Ubuntu Desktop 24.04 LTSの目標と取り組み
2023年12月15日、Ubuntu Desktop開発チームは以下で「Ubuntu Desktop 24.04 LTS」で検討及び計画している目標や取り組みを紹介しています。1. FlutterのGUIバックエンドをGTK 4に移行
「Ubuntu」ではOSのインストーラーやアプリケーションストアアプリ(App Center)、そして「Firmware Updater」に「Flutter」を活用しています。現状これらの「Flutter」アプリは「GTK 3」を利用してUIを生成しています。
「Flutter」で使用するGUIバックエンドを「GTK 3」から「GTK 4」へ移行する作業が予定されています。
「GTK 4」への移行により、ウィンドウの初期化処理のパフォーマンスが改善される予定です。
2. ローカライズシステムの変更
「Ubuntu 23.10」リリース時に「Ubuntu Desktop Installer」に悪意ある翻訳が混入する出来事がありました。この種のリスクを軽減するため、翻訳システムをCanonicalがホストするWeblateへ移行する計画が検討されています。
またローカライズ体制も見直し、各言語ごとに信頼できる翻訳者が配置される予定です。
App Center
「App Center」はアプリのインストールやアップデートなど、アプリを管理するためのアプリです。1. トップチャートの実装
「App Center」では人気のアプリを一覧表示するトップチャートの実装が進められています。トップチャートはアプリのすべてのカテゴリーから人気のアプリをピックアップします。
またもし開発に余裕があれば、アプリの各カテゴリーごとにトップチャートを表示する機能も実装される予定です。
2. ゲームカテゴリーの見直し
ゲームカテゴリーの見直し作業も予定されています。この作業はまだ初期段階であり、今後もっと詳しい内容が紹介されるでしょう。
Security Center
Linuxには様々なセキュリティー機能があります。しかしそれらの機能の多くは、Linuxに詳しくないユーザーが見つけにくい機能です。
これらのセキュリティー機能の中には、Linuxに詳しくないユーザーからも簡単にアクセスできるようにしたい機能もあります。
アプリの開発
そこでユーザーが簡単にそれらのセキュリティー機能にアクセスできるようにするため、「Security Center」アプリの開発が予定されています。まず「Security Center」の開発にあたり、4種類の機能に焦点があてられました。
1. ストレージの再暗号化
「TPM(Trusted Platform Module)」による「FDE(Full Disk Encryption)」のようにハードウェアを利用したディスクの暗号化では、データへのアクセスにマスター暗号化キーを利用しています。ここで言及しているマスター暗号化キーは、ディスク上に存在しているマスター暗号化キーのことであり、マスター暗号化キーへのアクセスに使用されるパスフレーズのことではありません。
例えばユーザーがPCを購入し、予めそのPCのストレージが暗号化されている場合、そのストレージの暗号化には工場出荷時に生成されたマスター暗号化キーが使用されています。
マスター暗号化キーへのアクセスを提供することで、ユーザーは別のキーを用いてストレージを再暗号化できるようになります。
また現状回復キーへアクセスするにはコマンドラインを利用する必要がありアクセス性が好ましくないため、将来的に回復キーへのアクセスもアプリで実現される予定です。
2. アプリのアクセス許可
Snapアプリはホストから隔離された環境に配置され、ネットワークなどホストのリソースにアクセスするには、明示的な許可が必要になります。現状Snapアプリはストレージへのアクセスやサウンドへのアクセス、カメラへのアクセスなど機能のカテゴリーごとに権限を与える仕組みになっています。
この仕組み自体は今後も存続しますが、これとは別にもっとユーザーが簡単にアプリの権限を調整できる仕組みが検討されています。
例えば「Android」や「iOS」では、カメラ機能を利用するアプリがカメラにアクセスする時に、カメラへのアクセスを許可するかどうかをユーザーに尋ねる確認画面が表示されます。
このような仕組みが検討されています。
まず最初の段階として、ファイルアクセスの権限許可をユーザーに尋ねる仕組みから実装される予定です。
3. Ubuntu Proの設定
「Ubuntu Pro」はLTSリリースの「Ubuntu」に提供される商用サポートサービスです。現状「Ubuntu Pro」の各種設定は「ソフトウェアとアップデート」アプリから設定できるようになっています。
この「Ubuntu Pro」の設定機能を「ソフトウェアとアップデート」から「Security Center」に移行する計画があります。
4. ネットワークセキュリティーの設定
ファイアウォールの有効と無効の切り替えや、Pingを無視するステルスモードの設定、ポートを設定する機能の実装が検討されています。デスクトップ
デスクトップでは、以下の計画が予定されています。1. GNOME 46の採用
開発チームは「GNOME」と連携して「GNOME 46」の開発に協力しており、「Ubuntu Desktop 24.04 LTS」では「GNOME 46」が採用される予定です。2. X11セッションは引き続き提供
「GNOME」ではX11セッションの削除が話題になりました。「Ubuntu Desktop 24.04 LTS」では引き続きX11セッションが提供されます。
また「Ubuntu」では「NVIDIA GPU」とWaylandセッション環境で発生する課題や問題の確認や調査が実施されます。
3. Snapアプリの更新通知の改善
Snapアプリにアップデートがあり、何かしらの理由でそのSnapアプリがまだアップデートされていない場合、以下のように13日の猶予と共にデスクトップ通知が表示されます。この通知メッセージはユーザーにとって少し煩わしさを感じるメッセージでしょう。
この状況を改善するため、猶予の短縮による通知頻度の抑制が検討されています。
また今すぐアップデートするボタンを配置したもっとユーザーにとって役立つ通知の実装が検討されています。
加えて開発に余裕があれば、ドックにアップデートが利用可能なことを示すバッジの表示も検討されています。
4. G SuiteとOffice 365をデスクトップに統合
「G Suite」と「Office 365」をターゲットにしたSnapアプリが開発されています。このSnapアプリを通じて「G Suite」と「Office 365」の各種アプリをデスクトップに統合し、ユーザーはそれらのアプリをデスクトップから簡単に利用できるようになります。
5. SSHでMFAのサポートとデスクトップとの連携
SSHでMFAのサポート作業が進められています。これによりSSOをサポートし、ユーザーはお気に入りのIDプロバイダーでログインできるようになります。