Ubuntu 24.10 の開発方針とロードマップ
Ubuntu 24.10 の開発方針とロードマップを紹介します。ロードマップはあくまで方針であり、途中で変更になる可能性もあります。
前回紹介したロードマップは、以下を参照してください。
ちなみに今回紹介するロードマップには、Ubuntu 24.04 LTS 向けの方針も含まれています。
GNOME 47 β版登場
開発版 Ubuntu 24.10 のデイリービルドのディスクイメージに、GNOME 47 β版が登場しました。GNOME 47 では低解像度のモニターのサポート改善や、新しいジェットやダイアログの導入、そしてパフォーマンスが向上しています。
Snap の改善
Snap の改善作業が進められています。Snap はアプリをパッケージング及びデプロイする仕組みであり、その仕組みに基づきアプリのインストールやアップデート、そしてアプリの実行環境を提供するなど、アプリ全体を管理する仕組みも提供しています。
Ubuntu 24.10 でSnap の UX 向上
Snap アプリをバックグラウンドでアップデートする際、ドックに進捗バーが表示されるようになりました。またアップデートが必要な実行中の Snap アプリに関する情報が、より分かりやすい内容に改善されました。
Snap版 Steam のサポート改善
Snap版 Steam は隔離された環境で動作するため、パーミッションの問題により使い勝手の悪さが指摘されていました。この状況を改善するため、現在 edge チャンネルから提供されている snapd で、より広範なパーミッションを Snap アプリに提供する修正が盛り込まれました。
これにより deb版 Steam では発生していなかったゲームの互換性の問題が改善されます。
NVIDIA GPU ドライバーのサポート改善
NVIDIA 550 GPU ドライバーで本ドライバーが提供するユーザースペースのライブラリーをホスト環境から Snap アプリの実行環境へ適切に渡せていませんでした。これはドライバーに必要なすべてのライブラリーを Snap アプリの実行環境へマウントできていなかったことに起因します。
新しく導入されたライブラリーの配置場所をマウントするように snapd が修正されました。
この修正は snapd 2.63.1 で導入されています。
snapd 2.63.1 は Ubuntu 24.04.1 LTS がリリースされる前にリリースされます。
Snap で提供されるプリインストールアプリの扱いと方針
Snap で提供されるプリインストールアプリの扱いと方針について以下で議論されました。Snap アプリとチャンネル
まず基本的な話として、Snap のチャンネルは以下の形式で構成されます。- track/risk/branch
詳細は以下を参照してください。
track
track にはデフォルトで latest というトラックがありますが、Snap アプリの開発者は latest 以外にも独自の track を設定できます。例えばリリースしている Snap アプリに復数のメジャーバージョンがある場合、メジャーバージョンごとに track を用意すれば、復数のメジャーバージョンをユーザーにリリースできます。
risk
risk はアプリの 安定版やβ版など、いわゆるアプリの開発段階を表します。Snap アプリの開発者は risk を設定し、安定版だけでなくテスター向けにβ版など開発版のアプリをリリースすることもできます。
branch
branch はちょっとした修正や特定の変更を施したアプリをリリースしたい時に利用します。branch の設定は任意であり、設定されていないアプリのほうが多いです。
また branch は中長期的に保持する設定ではありません。
git のブランチに近いイメージでしょうか。
プリインストールアプリのチャンネル
現在プリインストールアプリの多くは、以下のチャンネルから提供しています。- latest/stable/ubuntu-XX.XX
branch に Ubuntu のバージョンが含まれています。
この提供方法は Firefox など Ubuntu ユーザーに最新版アプリを提供する時に、Ubuntu の特定のバージョンでのみ必要な修正に対応できます。
そうなっていないアプリもある
snap-store は上記の形式でチャンネルが構成されていません。現状デフォルトのチャンネルである latest/stable から snap-store をインストールすると、App Center 以前の Ubuntu Software がインストールされてしまいます。
App Center は latest/stable/ubuntu-23.10 以降のチャンネルからのみ利用可能になっており、上記通りの形式になっておらずユーザーからも分かりにくい状態です。
言い換えると単一の snap-store パッケージに対して、Ubuntu Software と App Center の2種類の異なるアプリが共存しています。
App Center のチャンネル変更
この状況を改善するため App Center のチャンネル構成が以下のように変更されます。- Ubuntu Software:1/stable
- App Center:2/stable
こうすることで Ubuntu Software をプリインストールしている Ubuntu 向けに引き続き Ubuntu Software をサポートできます。
またユーザーにとっても App Center の存在を見つけやすくなりますし、インストールも容易になります。
今後は 2/stable がデフォルトに
今後リリースされる Ubuntu は 2/stable がデフォルトになり、2/stable から App Center がインストールされるようになります。また Ubuntu 24.04.1 LTS 以降の Ubuntu 24.04 LTS も同様の扱いになります。
3/stable はいつできるの?
将来的な話ですが、重大な機能の変更があった場合に 3/stable チャンネルが作成されます。既存のすべての Ubuntu で App Center に移行しない理由
App Center が Ubuntu Software を置き換える存在なら、既存の Ubuntu にプリインストールされている Ubuntu Software を App Center に置き換える考え方もあります。しかし既存の Ubuntu に関しては、使い勝手を途中で変更しないという方針があります。
加えて Ubuntu Software が持っていたファームウェアアップデート機能は App Center から削除され、別の Firmware Updater アプリがその機能を担うことになりました。
つまり Ubuntu Software を App Center に置き換えてしまうとファームウェアアップデート機能が失われてしまい、ユーザーは別途 Firmware Updater をインストールしなければならなくなります。
他のアプリもチャンネル構成を変更
Firmware Updater と今後リリース予定の Security Center でも App Center と同様の方針でチャンネルが構成されます。つまり 1/stable チャンネルから提供されます。
アップグレード時の追跡チャンネル変更
Snap パッケージをいずれかのチャンネルからインストールすると、Snap はインストールされたチャンネルを追跡するようになります。そしてその追跡しているチャンネル経由でアップデートを受け取れるようになります。
言い換えると Snap アプリとその Snap アプリをインストールしたチャンネルが紐付けされます。
Ubuntu のアップグレード時に追跡チャンネルの変更
Snap で提供されるプリインストールアプリをデフォルトのまま利用しておりチャンネルを変更していない場合、Ubuntu のアップグレード時に新バージョンの Ubuntu に合わせ自動的に追跡するチャンネルが変更されます。しかしユーザーがデフォルトのチャンネルから変更している場合、自動的に追跡するチャンネルは変更されません。
そのままだとアップグレード後の環境に一貫性をもたせることができません。
チャンネルの変更をデフォルトに戻す
この状況を改善するため、Ubuntu 24.04.1 LTS へアップグレードする場合や、Ubuntu 24.04 LTS から Ubuntu 24.10 へアップグレードする場合は、Ubuntu が想定しているチャンネルに戻すようになります。ubuntu-release-upgrader がメッセージを表示
アップグレード実行時に ubuntu-release-upgrader が追跡するチャンネルの変更に関するメッセージを表示するようになります。この追跡するチャンネルの変更は、以下の Snap アプリを含むプリインストール Snap アプリが対象であり、それ以外のユーザーが自分でインストールした Snap アプリに関しては対象外です。
- App Center
- Firefox
- Firmware Updater
App Center の改良
App Center はアプリのインストールやアップデートなど、アプリを管理するためのアプリです。アプリのアップデート画面の改善
管理画面にあるアプリのアップデート画面では、アップデート可能なアプリの一覧が、アプリのアップデート後に自動的に更新されるようになりました。また起動中の Snap アプリはアップデートできませんが、その旨を分かりやすいメッセージで表示するようになりました。
加えて起動中の Snap アプリがアップデート対象になっていても、すべてのアプリをアップデートするアクションは影響を受けなくなりました。
アプリのアンインストールがもっと簡単に
管理画面から直接 Snap アプリをアンインストールできるようになりました。App Center のアップデート処理の改善
App Center のアップデートはアップデート可能なアプリの一覧に表示されなくなり、自動アップデートするため App Center を終了する画面が表示されるようになりました。Ubuntu 24.04.1 LTS のリリースについて
Ubuntu 24.04.1 LTS のリリースに関する情報です。リリース日変更
不具合の対応のため、Ubuntu 24.04.1 LTS のリリース日が2週間延期され、2024年8月29日にリリースされる予定です。リリースに向けた進捗情報は、以下を参照してください。
注目の変更点
Ubuntu 24.04.1 LTS には Ubuntu 24.04 LTS が登場してから今までリリースされたソフトウェアのアップデートが含まれています。それ以外にもいくつか変更点があります。
- 上記でも紹介したとおり、チャンネルの変更をデフォルトに戻す処理が追加されます。
- Ubuntu Desktop Installer が autoinstall を利用した OEM インストールをサポートします。
- Raspberry Pi イメージで同じ変更が加えられた GNOME Initial Setup が利用されるようになりました。