Ubuntu 19.04の新機能と変更点
リリースノートから「Ubuntu 19.04」の新機能と変更点を紹介します。ここでは主に「Ubuntu Desktop 19.04」の内容を中心にピックアップします。
「Ubuntu 19.04」のリリースノートは以下で参照できます。
Ubuntu全般
「Ubuntu 19.04」全般に関する内容です。1.サポート期間
「Ubuntu 19.04」は通常リリースであり、リリースされてから9ヶ月間のサポートが提供されます。つまり2020年1月までサポートが提供されます。
長期サポートが必要なユーザーは、最新のLTS版である「Ubuntu 18.04 LTS」を利用してください。
「Ubuntu 18.04 LTS」は2023年4月までサポートが提供されます。
2.32bit版(i386)はアップグレード不可
「Ubuntu 32bit版」を利用しているユーザーは、「Ubuntu 19.04」へアップグレードすることができません。また「Ubuntu 19.04 32bit版」のディスクイメージはリリースされていません。
これは将来「Ubuntu 32bit版」の提供終了が検討されているためです。
「Ubuntu 32bit版」を利用しているユーザーは「Ubuntu 18.04 LTS」に留まることになります。
3.Linux kernel 5.0採用
「Ubuntu 19.04」は「Linux kernel 5.0」ベースの「Linux kernel」を採用しています。これにより、ハードウェアのサポートが大幅に改善・改良されています。
- AMD Radeon RX Vega M GPUのサポート
- Raspberry Pi 3B/3B+の完全なサポート
- Qualcomm Snapdragon 845のサポート改善
- USB 3.2及びType-Cのサポートに様々な改良
- Intel Cannonlake GPUのサポート改善
- Skylake XサーバーをサポートしたP-Stateドライバーの提供(省電力管理の大幅な改良)
- POWERメモリー保護キーのサポート
- AMD Secure Encrypted VirtualizationをサポートしたKVMの提供
- SMC-R/D(Shared Memory Communications Remote/Direct)が利用可能に
- OFB(Open for Business)が利用可能に
- Linux kernel 4.15からzcrypt on IBM Zの様々な改良
4.ツールチェインのアップデート
「Ubuntu 19.04」では、ツールチェインが以下のようにアップデートされています。- glibc 2.29
- OpenJDK 11
- boost 1.67
- rustc 1.31
- GCC 8.3
- GCC 9(オプション)
- Python 3.7.3(デフォルトのPython)
- ruby 2.5.5
- php 7.2.15
- perl 5.28.1
- golang 1.10.4
また「ARM/S390X/RISCV64」をターゲットとしたクロスコンパイルが行えるPOWER及びAArch64のツールチェインと共に、新しく改善されたクロスコンパイラーが提供されています。
5.Xサーバー
「Xサーバー」は「X.Org X Server 1.20.4」を採用しています。Ubuntu Desktop
「Ubuntu Desktop 19.04」に関する内容です。1.GNOME 3.32の採用
「Ubuntu Desktop 19.04」では、最新の「GNOME 3.32」を採用しています。これによりパフォーマンスの改善や数多くの不具合の修正、そして新機能がもたらされています。
パフォーマンスの改善
「GNOME Shell」はパフォーマンスの改良が数多く行われ、従来よりも高速に動作し、そして操作に対する応答性が良くなりました。パフォーマンスの改良に関する技術的な内容は、以下を参照してください。
2.分数スケーリングのサポート
分数スケーリング(Fractional Scaling)のサポートが改善されました。「Waylandセッション」では、100%から200%の間を25%刻みで指定できます。
「Xorgセッション」でも分数スケーリングがサポートされ、「Waylandセッション」と同様の指定が可能です。
ただし「Xorgセッション」では、試験的なサポートでの提供となります。
詳細は以下を参照してください。
3.サウンド設定画面の改良
サウンド設定画面が改良され、もっと簡単に入力デバイスと出力デバイスの選択が可能になりました。4.GNOME初期セットアップの改善
初ログイン時に表示される「GNOME初期セットアップ」では、設定項目が追加され、ロケーションサービスの設定をより簡単に行えるようになりました。例えばタイムゾーンの自動切り替えの設定が可能です。
5.Trackerのプリインストール
「Tracker」がデフォルトでインストールされるようになりました。「Tracker」により最近使用したファイルの追跡が可能になり、検索結果が改良されました。
6.タッチパッド操作の改善
右クリックの処理がデフォルトでエリアに変更されました。2本指による右クリックだけでなく、タッチパッドの右下をクリックすることで右クリック操作を行えるようになりました。
7.ウィンドウスイッチャーの改善
ウィンドウスイッチャー(Alt+Tab)は、デフォルトでウィンドウを切り替えるように変更されました。アプリケーションの切り替えは、「Super + Tab」キーで行なえます。
「Super」キーは「Windows」キーと同じです。
8.ウィンドウプレビューの改善
Dockで表示されるウィンドウプレビューは、プレビュー表示されるウィンドウの順番が固定的になりました。これはウィンドウが追加された順番に基づく順番です。
9.IWDのサポート改善
「WPA supplicant」の置き換えを目標とする「IWD(iNet wireless daemon)」が「Network Manager」から利用できるようになりました。現状「IWD」はテスト段階での提供です。
10.VMWareのサポート改善
「Ubuntu Desktop」を「VMWare」にインストールすると、自動的に「open-vm-tools」パッケージをインストールするようになりました。「open-vm-tools」のバージョンは「10.3.10」です。
これによりホスト・ゲスト間で統合された環境を簡単に利用できるようになります。
「open-vm-tools」に関する変更点は、以下を参照してください。
11.Yaruテーマのアップデート
「Yaru」テーマがアップデートされ、新しいアイコンテーマが追加されました。12.Safe Graphics Mode
GRUBメニューに「Safe Graphics Mode」オプションが追加されました。このオプションは「NOMODESET」を有効にするオプションです。
このオプションは特定のGPUで起動しないなどの問題に対処する時や、プロプライエタリーGPUドライバーのインストール時に利用できます。
(特にNVIDIA GPU)
13.Firefox 66
最新の「Firefox 66」がデフォルトでインストールされています。14.LibreOffice 6.2.2
「LibreOffice 6.2.2」がデフォルトでインストールされています。既知の問題
既知の問題です。1.ドライバーのインストールに時間がかかる
サードパーティー製ドライバーのインストールを選択して「Ubuntu」をインストールする際、インストール処理が始まる前に長い時間処理が停止することがあります。これは「ubuntu-drivers」がキャッシュの更新を行っているためです。
この状態になったら、数分そのままの状態で待ってください。
キャッシュの更新処理終了後にインストール処理が続行されます。
不具合の詳細は、以下を参照してください。
2.Broadcom wirelessドライバーがインストールされない
UEFIセキュアブートが有効なPCで「Broadcom wireless」を利用する場合、「Ubuntu」インストール時にプロプライエタリードライバーのインストールを選択していたとしても、PC再起動後に「bcmwl dkms」モジュールがアンインストールされたままになる場合があります。その結果WiFiへの接続が行えなくなります。
これは「dkms」のリグレッションによるものです。
この現象が発生した場合は、そのPCで以下のコマンドを実行し、「bcmwl-kernel-source」パッケージを再インストールする必要があります。
sudo apt-get install --reinstall bcmwl-kernel-source
不具合の詳細は、以下を参照してください。