Ubuntu Core Desktop の開発再開へ
2026年10月28日、Ubuntu Core Desktop の開発再開がアナウンスされました。Ubuntu Core Desktop
Ubuntu Core Desktop は、Snap で構成された Ubuntu Desktop です。現在リリースされている Ubuntu Desktop は、deb パッケージを主体に構築されています。
既存の Ubuntu Desktop でも、Firefox など一部のソフトウェアではすでに Snap 版のソフトウェアが導入されていますが、これを OS 全体に広げ、Snap で OS を全体を構築しようというのが Ubuntu Core Desktop です。
Ubuntu Core
すでに Snap で構成された Ubuntu が存在します。それが Ubuntu Core です。
Ubuntu Core は、すでに10年以上の実績があるセキュアで不変な OS です。
しかし Ubuntu Core は主に IoT や組み込み向けに提供されている OS であり、デスクトップ向けではありません。
この Ubuntu Core をベースに、デスクトップ向けのソフトウェアを導入し OS として構成したものが、Ubuntu Core Desktop になります。
初アナウンスから3年
Ubuntu Core Desktop は、2023年にアナウンスされました。そしてその後も続報が続いていました。
- Snap版Ubuntu Desktop登場・耐改ざん性を高めたもっとセキュアなデスクトップOS
- Ubuntu Core Desktopのアーキテクチャーとその構成
- Ubuntu Core DesktopとDesktop Session・Desktop Sessionの役割
- Ubuntu Desktop開発チームの取り組み(2023/9/25)
- Ubuntu 24.10の開発方針とロードマップ
- Ubuntu 24.10 の開発方針とロードマップ(2024年7月版)
- Ubuntu 25.04 の開発方針とロードマップ(2025年2月版)・GNOME 48 の採用やインストーラーの改善
しかしそれ以来、Ubuntu Core Desktop の続報が止まり、プロジェクトは休止状態になります。
開発の中で見つかった課題に対し、方針の再検討が必要になりました。
セキュアで不変なデスクトップ OS
Ubuntu Core Desktop はブートローダーやカーネル、デスクトップ環境、ユーザー空間で動作するサービス、そしてすべてのアプリケーション含め、あらゆるソフトウェアを Snap で構成します。これによりユーザーは、壊れにくく復旧が容易、かつ様々なデバイスやワークフローに適応できるデスクトップを利用できるようになります。
加えてアプリケーションがアクセスできるデータを、ユーザーがより細かく制御できるようになります。
開発で見つかった課題
今までの Ubuntu Core Desktop の開発では、デスクトップを構成する多くのコンポーネントを単一の Snap パッケージにまとめていました。しかしこの方法では、上記で述べた目標を実現できないことが分かりました。
そこで Ubuntu Core Desktop の開発再開にあたり、まずコンポーネントの分離が最優先目標の一つになっています。
これによりシステムの耐障害性の向上やセキュリティーの強化、組み合わせるコンポーネントの柔軟性が向上します。
専門チームの編成
今回 Ubuntu Core Desktop の開発再開にあたり、Ubuntu Core Desktop の専門チームが編成されました。このチームは横断的に既存の部門と連携し取り組むチームであり、目標の実現に向け開発が進められていきます。
Ubuntu Core Desktop の初期ターゲット
Ubuntu Desktop は世界中で多くのユーザーに活用されている OS であり、その活用方法も多種多様です。開発再開では、いきなりあらゆるユースケースをターゲットにするのではなく、まずは3種類の初期ターゲットを定め、その初期ターゲットに絞って開発が行われます。
これの方法は方針や設計の検証、そして課題の洗い出しに有効です。
では3種類の初期ターゲットを見ていきましょう。
ブラウザー中心のユースケース
今やブラウザーは欠かせないアプリの一つです。多くのユーザーが日常的に体験している
ウェブサイトのブラウジングだけでなく、ウェブサービスやウェブアプリケーションを中心としたワークフローは、多くのユーザーが日常的に体験しているユースケースにあたります。すでに Snap 版のブラウザーがある
すでに Firefox や Chromium は、既存の Ubuntu Desktop でも Snap として提供されています。当時登場したプレビュー版 Ubuntu Core Desktop でも、このユースケースへの対応は大部分が完成しており、カメラやマイクへのアクセス許可を求める仕組みの開発が進められていました。
開発者向けワークステーション
Ubuntu Core Desktop では、従来の開発者が馴染みあるファイルシステムやパーミッションとは異なる仕組みを採用しています。Snap ベースの開発環境
しかしすでに Snap 版 LXD は Ubuntu Core 上で開発者の期待通りに動作しており、 Canonical Workshop はこの環境の上で構築されています。Canonical Workshop と Visual Studio Code
Canonical Workshop は、開発に必要な環境をコンテナー内にまとめ、安全かつ簡単に開発環境を構築及び再現できるようにした開発ツールです。Canonical Workshop は Snap で提供されています。
また開発環境の準備の手間を削減するために、Reference SDKs も用意されています。
Visual Studio Code の拡張機能を利用すれば、多くの開発者は開発に必要なプログラミング言語やツールチェーンを簡単に用意することができます。
ソフトウェア開発と AI
昨今コーディングエージェントなど AI を活用した開発が盛んに行われています。Snap ならではの特徴として、Snap はホスト環境と分離してソフトウェアを実行するサンドボックスな設計になっています。
これは機密情報の保護にも役立てられており、AI がアクセス可能な範囲を意図的に狭めることで、安全性を向上させることができます
より厳しいアクセス制限を
さて現在の Snap 版 Visual Studio Code や Canonical Workshop は、隔離レベルが Classic で提供されています。隔離レベルが Classic の Snap はサンドボックス化されず、ホスト側のリソースに広範にアクセスできるようになっています。
このままでは機密情報の保護に不十分であり、Canonical Workshop をより制限の厳しい Strict に移行する作業が行われています。
この作業は今後数週間以内に終える予定です。
Snap 版 Visual Studio Code に関しても同様であり、隔離レベルを Strict に移行する作業が行われる予定です。
加えてCanonical Workshop からシームレスに利用できるように、改善作業が行われる予定です。
ゲーミングマシン
Steam Deck や Lenovo Legion Go といった携帯型のゲーミングマシンの需要が高まっています。Valve が Proton の開発に多大なリソースを投資したおかげで、Linux 上で動作するゲームが増加し、またその互換性も向上しました。
Snap 版 Steam
以前から何度も紹介していますが、Canonical では Snap 版 Steam をメンテナンス及びリリースしています。Snap 版 Steam は、隔離レベルが Strict で提供されています。
ゲームとシステムコンポーネント
ゲームの動作状況は環境に大きな影響を受けます。それはハードウェアだけではありません。
Proton のバージョンだったり、Mesa のバージョンだったり、デバイスドライバーのバージョンだったり、ソフトウェア環境によってもゲームの動作状況が変わります。
これらのソフトウェアはシステムに深く関わるソフトウェアもあり、従来のシステムでシステムに深く関わるソフトウェアを変更すると、他のアプリが動作しなくなったり、システムが起動しなくなるなど、大きなリスクを伴います。
モジュール型アーキテクチャー
これに対する解の一つが、モジュール型アーキテクチャーです。Ubuntu Core Desktop にモジュール型アーキテクチャーを導入し、グラフィックス関連のコンポーネント含め、それぞれゲームごとに独立して構成できるゲーム実行環境の実現が検討されています。
技術的なハードルは高い
将来的に Ubuntu Core Desktop はもう一つのデスクトップ OS として提供する方針ですが、その実現の技術的ハードルは高く、加えて解消すべき課題があります。アプリケーション
Ubuntu Core も Snap で構成されますが、Ubuntu Core 上で利用するソフトウェアは、隔離レベルが Strict で提供されている必要があります。ソフトウェアは Snap Store から提供されますが、大半のソフトウェアが Strict である一方、一部の人気ソフトウェアは Classic で提供されています。
Classic で提供されているソフトウェアは、そのままだと Ubuntu Core で利用できないため、Strict への移行作業が必要になります。
Ubuntu Core Desktop にも同じ事情があります。
Ubuntu Core Desktop 上で Classic Snaps をサポートするため、いくつかアプロチーがありますが、Workshop 内で GUI アプリを実行し、アプリのウィンドウをホスト側のデスクトップで表示するアイデアが検討されています。
また apt や nix、flatpak など、別のパッケージマネージャーを使ってアプリを利用できるように、Ubuntu Core が持つ仮想化やコンテナ化のために標準で備わっている基本的な仕組みを活用した方法が考えられています。
デスクトップのモジュール化
当時登場したプレビュー版 Ubuntu Core Desktop では、GDM や GNOME デスクトップ、そして Firefox を含むデスクトップコンポーネントの大部分を単一の Snap パッケージで構築していました。これらデスクトップコンポーネントを、ディスプレイマネージャーやデスクトップ環境、マルチメディアサーバー、ネットワーク機能、その他コア機能に分離し、コンポーネント同士がインターフェースを通じ連携して動作するモジュール型のアーキテクチャーの導入が検討されています。
このようにデスクトップコンポーネントを分離することで、デスクトップを構成する各コンポーネントを、個々に変更したり進化させることが可能になります。
厳格なアクセス制限とアクセス許可
隔離レベルが Strict のソフトウェアは、厳格なアクセス制限が適用されます。セキュリティー強度は向上する一方、ユーザーから見ると厳しいアクセス制限は使い勝手に影響を与えます。
アプリがカメラやマイクなどリソースにアクセスする際、アクセス許可の確認画面をユーザーに表示し、ユーザーがアクセス内容の確認と、許可もしくは拒否できる仕組みが開発されました。
ユーザーから見るとスマホのアプリのように、アクセス許可を求める画面が表示されます。
これにより厳格なアクセス制限を保ちつつも、ユーザーの使い勝手の低下を抑えられるようになります。
ちなみにユーザーには、ソフトウェアのアクセス権を細かく制御できる権限があります。
許可したアクセス権でも後で取り消すことが可能です。
core26 に移行する作業
当時登場したプレビュー版 Ubuntu Core Desktop は、core22(Ubuntu 22.04 LTS)がベースでした。開発チームはこれを core26(Ubuntu 26.04 LTS)ベースに移行する作業を行っています。
Ubuntu Core Desktop と公式フレーバー
Ubuntu Core Desktop の取り組みで得られた成果やエコシステムは、何も Ubuntu Desktop に限定されるものではありません。公式フレーバー
将来的に Snap 版公式フレーバーが登場するかもしれません。ただし公式フレーバーが Snap 版公式フレーバーを出すかどうかは、各公式フレーバーが決めることです。
KDE Neon Core
KDE Neon は Ubuntu LTS に最新の KDEを 環境を搭載した OS です。こちらは公式フレーバーではありませんが、KDE Neon も Ubuntu Core Desktop の取り組みに連携する形で、Snap 版 KDE Neon を開発すべく一緒に取り組んでいます。
今の Ubuntu Desktop は無くならない
今の Ubuntu Desktop は無くなりません。Ubuntu Core Desktop が完成した暁には、ユーザーに従来の Ubuntu Desktop と、もう一つの選択肢である Ubuntu Core Desktop が、提供されることになるかと思います。


