インプットメソッドフレームワークと日本語環境
既報の通り、次期Ubuntuである「Ubuntu 17.10」からデフォルトのデスクトップ環境が「Unity」から「GNOME Shell」に代わります。Ubuntuの日本語環境
現在日本語環境の「Ubuntu」では、デフォルトのインプットメソッドフレームワークに「Fcitx」を採用しています。「システム設定(unity-control-center)」の「テキスト入力」から入力ソース(インプットメソッド)の設定が可能です。
IBusも利用可能
必要ならユーザーは、「IBus」を利用することもできます。「IBus」でも同様に「システム設定」の「テキスト入力」から入力ソース(インプットメソッド)の設定が可能です。
Ubuntu GNOME(GNOME Shell)の日本語環境
一方「Ubuntu GNOME」では、デフォルトのインプットメソッドフレームワークに「IBus」を採用しています。「設定(gnome-control-center)」の「地域と言語」から入力ソース(インプットメソッド)の設定が可能です。
IBusか、それともFcitxか
さてubuntu-desktopメーリングリストにて、次期「Ubuntu」のデスクトップ環境が「GNOME Shell」へ移行するにあたり、インプットメソッドフレームワークの扱いについて議論及び提案が行われています。unity-control-center(システム設定のこと)は、IBusとFcitxの両インプットメソッドフレームワークをサポートしている。
多くの言語環境ではIBusがデフォルトで起動する一方、中国語、日本語、韓国語及びベトナム語環境(CJKV)では、Fcitxがデフォルトのインプットメソッドフレームワークになっている。
従ってUbuntuインストール時にCJKVを選択すれば、Fcitxがデフォルトのインプットメソッドフレームワークとして使用される。
gnome-control-center(設定のこと、以下g-c-cと記述)はIBusのみをサポートしており、インストール時の言語に関わらず、Ubuntu GNOMEではIBusがデフォルトのインプットメソッドフレームワークになっている。
Don't override IM variablesの不具合が修正されて以来、例えg-c-cがIBus以外のインプットメソッドフレームワークをサポートしていないとしても、Ubuntu GNOMEユーザーはFcitxやIBusに代わるインプットメソッドフレームワークを利用することができる。
ただg-c-cがIBusしかサポートしていないため、異なるインプットメソッドフレームワークを利用するなら、g-c-cからではなくインプットメソッドフレームワークが提供するツールを利用して、インプットメソッドのセットアップを行う必要がある。
これがUbuntuがCJKVでデフォルトのインプットメソッドフレームワークをIBusからFcitxに切り替えた理由である。
Fcitx及びFcitxのツールは、多くのCJKVユーザーによってより良いメンテナンスが行われており、また、多くのCJKVユーザーはIBusよりもFcitxを好んでいる。
特に簡体字中国語ユーザーにとってその傾向が強い。
CJKVとは、各言語の頭文字を組み合わせた表現です。
- 中国語(Chinese)
- 日本語(Japanese)
- 韓国語(Korean)
- ベトナム語(Vietnamese)
CJKV環境ではインプットメソッドフレームワークにFcitxを採用していますが、「gnome-control-center」からFcitxの設定を行うことができないため、このままFcitxを採用し続けた場合、ユーザーは入力ソース(インプットメソッド)の設定を直接Fcitxの設定画面から行う必要があります。
この状況は特にライトユーザーにとって分かりにくく、混乱を招くことになりかねません。
さてこの状況に対してどのようなアプローチ(対応方針)が良いのか、3種類の提案がなされています。
1.gnome-control-centerからFcitxを設定できるようにする
CJKV環境では引き続きFcitxを採用し、「gnome-control-center」からFcitxを設定できるようにする案です。この案に対しては、以下の疑問があるとのことです。
- 「gnome-control-center」にFcitxの対応作業を行える時間のある人はいるのか?
- その修正内容をアップストリームに受け入られてもらえるのか?
2.何も変更しない
CJKV環境では引き続きFcitxを採用し、「gnome-control-center」のFcitx対応も行わない案です。この案はユーザーの混乱を招くことになるでしょう。
またIBus以外のインプットメソッドフレームワークと「Ubuntu GNOME」との組み合わせで十分にテストされているのか不明とのことです。
3.IBusに戻す
以前「Ubuntu」では、インプットメソッドフレームワークにIBusを採用していました。CJKV環境でもデフォルトのインプットメソッドフレームワークにIBusを採用し、すべての言語でIBusを採用する案です。
FcitxはWaylandに対応していない
次期「Ubuntu」でWaylandセッションがデフォルトになる予定ですが、FcitxはWaylandに対応していません。FcitxのWayland対応は現在作業中とのことです。
このままいけば、IBusか?
FcitxのWayland対応がいつ完了するのか分かりませんし、「gnome-control-center」のFcitx対応もどうなるか分かりませんが、もしいずれの対応も「Ubuntu 17.10」に間に合わないのであれば、IBusに戻すのが一番混乱を回避できるのかな、という印象です。後Fcitxにするなら、インジケーターの表示も対応する必要がありますね。
IBusに戻した場合、Fcitx自身が提供している機能は利用できなくなります。
(Mozcの機能は関係ない)
もしFcitxの機能を活用していた場合、それらの機能はIBusでは利用できなくなるため、その機能を諦めるか代替手段を探す必要があります。
Ubuntu Kylin(余談)
ところで中国語ユーザー向けのフレーバーである「Ubuntu Kylin」は、今までデスクトップ環境に「Ubuntu」と同じく「Unity」を採用していました。しかし「Ubuntu Kylin 17.04」にて、デスクトップ環境をMATEベースの「UKUI」へと変更しました。
「UKUI」は「GNOME Shell」ではないため、引き続きFcitxで問題ないでしょう。
「Ubuntu Kylin 17.04」では「Fcitx」が採用されています。