Linux Mint月刊ニュース
Linux Mint 開発チームは、Linux Mint 月刊ニュースにて Linux Mint の開発状況や取り組みを紹介しています。リポジトリーサーバーのアップグレード
Linux Mint のリポジトリーを配置しているサーバーが強化され、ネットワークインターフェースが 10 Gbps にアップグレードされました。これは以前の10倍の速度です。
待ち時間が短くなる
これにより Firefox や Chromium などダウンロードサイズが大きいパッケージが同時に多くのユーザーからダウンロードされる状況でも、従来よりもダウンロードにかかる時間が軽減されます。アップグレードの問題
Linux Mint 21.3 から Linux Mint 22 へアップグレードできるようになりましたが、先週パッケージの衝突により、アップグレードが正常に行えない問題が発生しました。これは Linux Mint 22 のベースになっている Ubuntu 24.04 LTS の samba と libreoffice パッケージで問題が発生したためです。
Ubuntu は Debian Unstable のスナップショット
Ubuntu 24.04 LTS は Debian Unstable(Sid)をベースに開発されています。Ubuntu はある特定のタイミングで Debian Unstable からパッケージを取得し、それをベースに開発を進めています。
そのため Ubuntu は常に Debian Unstable と同期しているわけではありません。
言い換えるとある特定のタイミングの Debian Unstable のスナップショットが、Ubuntu のパッケージベースになります。
当時 Debian は time_t の 64bit 移行作業を行っていた
Ubuntu 24.04 LTS 開発時に Debian では、time_t の 64bit 移行作業を行っていました。いわゆる2038年問題の対応です。(以降 T64 と表記)
この移行作業は広範なパッケージが対象であり、非常に多くの作業が伴います。
もちろん Debian をベースとしている Ubuntu も本件に影響を受けます。
ここへ来てXZバックドア問題発生
Ubuntu 24.04 LTS の開発中に、XZのバックドア問題が発生しました。Ubuntu(Canonical)はこの問題に対処するため、Ubuntu 24.04 LTS のリリースを1週間延期することになりました。
Canonical 頑張る
Ubuntu 24.04 LTS のリリースが迫る中、XZ問題と T64 の移行作業による影響及び負担がありましたが、 Canonical がこの状況を整理し乗り越え、安定版 Ubuntu 24.04 LTS のリリースに漕ぎ着けることができました。ただ T64 の移行作業は終わっていない
Ubuntu 24.04 LTS のリリースが済んだとは言え、T64 の移行作業は完遂していませんでした。Ubuntu 24.04 LTS のリリース後でも Debian Unstable ではこの移行作業が継続的に進められており、Ubuntu でもこの移行作業を完遂させるため、 Debian Unstable での移行作業に追従する必要がありました。
T64 の移行作業を終わらせよう
上記でも紹介したとおり Ubuntu は、ある特定のタイミングで Debian Unstable から取得したパッケージをベースに構成されています。Ubuntu は T64 の移行作業を完遂させるため、その時点での Ubuntu のパッケージに Debian Unstable で進められた移行作業の成果及び修正を取り込む必要があります。
これは単純にソースコードを比較して差分を取り込む作業ではありません。
Debian Unstable では積極的にソフトウェアがアップデートされます。
つまり T64 移行作業以外の修正も含まれます。
そのため数ヶ月前の Ubuntu のソースコードに、新しいソースコードから移行作業の修正に該当する部分だけをピックアップし、それを Ubuntu のソースコードに反映する作業を行うことになります。
開発者なら分かると思いますが、この作業は複雑な作業です。
Canonical も頑張る
T64 の移行作業を終わらせるため、Canonical はアップストリームと連携し、移行作業の完遂に向けて取り組みました。しかし複雑な作業には常にリグレッションのリスクが付き纏います。
Linux Mint も頑張る
さて Linux Mint では Linux Mint 22 へのアップグレードを提供する前に、すでにこの問題を把握していました。そこで Linux Mint では、T64 に対応していないパッケージでも影響が出ないように T64 パッケージに移行できるよう、アップグレードツールで対応することになりました。
でも衝突までは回避できない
しかしパッケージの以前関係の競合によるパッケージの衝突までは、アップグレードツールの対応でも回避できません。その後、衝突問題は解消された
そしてその後、このパッケージの衝突問題は解消されました。現状 Linux Mint 21.3 から Linux Mint 22 へのアップグレードは、正常に行えるようになっています。
Linux Mint 開発チームでもアップグレードテストを3回行い、いずれもアップグレードに成功しています。
デフォルトの Cinnamon テーマ
Cinnamon は Linux Mint が開発している主力のデスクトップ環境です。Linux Mint 以外のディストリビューションでも利用可
Cinnamon は Linux Mint 以外のディストリビューションでも利用でき、例えば Ubuntu の公式フレーバーの一つである Ubuntu Cinnamon がデスクトップ環境に Cinnamon を採用しています。他にも Cinnamon をデフォルトで採用しているディストリビューションもありますし、そうでなくても後からインストールして利用可能なディストリビューションも数多く存在します。
見栄えが酷い
Cinnamon を採用している Linux Mint 以外のディストリビューションでは Cinnamon の見栄えが酷く、 Linux Mint のような見栄えを期待しているユーザーから見ると、あまりのデザインの違いに驚くユーザーもいるでしょう。それはデフォルトの Cinnamon テーマ
この見栄えの酷さの理由の一つに、デフォルトの Cinnamon テーマを採用しているケースが数多くあります。Linux Mint のテーマ
Linux Mint のデフォルトのテーマは Mint-Y であり、Linux Mint の Cinnamonには、この Mint-Y テーマが採用されています。デフォルトの Cinnamon テーマの役割
デフォルトの Cinnamon テーマの役割は、トラブルシューティングです。トラブルシューティング目的で提供されているテーマであり、 Mint-Y テーマのような美しいデザインの提供が目的ではありません。
見栄えの確保は各ディストリビューターの仕事
そもそも Cinnamon に採用するテーマの選択や、オリジナルテーマの開発及びメンテナンスは、Cinnamon を採用する各ディストリビューターの仕事です。しかし現実はそうなっていません。
よろしい、ならば大幅刷新だ!
というわけで Linux Mint開発チームは、Cinnamon 6.4 にてデフォルトの Cinnamon テーマを大幅に刷新し、この見栄えの問題に対処する予定です。APT メンテナンスコスト改善
Linux Mint 22.1 の開発作業で、APT ライブラリーとそれを利用する apt コマンドといったユーティリティーのメンテナンスコスト改善作業が計画されています。APT
APT は非常に有名なソフトウェアであり、Debian 系のディストリビューションに触れたことのあるユーザーなら、必ずと言っても良い程、そして毎日のように apt コマンドにお世話になっているでしょう。知らなくても利用しているAPT
GUIアプリを主体的に利用しているユーザーの場合、あまり APT に馴染みがないかもしれません。しかしソフトウェアのインストールやアップデートなど、APT はソフトウェア管理の基盤となるソフトウェアです。
そして以下のような様々なソフトウェアで活用されるソフトウェアであるため、ユーザーは間接的に APT を利用しています。
- aptitude
- Synaptic
- gdebi
- apturl
- aptdaemon
- packagekit
- MATE メニュー
- Cinnamon メニュー
- ドライバーマネージャー
- ソフトウェアマネージャー
- ソフトウェアソース
- アップデートマネージャー
- ようこそ画面
- リポートマネージャー
- ロケール
- インプットメソッド設定ツール
- バックアップツール
- ・・・他にも数多くある
APT を利用しているソフトウェアを挙げだしたら、枚挙にいとまがないです。
APT は昔からある
APT は昔からあるソフトウェアです。APT が提供している一部のツールやライブラリーは10年以上前に開発されたものであり、それらはアップストリームでメンテナンスされていません。
APT を活用している Linux Mint や Ubuntu そして Debian では、もう長きに渡りAPT が適切に動作するよう修正を施してきました。
しかしソフトウェアの設計やローカライズそして提供している機能は、過去のものとなっています。
保守性を向上させよう
というわけで Linux Mint開発チームは、この状況を改善し保守性を向上させるため、以下の計画を予定しています。Gdebi と apturl の統合
Gdebi と apturl を統合し、Captain と呼ばれる新しいアプリを開発及び導入します。Aptdaemon と mintcommon-aptdaemon の統合
Aptdaemon と mintcommon-aptdaemon を統合し、AptKit と呼ばれる新しいライブラリーを開発及び導入します。他のアプリへの影響
Captain と AptKit の導入により、Aptdaemon や Synaptic、apturl を利用していたすべてのツールは、Captain もしくは AptKit を利用して動作することになります。Packagekit を利用しているツールは、これら新しいソフトウェアに移行する必要はありません。
LMDE 5 のサポート終了
LMDE 5(Elsie)のサポートは終了しました。今後 LMDE 5 向けのアップデートは受け取れません。
LMDE 5 を利用しているユーザーは、LMDE 6 へアップグレードしてください。
LMDE 5 から LMDE 6 へアップグレードする方法は、以下を参照してください。
アップグレード作業は難しくありません。