Linux Mint月刊ニュース
「Linux Mint」開発チームは、Linux Mint月刊ニュースにて「Linux Mint」の開発状況や取り組みを紹介しています。Linux Mint 19が正常に起動しない不具合
「Linux Mint 19」で致命的な不具合(リグレッション)が発生しました。この不具合は今週「Linux Mint 19」向けにリリースされた「base-file 19.0.2」のアップデートで発生している不具合です。
この不具合はブートシーケンスを壊すだけでなく、「Timeshift」によるリカバリーでも対処できない不具合です。
この不具合の説明や問題の回避策については、以下を参照してください。
影響を受けるOS
この問題に影響を受けるOSは「Linux Mint 19」のみです。以下のように「Linux Mint 19」以外のOSでは影響を受けません。
- Linux Mint 18.x
- Linux Mint 19.1
- Linux Mint 19.2
- Linux Mint 19.3
- Linux Mint 20
- LMDE
不具合の内容
ビルドの問題によりパッケージの中身が空になり、パッケージインストール後に実行される「post-installation」スクリプトが「/var/run」ディレクトリーを作成してしまいます。本来「/var/run」は「/run」へのシンボリックリンクである必要があります。
これによりコンソールやログイン画面を担うサービスなど、多くのシステムサービスが正常に動作しなくなります。
解決策
本件の解決策です。- PCの電源を入れる
- 即座にShiftキーを押して、ブートメニューを表示する
- ブートメニューから「Advanced options for Linux Mint 19」を選択する
- 次に「recovery mode」の表記がある項目を選択する
- リカバリーメニューが表示されたら、「root - Drop to root shell prompt」を選択する
これでシェルに入れるので、以下のコマンドを1行ずつ実行します。
mount -o rw,remount /
rm -rf /var/run
ln -s /run /var/run
rm -rf /var/run
ln -s /run /var/run
コマンドを実行し終えたら、PCを再起動します。
以下のコマンドを実行すれば、PCを再起動できます。
reboot
以上で正常に「Linux Mint 19」を起動できるようになります。
パッケージのダウングレード
「base-file」パッケージを1つ前の「base-file 19.0.1」に戻すことで、問題を完全に解決します。「端末」を起動し、以下のコマンドを1行ずつ実行します。
wget linuxmint.com/tmp/base-files_19.0.1_all.deb
sudo dpkg -i base-files_19.0.1_all.deb
sudo dpkg -i base-files_19.0.1_all.deb
以上で完了です。
deb版Chromiumの提供
以前紹介したように「Linux Mint 20」の上流である「Ubuntu 20.04 LTS」では、deb版Chromiumの提供を止めSnap版Chromiumの提供に一本化しています。公式リポジトリーからdeb版Chromiumを提供したい
「Linux Mint」開発チームは「Chromium」のアップストリームから直接debパッケージを作成し、公式リポジトリーを通じてdeb版Chromiumを提供する作業を行っています。この作業では「Debian」や「Ubuntu」で取り込んでいるパッチの取り込み作業も行われています。
deb版Chromiumをテストするには
deb版Chromiumをテストするには、以下のパッケージをダウンロードしてインストールしてください。不具合の発見などフィードバックも募集されています。
補足
すでに「Chromium」や「ungoogled-chromium」がインストールされている場合、それらのパッケージを削除してから上記パッケージをインストールしてください。Sticky Notes
「Sticky Notes」は付箋アプリです。「Sticky Notes」の開発作業が行われており、フィードバックが募集されています。
現在「Sticky Notes」はα版が利用可能です。
フィードバックは以下で受け付けています。
IPTV
「IPTV(IP放送)」や「M3U」に関するフィードバックが募集されています。どの程度のユーザーがこれらに関心を持っているのかを知りたいとのことです。
スマートフォンやタブレット、スマートTVで「IPTV/M3U」を利用しており、「Linux」で「IPTV」の視聴及び録画に関心があるならフィードバックすると良いでしょう。
需要が多くあるならば、開発の優先順位が上がります。
WebApp Manager
「WebApp Manager」では、多くのユーザーからフィードバックが寄せられました。これによりUIの改善や不具合の修正、翻訳の改善が行われました。
これらの改善を取り込んだ「WebApp Manager 1.0.5」は、以下からダウンロード可能です。
Linux Mint 20.1
「Linux Mint 20.1」の開発コードが「Ulyssa」に決まりました。「Linux Mint 20.1」は2020年のクリスマス前にリリースされる予定です。
Celluloid
「Celluloid」はプリインストールされている動画プレーヤーです。デフォルトでハードウェアビデオアクセラレーションが有効に
「Linux Mint 20.1」でプリインストールされる「Celluloid」は、ハードウェアビデオアクセラレーションがデフォルトで有効になる予定です。GPUを利用して動画をデコードするため、CPU使用率の低減とパフォーマンスに向上に期待できます。
ハードウェアビデオアクセラレーションが有効になっているか確認するには
「Celluloid」でハードウェアビデオアクセラレーションが有効になっているか確認するには、動画を再生し「I」キーを押します。以下のように動画の情報が表示されるので、「Video」に表示されている情報を確認します。
上記のように「(hwdec: vaapi)」と表示されている場合、「VAAPI」によるハードウェアビデオアクセラレーションが有効になっています。
「NVIDIA GPU」を搭載し「NVDEC」に対応しているなら、「VAAPI」の代わりに「NVDEC」が使われます。
もしソフトウェアによるデコードなら、「Video」の項目に「hwdec」に関する情報は表示されません。
ハードウェアビデオアクセラレーションを有効にするには
「Celluloid」でハードウェアビデオアクセラレーションを有効にするには、「Celluloid」の設定画面を開き「Miscellaneous」タブを選択し、「その他のMVPオプション」に以下の設定を記述します。
hwdec=auto-safe
フィードバック求む
ハードウェアビデオアクセラレーション有効時に動画再生にどのような影響があるのかを知りたいとのことです。その際は使用しているGPU及びGPUドライバーの情報と共に、フィードバックして欲しいとのことです。
Driver Manager
「NVIDIA 450」がリリースされた際、「Linux Mint 19.3」の「Driver Manager」で問題が見つかりました。必要なコンポーネントがインストールされない
ドライバーの依存関係がより複雑になり、必要なコンポーネントがインストールされないケースが出てきました。ドライバーが必要とするコンポーネントは、パッケージの推奨パッケージに指定されているケースがあり、「Linux Mint 19.3」以前の「APT」ではこれらの推奨パッケージは自動的にインストールされない設定になっています。
Linux Mint 20では
「Linux Mint 20」では「APT」の設定が変更され、推奨パッケージも自動的にインストールされるようになりました。解決策
いくつか解決策が検討されましたが、最終的に以下の解決策が採用されました。- 「Linux Mint 19.x」に最新の「mintsystem」と「mintdrivers」をバックポートする
- 「APT」で推奨パッケージもインストールするように設定を変更する
- 「Driver Manager」のバックエンドを「packagekit」に切り替える
最新の「mintsystem」と「mintdrivers」は、「Linux Mint 20」向けにもリリースされます。
また「Driver Manager」はユーザーモードで実行されるようになり、実際にドライバーをインストールもしくはアンインストールするまで、パスワードを入力する必要がなくなります。
さらにUIも改善されます。
USBプリンターのサポート改善
「Linux Mint 20」とそのベースである「Ubuntu 20.04 LTS」で、一部のUSBプリンターとスキャナーが動作しなくなりました。「Linux Mint 19.3」では期待通り動作していたため、リグレッションとなります。
またUSBプリンターはプリンター設定ツールで自動的に追加されますが、それらを削除することができません。
回避策
この問題に影響を受けている場合は、「ippusbxd」パッケージを削除してください。「ippusbxd」は「IPP-over-USB」を実装・実現するソフトウェアです。
この仕組みはプリンターと共通プロトコルを使用して通信し、プリンター固有のドライバーがなくても印刷を可能にする仕組みです。
Linux Mint 20.1で削除されるかも
「ippusbxd」がUXに影響を与えているため、「Linux Mint 20.1」で削除される(プリインストールされない)可能性があります。ipp-usbの検討
「ipp-usb」も「IPP-over-USB」を実装・実現するソフトウェアです。開発チームは「ippusbxd」の代わりに「ipp-usb」を採用できないか、検討しています。
現時点では「ipp-usb」は「ippusbxd」よりも好ましい動作をしており、調査が進められています。
本件に関する議論や情報は、以下を参照してください。