Ubuntu MATE 20.04 LTSの新機能と変更点
リリースノートから「Ubuntu MATE 20.04 LTS」の新機能と変更点を紹介します。リリース情報
「Ubuntu MATE 20.04 LTS」のリリース情報は、以下を参照してください。2年分の改良が含まれる
「Ubuntu MATE 20.04 LTS」は、前回のLTSリリースである「Ubuntu MATE 18.04 LTS」から2年分の改良が含まれています。また「Ubuntu MATE 19.10」で非常に多くの不具合の修正が行われており、安定性が向上しています。
1.システム全般
- ZFSインストールオプションの追加(試験的な機能)
- テーマに複数のカラーバリエーションを追加
- GameModeの追加
- mate-power-managerがupower-glibのget_devices2()を使用するように修正
- mate-session-managerでソフトウェアの自動起動に関する不具合の修正
- Ubiquity Slideshowのアップデート
2.パネルやレイアウト
- Brisk Menuがクラッシュする不具合の修正とキーボードナビゲーション機能の追加
- MATE Tweak TweakとUbuntu MATE Welcomeのパネルレイアウトを切り替える機能の不具合修正と安定性の向上
- MATE Dock Appletがadjust_minimise_pos()のAttribute errorでクラッシュする不具合の修正
- MATE Tweakでカスタムパネルレイアウトの保存及び復元に関する不具合の修正
3.HiDPIのサポート改善
- HiDPI環境でウィンドウコントロールが綺麗に描画されるように修正
- MATE Control Centerで使用されるアイコンサイズの修正と、HiDPI環境で綺麗に描画されるように修正
4.アプリケーション
- Caja拡張が無反応になる不具合の修正
- Plumaプラグインが無反応になる不具合の修正
- Ubuntu MATE Welcomeのカラーリング調整
- Ubuntu MATE Guideのアップデート
Firmware updater
「Firmware updater(fwupd)」のGUIフロントエンドが追加されました。このアプリケーションは、以下の機能を持っています。
- Linux Vendor Firmware Service(LVFS)でサポートされているデバイスのファームウェアをアップグレード、ダウングレード、再インストールする機能
- ロックされているfwupdデバイスのロック解除
- サポートされているデバイスのファームウェアの確認
- fwupdデバイスのすべてのリリースを表示
ウィンドウマネージャーの改良
「MATE」デスクトップ向けのウィンドウマネージャーである「Macro」に新機能の追加と不具合の修正が行われました。1.XPresentサポートの修正
「Macro」の「XPresent」サポートが修正され、スクリーンティアリングが解消されました。また不可視のウィンドウコーナーも改善され、ウィンドウのリサイズ操作が容易になりました。
今までのようにウィンドウのリサイズ時に、細かなマウスカーソルの位置合わせが必要なくなりました。
2.HiDPIのサポート改善
様々なテーマやコンポーネントの描画で発生していた問題が修正されました。例えばウィンドウコントロールの描画がHiDPIに対応し、高解像度で描画されるようになりました。
3.最小化されたアプリのプレビュー
ウィンドウリストでは、最小化されたアプリのサムネイルプレビューを表示できるようになりました。4.ウィンドウ切り替え機能の改善
「Alt + Tab」キーでアプリケーションを横断的に切り替えられるようになりました。スイッチャー上ではマウス操作も可能です。
5.ワークスペーススイッチャー
「Ctrl + Alt + Tab」キーでワークスペースを超えて、ウィンドウを切り替えられるようになりました。スイッチャー上ではマウス操作も可能です。
6.その他の改善
「Macro」は他にも以下の改善が行われています。- Magnusによるスクリーンの拡大(下記参照)
- 不可視のウィンドウボーダーのサポート
- ゲーム実行時にフレームパフォーマンスの改善
7.CompizとComptonの削除
「Compiz」と「Compton」は、デフォルトでインストールされなくなりました。これはこれらのウィンドウマネージャーをデフォルトで含める理由がなくなったためであり、また開発チームはウィンドウマネージャーを「Macro」1つに絞ることで、開発効率の向上とそれによる新機能の迅速な提供を実現できます。
キーバインドの改善
キーバインド(キーボードショートカット)が改善されました。1.ウィンドウ操作のキーバインド
アプリのウィンドウをキーボードで整列あるいは配置する際、テンキーがないノートPCなどのキーボードに対応するため、キーバインドが見直されました。操作 | キーバインド |
---|---|
ウィンドウの最大化 | Super + ↑ |
ウィンドウの復元 | Super + ↓ |
ウィンドウを右に配置 | Super + → |
ウィンドウを左に配置 | Super + ← |
ウィンドウを中央に配置 | Alt + Super + c |
ウィンドウを右上に配置 | Alt + Super + → |
ウィンドウを左上に配置 | Alt + Super + ← |
ウィンドウを右下に配置 | Shift + Alt + Super + → |
ウィンドウを左下に配置 | Shift + Alt + Super + ← |
ウィンドウのシェード | Ctrl + Alt + s |
「Super」キーは「Windows」キーのことです。
2.その他キーバインド
その他のキーバインドです。アプリケーションランチャーのキーバインドが更新されました。
操作 | キーバインド |
---|---|
外部ディスプレイの順次切り替え | Super +P |
画面のロック | Super + L |
スクリーンショット(矩形選択) | Shift + PrintScreen |
ファイルマネージャーを開く | Super + E |
端末を開く | Super + T |
コントロールセンターを開く | Super + I |
ファイルの検索を開く | Super + S |
タスクマネージャーを開く | Ctrl + Shift + ESC |
システム情報を開く | Super + Pause |
「Super」キーは「Windows」キーのことです。
また従来の「Ctrl + Alt + T」キーによる端末の起動や、「Ctrl + Alt + L」キーによる画面のロックも引き続き利用可能です。
3.キーボードショートカット一覧
「Ubuntu MATE」で設定されているキーボードショートカット一覧は、「Ubuntu MATE Welcome(ようこそ)」の「Getting Started(始めましょう)」で参照できます。デスクトップの改善
デスクトップ関連の改善です。1.Brisk Menuの改善
「Brisk Menu」の不具合修正や改善が行われました。- 頻繁にクラッシュする不具合の修正
- メニューのカテゴリーカラムで必要に応じてスクロールバーが表示されるように改善
- メニューエントリーの端を超える時、音が鳴らないように修正
- キーボードナビゲーションの追加
2.MATEパネルの不具合修正
MATEパネル では長い間、パネルのリセット時や置き換え時にクラッシュする不具合がありましたが、この不具合が修正されました。この不具合が「MATE Tweak」でパネルレイアウトの切替時に発生すると、パネルの配置が不完全、あるいは全くパネルが配置されない状態になっていました。
この不具合の修正のより「MATE Tweak」でパネルレイアウトを切り替えても、このような現象が起こらなくなりました。
3.インジケーターのアイコンが大きくなる不具合の修正
以下のように、一部のインジケーターのアイコンが巨大になる不具合がありました。この不具合が修正され、インジケーターのアイコンが適切なサイズで表示されるようになりました。
またこの不具合の原因の一部はアイコン自身にあり、それらのアイコンは正しい解像度及びアスペクト比になるように修正されました。
4.日付と時刻インジケーター
日付と時刻インジケーターが追加され、このインジケーターはMATEデスクトップに統合されました。またこのインジケーターは、MATE clockアプレットを置き換えます。
これにより時刻とセションインジケーターが適切な位置に配置されるようになりました。
5.アイコンの改善
「Ubuntu MATE 14.10」以降、インジケーターで使われている一部のモノクロームアイコンが、アプリケーションでも使われている問題がありました。これはウィンドウのカラーリングに対して視認性が悪く、モノクロームアイコンとフルカラーアイコンの混在は、見た目に一貫性がない問題を引き起こしていました。
この問題が解決され、モノクロームアイコンはインジケーターにのみ使用されるようになりました。
またコントロールセンターや音量設定、Bluetooth、OSDなどのアプリケーションでは、フルカラーアイコのみが使用されるようになりました。
6.MATE Window Appletsの不具合修正と新機能の搭載
「MATE Window Applets」では、数多くの不具合の修正と新機能の搭載が行われました。ウィンドウコントロールアイコンは、現在線らくされているテーマから動的に読み込まれるようになり、ユーザーは手動でそれらの設定を行う必要がなくなりました。
また影響が大きいメモリーリークの不具合も修正されています。
7.その他インジケーターの修正や改善
以下の不具合の修正や改善が行われています。- ネットワークステータスアイコンが2重に表示される不具合の修正
- VPN接続時、ネットワークインジケーター上にロックアイコンが表示されるように改善
- バッテリーインジケーターの改良と、充電中に充電中を示す大きいシンボリックアイコンを表示するように改善
8.Magnus
「Magnus」はスクリーンの拡大鏡です。「Magnus」がデフォルトでインストールされるようになりました。
マウスカーソル周辺のスクリーンの内容を拡大して表示できます。
拡大率は2倍から5倍まで選択できます。
9.Ubuntu MATEテーマの改善
数十ものテーマに関連する不具合が修正されました。ツリービューでアイテムを展開するボタンが改善されクリックしやすくなり、CSDウィンドウでウィンドウコントロールが適切に表示されるようになりました。
またUbuntu MATEテーマは、Snapでアプリで使用される「gtk-common-themes」パッケージに追加され、そのパッケージからテーマを取得しているSnapアプリを「Ubuntu MATE」上で起動すると、そのSnapアプリはUbuntu MATEテーマで表示されるようになりました。
このSnapの変更は「Ubuntu MATE 16.04」以降にも適用されています。
10.MATE TweakとUbuntu MATE Welcome
「MATE Tweak」は、MATEデスクトップの設定を変更(調整)するツールです。カスタムレイアウトに切り替える時にユーザー設定を保持するようになりました。
また「Ubuntu MATE Welcome」からレイアウトの選択が可能になりました。
11.リモートデスクトップのサポート改善
「MATE Desktop 1.24」では「Remote Desktop Awareness(RDA)」をサポートしており、デスクトップがリモートデスクトップ内で動作しているかどうかを区別することができます。これによりリモート接続をサスペンドするオプションを提供したり、「Caja」でフォルダーの共有をサポートしたり、「SSHFS」による共有向けにMIMEタイプのバインディングをサポートし、セッションのサスペンドをMATEスクリーンセーバー経由で行えるようになっています。
12.主要なアプリケーションやソフトウェア
「Ubuntu MATE 20.04 LTS」では、以下の主要なアプリケーションやソフトウェアをデフォルトでインストールしています。- MATE Desktop 1.24.0
- Linux kernel 5.4
- Firefox 75.0
- Celluloid 0.18
- LibreOffice 6.4.2.2
- Evolution 3.36.1
通知センター
「Ubuntu MATE 20.04」では、通知センターを提供する新しいインジケーター(indicator-notifications)が搭載されています。1.Do not disturbモード
通知センターでは、通知を抑制する「Do not disturb」モードが搭載されています。「Do not disturb」モードを有効にすれば通知がミュートになり、その通知は通知センター内に記録されます。
そのため後で通知内容を確認することが可能です。
2.ブラックリスト
不要な通知を抑制するブラックリスト機能があります。ブラックリストに追加された通知は、通知センターに記録されません。
3.通知ヒントの改善
通知ヒントが改善され、通知ヒントにサウンドやアイコンといった追加情報を加えられるようになりました。Evolutionの採用
今までメールクライアントソフトに「Thunderbird」を採用していましたが、「Thunderbird」の代わりに「Evolution」が採用されました。「Evolution」はメールクライアントの機能だけでなく、「Windows」の「Outlook」のように様々な機能を持つ「PIM」アプリケーションです。
「Evolution」に変更した理由は、以下のとおりです。
1.デスクトップと綺麗に統合されている
「Evolution」は「Thunderbird」と異なり、MATEデスクトップと綺麗に統合されています。例えばデスクトップテーマ、フォント、HUDとの連携(ThunderbirdでHUDをサポートするのは非常に困難)、アクションボタン付きの通知、ロケールにスペルチェッカーといった、デスクトップでユーザーが利用している機能や環境に連携し噛み合うように「Evolution」が統合されています。
2.GTK3との親和性
MATEデスクトップ及び「Evolution」は「GTK3」を使用しており、これらの環境が綺麗に統合されています。3.LibreOfficeとの相互運用
「Evolution」は「Ubuntu MATE」がデフォルトでインストールしている「LibreOffice」と連携可能です。4.外部サービスとの連携
「Evolution」は、「Gmail」や「Microsoft Exchange」との連携に優れており、カレンダーや連絡先、タスク、メモなど、外部サービスと連携した機能を利用できます。日付と時刻インジケーターとEvolutionの連携
日付と時刻インジケーターは「Evolution」と連携し、新しいイベントの作成や予定のイベントの確認をインジケーターから行うことができます。Thunderbirdも利用可能
引き続き「Thunderbird」を利用したいユーザーは、「Software Boutique」から簡単にインストール可能です。同様に「Software Boutique」から「Evolution」のインストールやアンインストールも可能です。
NVIDIA GPUドライバー
ディスクイメージにプロプライエタリーのNVIDIA GPUドライバーが含まれるようになり、NVIDIA GPU搭載PCでNVIDIA GPUドライバーがインストールできるようになりました。1.ハイブリッドグラフィックス のサポート
PCがハイブリッドグラフィックス(内蔵GPUとdGPU)に対応している場合、インジケーターに「MATE Optimus ハイブリッドグラフィックス アプレット」が表示されます。「MATE Optimus」に「NVIDIA On-Demand」のサポートが追加され、GPUのプロファイルを切り替える際、ユーザーにログアウトを促すようになりました。
2.PRIMEレンダラーにオフロード
「offload-glx」と「offload-vulkan」のラッパーにより、簡単にGPUを使うゲームやアプリをPRIMEレンダラーにオフロードできます。3.他のデスクトップ環境もサポート
またこのアプレットは、以下のデスクトップ環境もサポートしています。- MATE
- XFCE
- Budgie
- Cinnamon
- GNOME
- KDE
- LXQt
「Ubuntu Budgie 20.04 LTS」でもこのアプレットが採用されています。
4.ドライバーのアップデートはUbuntuが提供
「NVIDIA GPUドライバー」のアップデートは、「Ubuntu」の公式リポジトリーからアップデートが提供されます。そのためドライバーのアップデートに「PPA」を利用する必要がなくなりました。
また「Ubuntu」から提供される「NVIDIA GPUドライバー」は、「UEFIセキュアブート」に必要な署名が予め施されており、「UEFIセキュアブート」環境でもそのまま利用できます。
ZFS on root
「ZFS on root」は、「ZFS」でフォーマットされたファイルシステム上に「root」ファイルシステムを構築する機能です。この機能は現在試験的な機能の提供になっています。
インストーラーから利用可能に
「ZFS」ファイルシステムとパーティション構成は、OSのインストーラーによって自動的に構築されます。zsys
「zsys」が追加されました。「zsys」は「ZFS」ファイルシステムの運用を支援するサービスです。
「zsys」によりソフトウェアのインストールやアップデート時にシステムのスナップショットが作成され、その復元オプションがGRUBのブートメニューに表示されます。
詳細は以下を参照してください。
- Part 1 - Ubuntu ZFS support in 19.10: introduction
- Part 2 - Ubuntu ZFS support in 19.10: ZFS on root
既知の不具合
既知の不具合です。1.ログイン時にXorgがクラッシュする
仮想マシンにインストールした「Ubuntu MATE」で、ログイン時に「Xorg」がクラッシュする事があります。不具合の詳細は、以下を参照してください。
回避策は、「gstreamer1.0-vaapi」パッケージを削除してください。
詳細は、以下を参照してください。
また「KVM」や「QEMU」で仮想マシンを利用している場合、ビデオアダプター(グラフィックコントローラー)で「virtio」を選択してください。
「VirtualBox」で仮想マシンを利用している場合、グラフィックコントローラーの設定で「VMVGA」を選択してください。
2.OEMインストール時にスライドショーが表示されない
OEMインストール時にスライドショーが表示されません。この問題を回避するには、OEMの準備セッションで以下のコマンドを実行してください。
apt install oem-config-slideshow-ubuntu-mate
3.その他の不具合
その他の不具合は、以下を参照してください。また「Ubuntu」と共通する既知の問題は、「Ubuntu」の既知の問題を参照してください。