Lubuntu 24.04 LTSの開発状況
2023年12月9日、Lubuntu開発チームは「Lubuntu 24.04 LTS」の開発状況や開発方針を以下で紹介しました。1. インストーラーにCalamaresを採用
以前紹介したように、2023年11月5日に開催された「Flavor Sync Meeting」で新インストーラーへの移行が話題に挙がりました。1-1. Lubuntuの歴史
「Lubuntu」は「Lubuntu 18.10」でデスクトップ環境を変更し、「GTK」ベースの「LXDE」から「Qt」ベースの「LXQt」へ移行しました。「GTK」や「Qt」はGUIソフトウェアを構築するために活用されているライブラリーであり、アプリも含めデスクトップの土台となるソフトウェアです。
1-2. Ubiquityの検討
「Ubiquity」は「Ubuntu 22.10」以前で採用されていた従来のインストーラーです。「Lubuntu」は「Lubuntu 18.10」で「Qt」ベースのデスクトップへ移行するにあたり、引き続き「Ubiquity」の採用可否が検討されました。
「Ubiquity」にはGTKフロントエンドとKDEフロントエンドの2種類のフロントエンドが実装されており、「Lubuntu」では同じくQtベースのデスクトップであるKDE向けのKDEフロントエンドに目が向けられました。
しかしKDEフロントエンドはKDEを前提とした実装であり、その実装に「Lubuntu」のサポートを加えることは現実的ではありませんでした。
1-3. Calamaresの採用
そこでLubuntu開発チームはOSのインストーラーに「Calamares」を採用し、「Ubiquity」相当の機能を「Calamares」で提供することになりました。言い換えると「Ubiquity」から「Calamares」へ移行することになりました。
それ以来「Lubuntu」では「Calamares」を継続的に採用し、約5年の月日が経過しました。
その後「Ubuntu」は「Ubuntu 23.04」で「Ubiquity」から新インストーラーへ移行し、将来的に「Ubiquity」の廃止が予定されています。
さて上記で紹介したように「Flavor Sync Meeting」で公式フレーバーも新インストーラーへの移行が促されることになりました。
1-4. 新インストーラーの検討
「Lubuntu」はすでに「Ubiquity」を採用しておらず、またインストーラーも「Ubuntu」の新インストーラーと異なる「Calamares」を採用しています。しかし「Lubuntu」が「Calamares」を採用した理由は、「Ubiquity」に「Lubuntu」のサポートを加えることが困難であることであり、Lubuntu開発チームは新インストーラーの話を受け、新インストーラーの採用を検討しました。
1-5. 引き続きCalamaresを採用
新インストーラーの採用を検討した結果、以下の理由により「Lubuntu」は新インストーラーを採用せず、引き続き「Calamares」を採用することになりました。- CalamaresはインストーラーUIのパフォーマンスが優れている
- Calamaresのインストールスピードの方が優れている
- CalamaresならLubuntuがデスクトップに採用しているテーマに沿うUIデザインを提供できる
- 新インストーラーでテーマを変更するには、そのためだけに個別にSnapsを作る必要がある
- 新インストーラーのUIはFlutterで開発されているが、なるべくQtベースのソフトウェアで構成したい
2. インストールオプションの追加
「Lubuntu」のインストーラーが改善され、インストールオプションを指定するカスタマイズ設定が追加されました。2-1. 3種類のプリインストールアプリ構成
プリインストールアプリの構成を決めるオプションでは、以下の3種類のオプションを選択できます。- Full Installation(フルインストール)
- Normal Installation(通常インストール)
- Minimal Installation(最小インストール)
1. Full Installation(フルインストール)
「Full Installation」では「Normal Installation」に加え、以下のアプリが追加インストールされます。- Element(Matrixクライアント)
- Thunderbird(メールクライアント/ニュースリーダー/PIMアプリ)
- Krita(画像編集ソフト)
- Virtual Machine Manager(仮想マシン)
特に初めて「Lubuntu」を利用するユーザーにおすすめのインストールオプションです。
2. Normal Installation(通常インストール)
多くのユーザーが利用する標準的なアプリがインストールされるインストールオプションです。多くのユーザーにおすすめのオプションです。
3. Minimal Installation(最小インストール)
最低限のソフトウェアのみがインストールされるインストールオプションです。「snapd」もインストールされません。
アプリのインストールに慣れているユーザー向けのインストールオプションです。
2-2. 追加ソフトウェアのインストールは最後に行う
チェックボックスで指定する追加ソフトウェアのインストールやソフトウェアのアップデートは、インストールの最後に実施されます。安定してインストールを完了させるためには、インターネットへの接続が推奨されます。
2-3. サードパーティー製ソフトウェアのインストール
サードパーティー製ソフトウェアのインストールを有効にした場合、一部の動画や音声フォーマットのサポートに必要なメディアコーデックがインストールされます。2-4. デスクトップに新しいインストーラーアイコンの配置
ライブセッションのデスクトップに、新しいインストーラーアイコンが配置されるようになりました。ユーザーはこのアイコン経由でインストーラーを起動できます。
3. Lubuntuの試用とインストールの選択
「Lubuntu」のインストーラーが改善され、ライブセッション起動時にLubuntuの試用とインストールの開始を選択する画面が追加されました。3-1. 言語の選択
言語の選択でユーザーが利用する言語を選択し「Confirm」ボタンをクリックすれば、選択された言語が、この後起動するライブセッションの言語に使用されます。また「Lubuntu」インストール後の言語も、ここで選択した言語に設定されます。
3-2. 言語の自動ダウンロード
ユーザーが選択した言語が世界のトップ5に入る著名な言語であり、かつインターネットに接続されていれば、ディスクイメージに含まれていない言語でも自動的にGNOME/KDE/LibreOfficeの言語パックをダウンロードし、その言語でUIが表示されます。3-3. Wi-Fiネットワークに接続
さらにこの画面ではインターネットに接続するWi-Fiネットワークを選択できるようになっています。自動検出されたアクセスポイントが一覧に列挙され、Wi-Fiネットワーク選択時に以下のように認証設定を入力する画面が表示されます。
パスワード(パスフレーズ)が短すぎるもしくは長すぎる場合、Wi-Fiネットワークへの接続は行われません。
4. Bluetooth管理アプリの追加
Bluetoothデバイスを管理するGUIのBluetooth管理アプリが追加されました。現状このアプリは「GTK」で作成されていますが、「Lubuntu 26.04 LTS」前に「Qt」で再実装したバージョンが搭載される予定です。
5. SDDM設定エディターの追加
ログイン画面の設定をカスタマイズする「SDDM 設定エディター」が追加されました。「SDDM 設定エディター」は以前紹介しておりますので、以下を参考にしてください。
6. Redshiftの追加
時間に応じて自動的にディスプレイの色温度を調整するソフトウェアである「Redshift」が追加されました。いわゆるナイトカラーや夜間モードを実現するソフトウェアです。
「Redshift」は以前紹介しておりますので、以下を参考にしてください。
7. Lubuntu Manual アイコンのアップデート
「Lubuntu Manual アイコン」はデスクトップ上に配置されおり、Lubuntuのマニュアルを表示するアイコンです。「Lubuntu Manual アイコン」のデザインがアップデートされました。
8. 新規LXQtテーマの追加
新しいLXQtテーマが2種類追加されました。新規テーマは以前紹介しておりますので、以下を参考にしてください。
9. 電源管理の改善
電源管理周りの改善です。9-1. デスクトップ通知の改善作業
電源管理関連のデスクトップ通知の改善作業が行われています。現在の通知メッセージは煩雑で分かりにくいため、メッセージの簡素化や分かりやすさを向上させる作業が行われています。
また仮想マシンでバッテリー警告を表示させないようにするなど、実際に役に立つメッセージのみを表示するように修正作業が進められています。
9-2. バッテリーアイコンの改善
今まではバッテリーの残量を3段階のおおよその残量で表示していましたが、バッテリーアイコンの変更とともにバッテリーの残量を%で表示するようになりました。10. Qt 6とWaylandへの移行計画
これらは「Lubuntu 24.04 LTS」の次にリリースされる「Lubuntu 24.10」で計画されています。「Lubuntu 24.10」は2024年10月にリリースされる予定です。
「Lubuntu」は「Lubuntu 24.10」で「Qt 6」と「Wayland」へ移行する予定です。
10-1. すでにアップストリームで作業が進められている
「LXQt」プロジェクトでは、「LXQt」を「Qt 5」から「Qt 6」へ移植する作業と「LXQt」を「Wayland」に対応する作業がすでに進められています。以前「LXQt 1.4」のリリースでも紹介しましたが、「Qt 5」ベースの「LXQt」は「LXQt 1.4」のリリースで最後になる予定です。
「Lubuntu」としては「Lubuntu 24.10」で円滑に「Qt 6」への移行と「Wayland」の対応を行う予定ですが、環境に若干荒削りな部分が出るかもしれません。
10-2. Xセッションは引き続き提供する
「Ubuntu」が「X11」環境を公式リポジトリーから引き続き提供する場合に限り、少なくとも「Lubuntu 26.04 LTS」まではXセッションを提供する予定です。10-3. Lubuntu 24.04 LTSでもWaylandセッションを提供
「Lubuntu 24.04 LTS」でもオプションとしてWaylandセッションが提供されます。あくまでオプションの提供であり、Xセッションがデフォルトになります。
「Lubuntu 24.10」でWaylandセッションがデフォルトになります。