Linux Mint 18.3 Cinnamon Editionの新機能と変更点
「Linux Mint 18.3 Cinnamon Edition」の新機能と変更点の紹介です。サポート期間
「Linux Mint 18.3 Cinnamon Edition」は長期サポート版であり、2021年までサポートされます。また「Linux Mint 18.3」は、「Ubuntu 16.04」をベースに開発されています。
Cinnamon 3.6の採用
「Linux Mint 18.3」では、デスクトップ環境に「Cinnamon 3.6.2」を採用しています。GNOMEオンラインアカウント
GNOMEオンラインアカウントを採用し、オンラインサービスを簡単に利用できるようになりました。GNOMEオンラインアカウントでGoogleアカウントを登録すれば、「Nemo」からGoogleドライブにアクセスできるようになります。
Libinputのサポート
以前は「Synapticsタッチパッドドライバー」が使用されていましたが、「Linux Mint 18.3」では、「Libinputドライバー(xserver-xorg-input-libinput)」がデフォルトでインストールされるようになりました。「Libinputドライバー」がインストールされていれば、「Libinputドライバー」が使用されます。
もし「Libinputドライバー」を削除しPCを再起動すれば、従来通り「Synapticsタッチパッドドライバー」が使用されます。
「Cinnamon 3.6」は両ドライバーに対応しており、多くのタッチパッドで自動的に設定が行われるようになりました。
スパイス設定モジュールの改良
スパイス設定モジュールが改良され、操作性が向上しています。オンスクリーンキーボード
オンスクリーンキーボードの表示位置やサイズが変更できるようになりました。オンスクリーンキーボードを画面の上部もしくは下部に配置したり、サイズを画面の1/2、1/3、1/4に変更できます。
またAT-SPIのサポートが改善され、完全に動作するようになりました。
AT-SPIは、テキストエントリーにフォーカスをあてた時に、自動的にオンスクリーンキーボードを表示する機能のことです。
CinnamonとOnboardは共存できるようになり、お互いに干渉しなくなりました。
Nemo拡張機能
Nemo拡張機能は、設定ボタンを表示するために設定ツールの名称を「Nemo」に渡せるようになりました。これにより拡張機能を適切に統合しやすくなり、アプリケーションメニューの煩雑さが解消されます。
その他の改良点
- ハイブリッドスリープがサポートされました。
- ウィンドウリストに他のワークスペースを表示できるようになりました。
- インジケーターで中央ボタンのクリックがサポートされ、secondaryActivateを実行できるようになりました。
- ネットワークアプレットに無線LANの再スキャンボタンが追加されました。
- Nemo拡張、cinnamon-session、cinnamon-settings-daemonの翻訳が改善されました。
- Nemo拡張APIのパフォーマンスと安定性が改善され、nemo-media-columnsでは以前より5倍早く動作するようになりました。
- nemo-previewでアニメーションGIF がサポートされました。
ソフトウェアマネージャーの改良
ソフトウェアマネージャー(ソフトウェアの管理)では、見た目のモダン化が進み、使い勝手が改善されています。人気があるアプリのインストールが簡単に
サードパーティー製のアプリ含む人気があるアプリを簡単にインストールできるようになりました。例えば以下のアプリをソフトウェアマネージャーからインストールできます。
- Spotify
- Skype
- Google Earth
- Steam
- Minecraft
デザインの改良
UIがさらにモダン化され、「GNOMEソフトウェア」に触発されたデザインになりました。つまりシンプルで一貫性のあるUIになり、アプリの紹介がより分かりやすくなりました。
パフォーマンスの改善
ソフトウェアマネージャーは軽量化とパフォーマンスの改善が行われました。Webkitの使用を止め、カテゴリーの移動やアプリの表示が高速化されました。
また起動にかかる時間が以前のバージョンよりも3倍も高速化されました。
使い勝手の向上
バックエンドにAptDaemonを採用し、ソフトウェアマネージャーはユーザーモードで動作するようになりました。これによりユーザーは、ソフトウェアマネージャーの起動時にユーザーの認証(パスワードの入力)を行う必要がなくなりました。
ユーザーの認証は、アプリのインストール時やアンインストール時に行います。
また一度認証を行えば、しばらくは再度認証する必要が無くなるため、アプリのインストールやアンインストール作業の流れを止めることはありません。
Flatpakのサポート
「Linux Mint 18.3」では「Flatpak」がデフォルトでインストールされ、ソフトウェアマネージャーは「Flatpak」を完全にサポートしました。「Flatpak」は、既存のシステムに影響を与えずにアプリケーションをインストールし、利用できるようにする仕組みです。
debとFlatpakは大きく異なる仕組みですが、ソフトウェアマネージャーはユーザーにその違いを意識させず、透過的にアプリケーションの操作ができるようになっています。
Flathubが登録済み
デフォルトでは「Flathub」リポジトリーが登録されており、「Flathub」に配置されているアプリケーションがインストール出来るようになっています。もちろんユーザーが他のリポジトリーを追加することも可能であり、リポジトリーを追加すれば、そのリポジトリーに配置されているアプリケーションがソフトウェアマネージャーに表示されます。
バックアップツール
バックアップツールは、機能が大きく変わりました。バックアップツールは、ユーザー個人のファイルをバックアップ及び復元するツールに生まれ変わりました。
ユーザー個人のファイルが対象
バックアップツールは、ユーザーのホームフォルダーのバックアップを作成するツールです。バックアップを作成すると、ユーザー個人のファイルはすべてtarアーカイブに纏められて保存されます。
ファイルをバックアップから復元すると、元々あった場所にバックアップ時と同じパーミッションとタイムスタンプを維持しながら、ファイルがアーカイブから展開されます。
ユーザー認証は必要ない
バックアップツールはユーザーモードで動作するため、今までのようにユーザーの認証は必要ありません。操作も単純化され、以前行った設定は次回以降も引き継がれます。
ソフトウェアのバックアップが簡単に
従来はバックアップするパッケージを選択していましたが、ソフトウェアマネージャーからインストールしたソフトウェアがバックアップ対象になりました。またソフトウェアマネージャーと同様に、バックエンドにAptDaemonを採用しています。
Timeshiftの採用
「Timeshift」は、システムのバックアップを行うツールです。「Linux Mint 18.3」では「Timeshift」がデフォルトでインストールされ、OSのバックアップ及び復元に利用できます。
また定期的にバックアップを作成することも可能です。
システムレポート
「Linux Mint 18.3」ではシステムに関する情報を表示する「システムレポート(System Reports)」がデフォルトでインストールされています。クラッシュレポート
アプリがクラッシュするとその情報が収集され、クラッシュレポートが作成されます。「システムレポート」はそのクラッシュレポートの一覧を表示し、スタックトレースを表示できます。
クラッシュレポートには、開発者が不具合の再現や調査を行う時に必要な情報が含まれています。
しかし一般的なユーザーにとって、コアダンプやスタックトレースの生成は困難な作業です。
「システムレポート」はその作業を支援し、簡単にスタックトレースを入手できます。
不具合報告する時に役立てると良いでしょう。
情報レポート
「システムレポート」は、システムに関する情報を表示する機能も提供しています。リリースノートはすべてのユーザーに対する一般的な情報が含まれています。
一方「システムレポート」では、各ユーザー個人の環境に関連する情報を表示します。
特定のハードウェアや環境に起因する問題の解決や回避策などを提示し、必要な操作を提案します。
HiDPIのサポート改善
HiDPIは各リリースごとに改善が進んでいます。アプリのHiDPIのサポート
ソフトウェアマネージャーとソフトウェアソースがGTK+3に移植され、HiDPIをサポートしました。Cinnamon 3.6で自動スケールのサポート
「Cinnamon 3.6」では、HiDPIの設定が自動的に行われるようになりました。HiDPIディスプレイを利用しているなら、自動的にスケールの設定が行われます。
Window Progressのサポート
「LibXapp」は、アプリケーションがウィンドウマネージャーにアプリの進捗状況を通知する機能をサポートしました。この機能は「window-progress」と呼ばれ、「Cinnamon 3.6」でサポートされています。
この機能に対応したアプリケーションでは、進捗状況をウィンドウリストに表示することができます。
「Linux Mint 18.3」では、以下のアプリケーションが「Window Progress」に対応しています。
- Nemo(ファイル操作の進捗)
- バックアップツール
- Timeshift
- ソフトウェアマネージャー
- ドライバーマネージャー
- USBメモリフォーマッター
- USBイメージライター
- Synapticダイアログを利用するアプリケーション(言語設定、アップデートマネージャーソフトウェアソースなど)
XAppsの改善点
XApps改善点です。Xed
デフォルトのテキストエディターである「Xed」では、テキストのプレビューを表示するオーバービューマップに対応しました。オーバービューマップは、「表示」メニューの「Overview Map」から表示を切り替えることができます。
Xreader
デフォルトのPDFビューワーである「Xreader」では、履歴ボタンがナビゲーションボタンに置き換えられました。履歴は引き続きメニューからアクセスできます。
拡大/縮小ボタンは順番が入れ替えられ、等倍表示(ズームをリセットする)ボタンが追加されました。
これは他のX-Appとデザインを統一するために変更されました。
また、DPIとモニターのサイズを検出し、スクリーン上のドキュメントのサイズを実用紙のサイズに合うよう調整できるようになりました。
この機能はズームを行っていない(ズームレベル100%)の時に機能します。
Xplayer
デフォルトのメディアプレーヤーである「Xplayer」は、フルスクリーン時にウィンドウがより綺麗に見えるように改善され、ウィンドウモード時と一貫性がある表示に改良されました。ログイン画面の設定
ログイン画面の設定では、自動ログインのオプションが追加されました。LDAPユーザーは、ログイン画面でユーザー一覧を非表示にし、ユーザー名を主導で入力することもできます。
また各設定項目でツールチップが表示されるようになり、有効・無効を設定から切り替えられるようになりました。
「numlockx」 のサポートが追加され、「Num Lock」キーを自動で有効化出来るようになりました。
その他の変更点や改善点
その他の変更点や改善点の紹介です。スペルチェックの対象言語の追加
スペルチェック/類義語の対象言語が追加されました。- English
- German
- Spanish
- French
- Italian
- Portuguese
- Russian
Redshift
「Redshift」がデフォルトでインストールされるようになりました。「Redshift」はスクリーンの色温度を時間に応じて調整するツールです。
夜間は目への負担を軽減するため、自動的にスクリーンの色温度を下げます。
「Redshift」はアクセサリーメニューから起動できます。
ドライバーマネージャー
ドライバーマネージャーはより適切な方法でCPUを検出し、そのCPUに対応したマイクロコードのパッケージをインストールできるようになりました。アップロードマネージャーとドメインブロッカー
アップロードマネージャー(mintupload)とドメインブロッカー(mintnanny)は、デフォルトのインストールから外されました。これらのパッケージは引き続き提供されているため、必要ならユーザーは後からインストールすることもできます。
PIAマネージャー
PIAマネージャー(pia-manager)はVPN接続の設定を行うアプリケーションです。デフォルトではインストールされていません。
PIAマネージャーはユーザーモードで動作するようになり、起動時にユーザーの認証が必要なくなりました。
Linux kernel
「Linux kernel」は、「Linux kernel 4.10.0-38」を採用しています。「linux-firmware」は、「linux-firmware 1.157.13」を採用しています。