またPolkitは権限を与える範囲を柔軟に制御できるようになっています。

11年ぶりのメジャーバージョンアップ

今までUbuntuで採用されていたPolkitは、なんと11年も前にリリースされた「Polkit 0.105」です。
Ubuntuは「Polkit 0.105」にパッチをあてつつメンテナンスしてきました。

これはPolkitの権限を制御する設定ファイルの仕組みが変わり、設定ファイルの解釈にJavaScriptエンジン（mozjs）を使用するようになったためです。
当時設定ファイルの解釈にmozjsを利用することはセキュリティー上の懸念が強くあり、Ubuntuは設定ファイルの仕組みが変わる前の「Polkit 0.105」を採用し続けてきました。

Use of Javascript rules in polkit

Duktapeの採用とPolkitのアップデート

さて時を経てセキュリティーの懸念を軽減できる環境が整備され、JavaScriptエンジンのDuktapeの登場とPolkitのDuktape対応により、ついに最新版のPolkitへ移行できる日が訪れました。
これに伴い権限を制御するための設定ファイルは新しい仕組みに対応した設定ファイルに移行しています。
今回の移行によりユーザーから見て何かしら操作方法が変わることはありません。

新しいアプリケーションストア

現在のUbuntu Softwareに代わる新しいアプリケーションストアが開発されています。
「Ubuntu 23.10」で新しいアプリケーションストア（App Store）の採用を目指して開発が進められています。

debパッケージのサポート方針

App Storeでもdebパッケージがサポートされます。
現在のUbuntu Softwareと比べると、ユーザーから見てSnapとdebを区別しやすいUIデザインになっています。
例えばSnapとdebの両方で提供されているGIMPでは、以下のようにソフトウェアの提供元にSnapとdeb（Debian）が選択できるようになっています。

しかしApp StoreでSnapとdebを同列に扱うことは目標ではありません。
Snapはdebより後から登場した新しい仕組みであり、App Storeのようなアプリからアプリケーションを扱うのに都合が良い情報が含まれており、これを軸としたUI/UXの設計が行われています。

実際Snapとdebの両方から提供される同一のアプリにパッケージの選択肢を適切に提供することは難しく、またこれにより一部の設計に制約が出てしまうため、Snapとdebの選択肢の提供はApp Storeの目標にはなっていません。

さて開発リソースの都合から、debのサポートは後から登場する予定です。

アプリ評価システムの改善

アプリの評価システムは5段階の評価システムになっています。
これをもっと簡素化した+1/-1（Youtubeで言うところのGoodボタンとBadボタン）の評価方法が検討されています。

また評価の傾きに着目した「most improved」のような新たな評価基準を採用したカテゴリーの新設も検討されています。

ソフトウェアの更新

Ubuntuには標準サポートから提供されるアップデートとUbuntu Pro（ESM）から提供されるアップデートがあります。

ソフトウェアの更新ではこれらのアップデートは区別されていません。
しかしユーザーから見てこの状況は分かりにくさがあったため、標準サポートから提供されるアップデートとUbuntu Pro（ESM）から提供されるアップデートを区別して表示する機能の実装が進められています。