Ubuntu 20.04 LTSアンケート結果の公開
2019年12月、「Ubuntu 20.04 LTS」に関するアンケートが実施されました。このアンケートは「Ubuntu 20.04 LTS」で実現する重要な事柄を洗い出すために実施されました。
2万人以上がアンケートに参加
このアンケートでは21,862人の人々がアンケートに参加し、その調査結果は「Ubuntu 20.04 LTS」の開発方針に活用されました。ここでは分析結果をいくつか紹介します。
GNOME
「GNOME」は、様々なLinuxディストリビューションで採用されているデスクトップ環境及びそれに付随するアプリケーション群です。開発チームが思っていた通り「GNOME」は物議を醸しました。
UnityからGNOMEへの移行
約2年前に「Ubuntu」のデスクトップ環境は、「Canonical」が開発していた「Unity 7」から「GNOME 3.28」へと切り替わりました。この移行はコミュニティー内で物議を醸しましたが、究極的にはユーザーはすでに「GNOME」を使っており、ユーザーはそれらを好んでいたため、「GNOME」の採用が決定されました。
また「Ubuntu」及び「Canonical」の「Unity」に対する取り組みは、Linuxの世界で革新ではなく、断片化であると見られていました。
ちなみに「Unity」時代の「Ubuntu」がデフォルトで提供していたアプリの多くは、「GNOME」由来のアプリです。
ユーザーの全体的な意見
「GNOME」に関する分析結果からユーザーの全体的な意見は、ユーザーがもっと楽しく「Ubuntu」を利用できるようにするため、「GNOME」のアップデートと改良を「Ubuntu 20.04 LTS」で行うべきという意見です。「GNOME」のアップデートに関して「Canonical」は、各リリース毎に最新版に追従して欲しいとの要望であると捉えており、また改良に関しては、継続的にアップストリームを通じて改良に取り組んで欲しいとの要望であると捉えています。
UnityとGNOME
「Ubuntu」が「GNOME」へ移行して約2年が経過しますが、アンケート結果では約30%のユーザーが「Unity」に戻して欲しいと回答しています。その一方で「Unity」に戻して欲しいが「GNOME」への移行に理解を示すユーザーも含めた約80%のユーザーは、「GNOME」に改良と一貫性を求めています。
最新版GNOMEの採用
「Ubuntu 20.04 LTS」では最新版の「GNOME 3.36」を採用しています。「GNOME 3.36」では、シェルテーマの改良や新しいロックスクリーンの採用、通知を抑制する「Do not disturb」モードを切り替える機能、設定パネルの改良など様々な改良が行われています。
ユーザーが求めるアプリケーション
何があれば「Ubuntu」はユーザーの生活をより良くするのか。ユーザーは「Ubuntu」に何を必要としているのか。
この問には実に様々な回答が寄せられましたが、その中からユーザーが要望するアプリケーションに目を向けると、多くのユーザーが著名なプロプライエタリー・アプリケーション(オープンソースではないサードパーティーのアプリケーション)を求めていることが分かりました
著名なサードパーティーのアプリケーション
「Adobe Photoshop/Illustrator/Acrobat/Creative Cloud」を求めた回答は、100件を超えます。「Adobe」製品よりもわずかに少ない件数ですが、「Mathworks」と「Autodesk」を求めた回答も数多くありました。
そして「Microsoft Office」を求める回答は、数百件にのぼります。
実際これらのアプリケーションの存在は、人々が「Windows」に留まる主な理由として挙げられています。
また他にも特別件数が多いわけではありませんが、「Lightroom」「Steam」「Instagram」が回答に寄せられています。
継続的な取り組み
これらのアプリを求める回答はアンケートの全体から見れば少ない件数です。しかしこの種のアプリをLinux向けに提供してもらうには、継続的な取り組みが必要です。
仕組みの整備で言えば「Snap」はその一環でしょう。
また「Spotify」や「Skype」、「Slack」、「VSCode」など、ここ数年Linux向けにアプリケーションを提供するサードパーティーは増加傾向にあります。
ゲーム
ゲームのプレイやストリームング、開発など、ゲームに関する回答が1,280件寄せられています。ゲーム環境の充実を
回答者はこの分野は技術的な成長が見込める主要な分野であると見ており、ゲーム関連の環境をより良くする改善を求めています。また「Ubuntu」を利用しない主な理由の1つに、現在の不十分なゲーム環境が要因であるとの回答も寄せられています。
加えて「Ubuntu」をゲーマーでも利用できる環境として、充実したゲーム環境のサポートや改善を求めています。
GameModeをデフォルトでインストール
「Ubuntu 20.04 LTS」では、「GameMode」がデフォルトでインストールされます。「GameMode」はCPUの省電力モードを抑制し、ゲームのI/Oやプロセスの優先度を高くするなど、パフォーマンスを優先する設定を行うデーモン(サービス)です。
これによりゲームがスムーズに動作するようになり、Linuxゲームユーザーの体験が改善されます。
NVIDIAドライバー
NVIDIA GPUを搭載しているPC向けに、アップデートされたNVIDIAドライバーが提供されます。また追加のドライバーが改良され、UXが改善されています。
Snap
「Snap」はアプリケーションのパッケージングや配置を行う仕組みで、ソフトウェアをシステムから隔離して配置することで、安全性を確保すると同時に、配置のし易さも提供しています。「Snap」で提供されるアプリは「Snap Store」から配布され、ユーザーは「Ubuntuソフトウェア」や「snap」コマンドから、それらのアプリをインストールすることができます。
Snapに対するユーザーの印象
「Snap」に関する意見では、否定的な意見が30.1%、どちらでもない意見が33.5%、肯定的な意見が36.3%とほぼ均等に分かれています。Snapに対する要望
「Snap」に関する意見では、もっとSnapアプリを増やして欲しいとの意見が大多数を占めました。また否定的な意見の多くは、デスクトップアプリやSnapのパフォーマンスに関連する内容でした。
これらの課題は継続的に解決に向け取り組まれています。
- Snap startup time improvements
- Slow snap? Trace-exec to the rescue!
- Create your first snap
- Snapcraft tricks: Improve release flexibility with pull and build overrides
Ubuntuの印象
アンケートの結果から、ユーザーが持っている「Ubuntu」に対する印象を見てみましょう。どのくらいUbuntuを気に入っているか
以下は「Ubuntu」をどの程度気に入っているのかを割合で示しています。青は「とても気に入っている」、赤は「気に入っている」、オレンジは「どちらでもない、無関心」、緑は「気に入っていない」、紫は「Ubuntuを利用していない」です。
肯定的な反応が9割を占めています。
アンケートに回答したユーザーは「Ubuntu」ユーザーであることも分かります。
Ubuntu Desktopを利用しているか
以下は何らかの形で「Ubuntu」を利用しているユーザーが、「Ubuntu Desktop」を利用しているかどうかを割合で示しています。85.5%のユーザーが「Ubuntu Desktop」を利用しており、残りは「Ubuntu Server」もしくは「Ubuntu Core」を専門的に利用するユーザーです。
どのOSをメインに使用しているか
以下は何らかの形で「Ubuntu」を利用しているユーザーが、どのOSをメインに使用しているのかを割合で示しています。何らかの形で「Ubuntu」を利用しているユーザーのうち「Ubuntu Desktop」をメインに使用しているユーザーは55.3%ですが、「Windows」をメインに使用しているユーザーは17.4%います。
「Windows」や「macOS」をメインOSとして利用しているユーザーの中には、「Ubuntu Server」もしくは「Ubuntu Core」を併用しながら、それらのOSをメインに使用しているのかもしれません。
Ubuntuと好みのフレーバー
以下はユーザーのお気に入りのOS(Ubuntuやフレーバー)を割合で示しています。複数回答可で得られた結果ですので、合計は100%ではありません。
「Ubuntu」が一番ですが、フレーバーでは「Kubuntu」「Xubuntu」「Ubuntu MATE」の割合が大きいですね。
「Kubuntu」は「KDE Plasma」を採用した「Ubuntu」のフレーバーですが、「KDE Plasma 5」になってからパフォーマンスが大きく向上し(軽くなった)、以前の印象とは大きく異なります。