Lubuntu 25.04 の開発状況
現在 Lubuntu 開発チームは次期バージョンの Lubuntu 25.04 を開発しています。Lubuntu 25.04 の開発状況を紹介します。
最小インストール
Lubuntu のインストーラーは、インストールモードを選択する画面を提供しています。この画面でインストールモードを変更することで、ユーザーはプリインストールするアプリセットを変更できます。
このインストールモードの中で最小インストールは、プリインストールアプリが一番少なくなるインストールモードです。
従来の仕組み
従来の仕組みを簡潔に表現すれば、インストールイメージが含まれている squashfs をマウントし、rsync でインストール先のファイルシステムに Lubuntu を展開していました。言い換えると Lubuntu のライブメディアには、ファイルシステムにインストールするファイル群をまとめた圧縮アーカイブが含まれています。
最小インストールのプリインストールアプリを構成するために
最小インストールが選択された状態で Lubuntu をインストールすると、squashfs の中身がインストール先のファイルシステムにコピーされます。この時点でプリインストールされたアプリ構成は、通常インストールのアプリ構成になっています。
その後最小インストールのアプリ構成にするため、インストール直後に apt remove や apt purge コマンドを実行し、最小インストールのアプリ構成にそぐわないアプリを削除しています。
現状最小インストールではこのような実装になっているため、通常インストールよりもインストールにかかる時間が長くなっています。
インストールにかかる時間を削減しよう
予め最小インストールのアプリ構成をインストール先のファイルシステムに展開できるようにしておけば、インストール後のアプリの削除が不要になり、またファイルシステムに展開するファイル数を削減できるため、インストールにかかる時間を大幅に削減できます。最小インストール用の squashfs スタック
これを実現するため、最小インストールに対応した squashfs スタックが導入されました。今まで最小インストールの選択時に、通常インストールで使用する Standard Layer が使用されていました。
ここに最小インストール用の Minimal Layer を導入し、最小インストールでは Minimal Layer を使用するように変更されました。
この変更により環境にも依りますが、PC へ Lubuntu をインストールするのにかかる時間が 90 秒に短縮されました。
仮想マシンでは 3 分でインストールが完了するようになりました。
Snap のサポート改善
Snap のサポートが改善されました。最小インストールでは Snap のサポートが含まれていませんが、通常インストールやフルインストールでは Snap のサポートが含まれています。
従来の仕組み
以下の例は、左側の Snap パッケージが Lubuntu のライブメディアに含まれている Snap パッケージを表し、右側の Snap パッケージが Snap Store から提供される最新版の Snap パッケージを表しています。Lubuntu をインストールすると、Snap Store から提供される最新版の Snap パッケージが追加パッケージと共にインストールされるようになっています。
言い換えると Lubuntu インストール時に、Snap Store から最新版の Snap パッケージがダウンロードされ、ユーザーの環境にインストールされます。
まるごとダウンロード
この処理はインストール中に実行されますが、最新版の Snap パッケージをインストールするために Snap Store から Snap パッケージをダウンロードする必要があります。この時上記の例では全部で約 171 MB のパッケージがダウンロードされることになります。
またこの時インストーラー上にユーザーにダウンロードの進捗を示す分かりやすい表示はありません。
差分ダウンロード
Snap Store は Snap パッケージの差分ダウンロードに対応しています。ここでいう差分ダウンロードとは、新しいバージョンの Snap パッケージをダウンロードする時に、既存の Snap パッケージと比較し、変更のあった部分のみダウンロードする機能です。
これにより Snap パッケージのダウンロードサイズを抑えることができます。
上記の例に差分ダウンロードを加味すると、以下のようなダウンロードサイズになります。
この結果約 171 MB のダウンロードサイズが 約 69 MB にまで削減されます。
差分ダウンロードを活用することで、ネットワークやストレージリソースの使用量を節約できるだけでなく、インストールにかかる時間も節約できます。
Qt 5 の廃止に向けて
以前紹介したように Ubuntu では、Qt 5 の削除が計画されています。次期 LTS リリースの Ubuntu 26.04 LTS より前に Qt 5 を削除する計画です。
Qt 6 への移行作業
Lubuntu は Qt をベースとしたデスクトップであり、アプリも含め広範に Qt を活用しています。Lubuntu はまだ Qt 6 へ移行していないアプリをできるだけ多く Qt 6 へ移行できるよう、積極的に取り組んでいます。
またLubuntu はプリインストールアプリに VLC(メディアプレーヤー)を採用していますが、現状 VLC も Qt 5 ベースのアプリです。
VLC は Lubuntu ではなく別のプロジェクトで開発されているアプリですが、Ubuntu から Qt 5 が削除される前に Qt 6 への移行が期待されます。
Qt 6.8
Lubuntu 25.04 では Qt 6.8 が採用される予定です。Dracut への移行
Dracut は initramfs-tools の代替となるソフトウェアです。Lubuntu はクリーンインストール時にデフォルトで Dracut に移行した唯一の公式フレーバーです。
また Lubuntu ではインストーラーの Calamares で Dracut をサポートできるよう取り組んでいます。
Dracutへの移行に特に問題がなければ、将来的に Ubuntu 含めすべての公式フレーバーが Dracut に移行することになるでしょう。
Wayland
Lubuntu 24.10 で Wayland への完全移行が計画されていましたが、まだその実現には至っていません。Mir/Mirway
Mir は Wayland におけるディスプレイサーバー及びコンポジターです。この Mir 上で Lubuntu を動かすために、Debian で Mir のアップデートが必要になっています。
またアップストリームの LXQt プロジェクトでは、Miriway をサポートする作業が行われています。
LXQt
LXQt は Lubuntu が採用しているデスクトップ環境です。LXQt 2.1
開発版 Lubuntu 25.04 では、現在最新の LXQt 2.1 が採用されています。Lubuntu 開発チームは Feature Freeze を迎えるまでアップストリームのリリースに追従し、その後 Lubuntu 25.04 がリリースされるまで不具合の修正やポイントリリースに追従していく計画です。
バックポート
Lubuntu 24.10 へのバックポートが予定されています。また同様に Lubuntu 24.04 LTS へのバックポートも予定されていますが、Wayland 対応の進捗状況により、バックポートの提供次期が遅くなる可能性があります。