KDE Plasma 6リリース
2024年2月28日、KDE Plasma 6 がリリースされました。KDE Plasma 6
KDE Plasma はデスクトップ環境です。KDE Plasma はデスクトップを構成する様々なソフトウェアで構成されており、ユーザーが日々接するインターフェースになります。
KDE Plasma 6 は新しいメジャーリリースです。
今までのメジャーバージョンは KDE Plasma 5 であり、KDE Plasma 6 は新しい世代の KDE Plasma になります。
Qt6の採用
KDE Plasma 6 は Qt を利用して実装されています。KDE Plasma 5 では Qt5 を採用していましたが、 KDE Plasma 6 ではQtの次期メジャーバージョンである Qt6 を採用しています。
Wayland のサポート
KDE Plasma 6 で Wayland に対応しました。Wayland は次世代のディスプレイサーバーであり、従来の Xorg(X11)を置き換える存在です。
KDE Plasma 6 でも引き続き Xorg セッションを利用できます。
デスクトップ
デスクトップ全体の変更点です。オーバービューとデスクトップグリッドの統合
オーバービューとデスクトップグリッドが統合され、タッチパッドのジャスチャーの操作性が大幅に向上しました。フローティングパネル
デフォルトでパネルがフローティングするようになりました。パネルのスタイルは自由に調整でき、もちろん以前のスタイルに戻すことも可能です。
パネルの新しい非表示モード
アプリのウィンドウがパネルに重なる時に、自動的にパネルを非表示にする Dodge Windows が追加されました。KDE Plasma 5 から変更されたデフォルトのデスクトップ設定
以下のデスクトップ設定のデフォルトは、KDE Plasma 5 から変更されました。- ファイルやフォルダーはシングルクリックで選択し、ダブルクリックで開くようになりました。
- Wayland セッションがデフォルトになりました。
- Wayland セッションではタッチパッドの Tap-to-click がデフォルトで有効になりました。
- タスクスイッチャーではサムネイルグリッドがデフォルトのスタイルになりました。
- クリックによるスクロールバーのつまみの移動が、クリックした場所に移動するようになりました。
- デスクトップ上でのマウススクロールで、仮想デスクトップに切り替わらないようになりました。
- パネルのスタイルは、フローティングスタイルがデフォルトになりました。
再びキューブ効果が利用可能に
KWin でキューブ効果を再び利用できるようになりました。ロック画面解除の改善
ロック画面を解除する際、パスワードでも指紋認証でもどちらでもロックを解除できるようになりました。カラー
色空間など色に関する変更点です。HDR の部分的なサポート
Waylandセッションでは HDR(High dynamic range)に部分的に対応しました。HDRに対応したモニターやソフトウェアを利用した時に、より豊かで深みのある色彩で映像を楽しむことができます。
ICC プロファイル
各モニターに ICC プロファイルを設定すれば、KDE Plasma が自動的に色を調整します。ただしアプリケーションは現状 sRGB の色空間に制限されます。
今後対応する色空間が追加される予定です。
設定
システムの設定アプリの変更点です。UI構成の見直し
入れ子構造になった設定画面が減らされ、多くの設定ページではボタンがツールバーに移動されました。サウンドテーマ
サウンドテーマを指定する設定項目が追加されました。また新しいサウンドテーマ Ocean が導入され、Ocean がデフォルトになりました。
ファイルの関連付け
ファイルの関連付けでは、あらゆる種類の音楽ファイルや動画ファイルなど、広範なファイルタイプに対して優先的に使用するアプリを簡単に設定できるようになりました。Plasma Search
Plasma Search は様々なアイテムを検索する機能です。並び順のカスタマイズ
検索結果のアイテムの並び順をカスタマイズできるようになりました。タイムゾーンの変換
タイムゾーンを変換できるようになり、海外に旅行する時や海外の友人と連絡を取る時に相手の時刻を確認できます。検索条件のマッチング改善
アイテムを検索する際、ユーザーが入力した文字列をユーザーの言語及び英語を対象にマッチングするようになりました。アプリケーション
KDE 向けアプリケーション群である KDE Gear 24.02 も KDE Plasma 6 と同時にリリースされています。KDE Gear 24.02 でリリースされた多くのアプリもQt6に移行しています。
グループウェア
グループウェア関連のアプリの変更点です。Kontact
セキュリティー及びプライバシーが強化されました。KMail
メール表示時にメールビューアーから広告やトラッキングコードを削除するようになりました。メールコンポーザーでは、受信者の OpenPGP キーの有効性と信頼レベルを直接表示し、キーのつが期限切れに近い場合や期限切れになった場合に警告します。
AI 機能
また様々な既存のオンラインサービスのサポートに加え、オフライン及びオープンソースのAI機能に対応しました。翻訳に Firefox でも使用している Bergamot 翻訳モデルを指定できるようになりました。
加えてテキストの読み上げに vosk-api engine を利用することもできます。
これらの AI 機能はデフォルトで無効になっており、AI 機能を利用する場合は設定画面で本機能を有効にする必要があります。
KOrganizer
暗号化および署名した招待状メールを送信できるようになりました。Kleopatra
Kleopatra は GnuPG のフロントエンドです。OpenPGP をサポートしていない GMail のようなウェブクライアントから、暗号化されたメールをダウンロードして表示できるようになりました。
旅程支援アプリ
KDE Itinerary は旅程を支援するアプリです。UI の改善
スマフォ上での使いやすさ向上のため、よく利用されるアクションを画面下部のナビゲーションバーに配置しました。タイムラインの改善
メインのタイムラインは各エントリーをインライン展開できるようになり、途中の停車地点や遅延情報を確認できるようになりました。イベントの改善
イベントでは手動でエントリーを追加したり編集できるようになり、KDE Connect を通じて旅程全体もしくは一部を共有できるようになりました。屋内地図
現在見ている建物やエリアのアメニティを一覧表示できるようになりました。大きな駅でコーヒーを飲める場所を探したり、ホテル近くの飲食店を探したい時に便利でしょう。
この機能は OpenStreetMap と連携して動作し、インターネットに接続していなくても動作でき、検索語句が漏れることもありません。
旅程の詳細
旅程の詳細では停車地点の一覧を表示し、その場所を地図で表示できます。教育向けアプリ
教育向けアプリの変更点です。Kiten
漢字ブラウザーで検索ダイアログに対応しました。KWordQuiz
オーディオファイルでオーディオコントロールに対応しました。Kalzium
グラデーション表示を止め、周期表の元素の見やすさが向上しました。Kdenlive
Kdenlive は動画編集ソフトです。タイムラインの改善
タイムライン上に配置されたオーディオ及びビデオクリップを置き換えられるようになりました。例えばクリップのオーディオを抽出して他のアプリで編集し、その編集結果をクリップに反映できます。
字幕機能の強化
一つのトラックに複数の字幕を配置できるようになりました。複数の言語が必要な動画で役に立つ機能です。
また字幕をエクスポート及びインポートする機能もあります。
クリップモニター
最近開いたクリップの一覧を表示し、プロジェクトを開いた時に不足しているクリップの情報を表示するダイアログが一新されました。Dolphin
Dolphin はファイルマネージャーです。キーボード操作の改善
ツールボタンやディスクの空き容量を示すステータスバーに、キーボードでアクセスできるようになりました。また F10 キーでメインメニューを開き、Shift + F10 キー でコンテキストメニューを開けます。
分割ビューが容易に
フォルダーを右クリックした時に、分割ビューでそのフォルダーを表示するオプションが追加されました。Spectacle
Spectacle はスクリーンキャプチャーソフトです。録画機能の改善
録画中にシステムトレイにアイコンが表示されるようになりました。そのアイコン上にマウスカーソルを置くと、現在の録画時間が表示されます。
またそのアイコンをクリックすると、録画を終了します。
録画範囲の改善
従来のデスクトップ全体もしくは任意のアプリケーションウィンドウに加え、デスクトップの任意の部分を録画できるようになりました。キーボード操作の改善
以下のキーボードショートカットキーが追加されました。- 任意の範囲をキャプチャー:Meta+R / Meta+Shift+R
- デスクトップ全体をキャプチャー:Meta+Alt+R
- アプリケーションウィンドウをキャプチャー:Meta+Ctrl+R
保存場所の変更
キャプチャーした画像や動画は、以下のフォルダーに保存されるようになりました。- スクリーンショット:~/Pictures/Screenshots
- スクリーンキャスト:~/Videos/Screencasts
その他の改善
以下の改善が追加されました。- 録画品質の設定機能
- VP9 エンコーディングのサポート
- スケーリングが異なるマルチモニターのサポート改善
- 録画コマンドラインオプションの追加
- 出力ファイル名のテンプレート設定とフォーマット設定の追加
NeoChat
NeoChat はチャットサービスのクライアントアプリです。Matrix に対応しています。
ようこそ画面の追加
NeoChat 起動時にようこそ画面が表示され、使用するアカウントを選択できるようになりました。そのアカウントでサービスにログインできなかった場合、ようこそ画面に警告メッセージが表示されるようになりました。
アカウントの管理
NeoChat から新しい Matrix アカウントを登録できるようになりました。同様に Matrix アカウントを非アクティブにすることも可能です。
スペースのサポート
Matrix スペースの操作に対応しました。ルームの発見や巨大コミュニティーの管理、参加しているすべてのチャンネルの整理を NeoChat から行えるようになりました。
通知の改善
最近の通知をすべて含む新しい通知ページが追加されました。その他の改善
- 連絡先を共有する QR コードのサポート
- 招待やユーザーを無視するボタンの追加
- セキュリティー設定機能の追加
PlasmaTube
PlasmaTube は Youtube のクライアントアプリです。PiP のサポート
PiP(Picture-in-Picture)モードに対応しました。PiP を利用すれば、常に前面配置されるフローティングウィンドウで動画を再生できます。
Peertube と Piped の初期サポート
Peertube と Piped に部分的にサポートしました。その他の改善
- Invidious アカウントと視聴履歴の動機
- チャンネルやプレイリストの検索
- コマンドラインから再生する動画の指定が可能に
- MPRIS2 のサポート
- フルスクリーンで動画再生時にスリープに入らないように変更
Tokodon
Tokodon は Mastodon のクライアントアプリです。焦点の設定機能
自分のポストにフォロワーに見てもらいたい部分を強調表示できるようになりました。ブーストや返信の非表示
メインのタイムラインからブーストや返信を非表示にできるようになりました。アカウントの通報やミュート機能
タイムラインからもっと簡単にアカウントの通報したり、アカウントをミュートにできるようになりましたまたアカウントの通報時にコメントを残すこともできます。
ようこそ画面
ようこそ画面からアカウントにログインしたり、アカウントの登録が可能になりました。ログインに失敗した場合は、エラーメッセージが表示されます。
新しいプロファイル設定ページ
プロファイル設定ページが新しくなりました。新しいプロファイルページでは、プロファイルでポストをフィルタリングを設定できるようになりました。
その他の改善
- 画像のコピー&ペースト及びドロップしてローカルに保存できるようになりました。
- 投稿の下書きを破棄する時に、確認画面が表示されるようになりました。
- プッシュ通知など通知機能の全体的な改良
- 管理者向けのモデレーション機能
- 投稿の編集状況の表示
Kate
Kate は高度なテキストエディターです。LSP のサポート改善
LSP のサポートが改善され、サーバーの問い合わせに対しその内容を表示するダイアログが追加されました。また以下の言語で LSP の自動セットアップに対応しました。
- CSS
- SCSS
- LESS
- XML
- Julia
- PHP
DAP のサポート改善
以下の言語で DAP の自動セットアップに対応しました。- Dart
- Flutter
分割ビューの改良
分割ビューで同期スクロールに対応しました。TTS のサポート
TTS(Text to speech)をサポートしました。Konsole / Yakuake
Konsole と Yakuake はコンソールアプリです。言語のサポート改善
中国語、日本語、韓国語のスクリプトで、文字列を適切に選択できるようになりました。動作改善
レンダリングパフォーマンスが向上し、メモリーの割当量が半分になりました。またすべてのタブを個別の cgroup に配置することで、メモリーの空き容量が逼迫した時に、アプリ全体の強制終了を回避できるようになりました。
KDE Connect
KDE Connect はスマフォとの連携機能を提供するアプリです。デバイスのサポート改善
Bluetooth 経由でモバイルデバイスと接続できるようになりました。Bluetooth 経由の接続は Wi-Fi 接続よりも信頼性が低下しますが、Wi-Fi を利用できない場合やファイアウォールで接続が拒否される場合に有効です。