物理ボリュームのサイズ
物理ボリュームのサイズとは、アレイを構成する物理ボリュームのサイズのことです。アレイを作成する際、使用する物理ボリュームのサイズを指定することができます。
例えば3TiBのHDD全体を使用してアレイを作成する際、3TiBのうち各物理ボリュームから1TiBだけ使用してアレイを作成することができます。
対象となるアレイの種類
ここでの内容は、以下のアレイの種類が対象になります。- RAID 1
- RAID 4
- RAID 5
- RAID 6
- RAID 10
主な用途
アレイ作成時に物理ボリュームのサイズを指定しなかった場合、「MDドライバー」は指定された物理ボリュームから、可能な限り最大限の容量を使用します。その場合、スペアディスクの追加やフォルティーディスクの置き換え時に、既存のアレイを構成する物理ボリュームの容量と同等か大きい容量の物理ボリュームを使用する必要があります。
RAID 1の例
例えば「RAID 1」アレイが1TiBのHDD2台で作成されているとします。既存の物理ボリュームを新しい物理ボリュームに置き換える際、1TiB以上の容量を持つ物理ボリュームでなければなりません。
新しい物理ボリュームが既存の物理ボリュームよりも1バイトでも容量が少ない場合、新しい物理ボリュームに置き換えることはできません。
何が困るのか
新しい物理ボリュームを用意する際、HDDの容量に気を使わなければならないということです。1TBとして販売されているHDDが、1TiBなのか1TBなのか、実際に何バイトあるのか、必要な容量は何バイト以上なのか、事前に確認が必要です。
アレイに障害が発生し新しいHDDを購入したが、アレイは1TiBの物理ボリュームで作成されており、購入したHDDは1TBの容量しかなく、アレイに使用できなかったというケースが考えられます。
1TiBと1TBの差は、約93GiBです。
そこで
予めそのような状況が予想できるのであれば、それを見越して実際の物理ボリュームの容量よりも小さいサイズでアレイを作成すると良いでしょう。各物理ボリュームでどれくらいの容量をアレイに使用するのか、ユーザーが指定することができます。
どの程度のサイズが最適かは、アレイの使い方(運用方法)によるでの、ユーザーが各自判断することになります。
パーティションでアレイを作成する時は
パーティションでアレイを作成する時は、事前にパーティションのサイズを調整することで、物理ボリュームで使用する容量を決めることができます。例えば、1TBでパーティションを作成しアレイを作成しておけば、新たに用意した1TiBのHDDでも同様に1TBでパーティションを作成し、アレイに加えることができます。
この場合、アレイ作成時に別途物理ボリュームのサイズを指定する必要はありません。
物理ボリュームのサイズの指定を、パーティションのサイズで指定しているということになります。
補足
1TB = 1012バイト = 1,000,000,000,000バイト1TiB = 240バイト = 1,099,511,627,776バイト
1TiB - 1TB = 99,511,627,776バイト = 92.677425385GiB
およそ1割の差がある。
物理ボリュームのサイズを指定するときの注意事項
物理ボリュームのサイズを指定する時、いくつか注意事項があります。メタデータの領域は含まれない
アレイ作成時に物理ボリュームのサイズを指定する際、メタデータのサイズが含まれていません。従って物理ボリュームの容量と同じサイズを指定してしまうと、メタデータを保存する領域が確保できなくなります。
最低でも128KiBの容量は残しておく必要があります。
例えば物理ボリュームの容量が1MiBだとしたら、指定できるサイズの最大値は896KiB(1024KiB - 128KiB)になります。
余裕をもたせたサイズを指定するようにしましょう。
指定できるサイズ(RAID 4/5/6)
指定できるサイズには制限があります。必ずチャンクサイズの倍数でなければなりません。
「RAID 1」にはチャンクサイズが無いため、気にしなくてよいです。
アレイ作成時の警告について
物理ボリュームのサイズを指定すると、「MDドライバー」は指定された各物理ボリュームの容量をチェックします。もし指定されたサイズよりも各物理ボリュームの実際の容量が1%以上大きい場合は、以下のような警告を表示します。
mdadm: largest drive (/dev/sdd2) exceeds size (10240K) by more than 1%
警告と言っても通知や情報レベルの内容なので、承知しているなら気にしなくてよいです。