KDE Gear 23.08の新機能と変更点
2023年8月24日、「KDE Gear 23.08」がリリースされました。KDE Gear
「KDE Gear」は「KDE」コミュニティーによって開発されているソフトウェア群(アプリケーション群)です。例えばファイルマネージャーの「Dolphin」や高度なテキストエディターである「Kate」、ターミナルエミュレーターの「Konsole」など多くのアプリがこれに含まれます。
「KDE」環境では「KDE Gear」から提供されるアプリケーションの多くがデフォルトで採用されています。
KDE Gear 23.08
「KDE Gear」は年に3回、4ヶ月毎にリリースされており、2023年8月に「KDE Gear 23.08」がリリースされました。ここでは「KDE Gear 23.08」の新機能と変更点をピックアップして紹介します。
動画で見るKDE Gear 23.08の新機能と変更点
動画でも「KDE Gear 23.08」の新機能と変更点を紹介しています。もしよろしかったら動画も参考にして頂ければと思います。
Dolphin
「Dolphin」は多機能なファイルマネージャーです。ユーザーがファイル操作において必要とする機能を数多く備えており、カジュアルユーザーから上級者まで活用可能なファイルマネージャーです。
ファイルビューをタブで開いたり左右に分割したり、ローカルにあるファイルからリモートにあるファイルまで操作可能です。
1. 一時ファイルとバックアップファイルの非表示
アプリによってはユーザーの作業中に一時ファイルや現在開いているファイルのバックアップファイルを生成します。これらのファイルは標準的なルールに基づきファイル名が設定されています。
しかしアプリの中には、一時ファイルやバックアップファイルのファイル名の付け方が標準的なルールから逸れており、例えそれらのファイルがアプリやユーザーから見て一時ファイルやバックアップファイルだったとしても、既存のルールに沿っていないファイルは一時ファイルやバックアップファイルとして扱われてきませんでした。
この状況を改善するため、今回MIMEタイプに「application/x-trash」が設定されているファイルも隠しファイルとして扱われるようになりました。
「Dolphin」には隠しファイルの表示を切り替える機能があり、隠しファイルの表示が無効になっている場合、MIMEタイプに「application/x-trash」が設定されているファイルも表示されなくなりました。
これによりユーザーが誤ってアプリが作成したバックアップファイルを開いて編集作業を続行してしまうなど、ファイル操作や作業ミスを軽減できるようになりました。
2. サイズ計算の定期的な反映
詳細ビューでファイルの一覧を表示している時に、サイズ列にフォルダーのサイズを表示できます。そのフォルダー内に大量にファイルがある場合、フォルダーサイズの計算に時間がかかります。
フォルダーサイズの計算に時間がかかる場合でも、定期的に現在計測済みのフォルダーサイズがサイズ列に表示されるようになりました。
3. タブの複製を開く
「Dolphin」ではウェブブラウザーのタブのように、ファイルの一覧を複数開くことができます。異なるフォルダー間でファイルをやり取りしたい時に便利な機能です。
さてタブをダブルクリックした時に、そのタブの複製を新規に開けるようになりました。
4. 分割ビューでファイルの移動やコピー
分割ビューはファイルの一覧を左右に分割表示する機能です。この機能もタブと同様に異なるフォルダー間でファイルをやり取りしたい時に便利な機能です。
分割ビューを利用している時に、ファイルのコンテキストメニューやショートカットキーで、アクティブなビューからもう片方のビューへ、ファイルのコピーや移動が可能になりました。
5. 設定画面のレイアウト変更
「Dolphin」の設定画面の見直し作業が行われており、その一環として「表示モード」の設定項目のレイアウトが変更されました。「Content Display」のタブが追加され、そこに既存の一部の設定項目が「Content Display」のタブに移されました。
Okular
「Okular」はドキュメントビューアーです。PDFファイルを開く時によく利用されますが、PDFファイル以外にも様々なドキュメントフォーマットに対応しています。
1. PDFデジタル署名機能の強化
PDFファイルのデジタル署名機能が強化され、署名に理由や場所といったメタデータを設定できるようになりました。また署名に背景画像も設定できるようになりました。
加えて署名機能にすぐアクセスできるように、署名を行うメニュー項目がハンバーガーメニューのトップレベルに配置されるようになりました。
2. PDF印刷機能の強化
PDFファイルの印刷時に、デフォルトのスケーリングモードをオプションで指定できるようになりました。3. 注釈テキストのコピー
注釈一覧を表示する注釈サイドバーでは、注釈テキストを右クリックして表示されるコンテキストメニューから、注釈テキストの内容をクリップボードにコピーできるようになりました。Merkuro
「Merkuro」はユーザーのタスクやイベントなどスケジュールを管理するカレンダーアプリです。また連絡先の管理と言ったアドレス帳機能も提供しています。
カレンダーはローカルのカレンダーだけでなく、「Nextcloud」や「Caldav」といった様々なオンラインカレンダーにも対応しています。
1. アプリ名の変更
元々このアプリのアプリ名は「Kalendar」というアプリ名でしたが、カレンダー機能以外にも連絡先を管理するアドレス帳機能も搭載しているため、「Kalendar」から「Merkuro」にアプリ名が変更されました。2. アプリの分割
「Merkuro」はカレンダー機能を提供するアプリと、連絡先管理機能を提供するアプリに分割され、ユーザーは目的に応じて各アプリを組み合わせて活用できるようになりました。- カレンダーアプリ(Merkuro Calendar)
- 連絡先管理アプリ(Merkuro Contants)
3. メールクライアントアプリの追加
近々「Merkuro」にメールクライアントアプリも追加される予定です。Skanpage
「Skanpage」はスキャナーから画像をスキャンするスキャナアプリです。1. ドキュメントの順番変更
ドキュメントをスキャンすると、スキャンしたドキュメントがサイドバーにページとして保存されます。この各ページをドラッグ&ドロップしてページの配置順を変更できるようになりました。
2. スキャンオプションの拡充
スキャンオプションに輝度やコントラスト、ガンマやカラーバランスを調整するオプションなどスキャンオプションが追加されました。3. スキャン領域の複数選択
プレビュー画面からスキャンする領域を複数選択し、それぞれの領域をスキャンできるようになりました。それぞれのスキャン領域は別々のページとしてスキャンされます。
また選択したスキャン領域を水平もしくは垂直に分割して、それぞれを別のページとしてスキャンすることも可能です。
Kate
「Kate」は多機能なテキストエディターであり、テキスト処理に便利な機能を数多く備えています。またコードエディターの機能も備えており、シンタックスハイライトや埋め込み端末、LSPクライアント機能やデバッガー機能など、統合開発環境に相当する機能も提供しています。
1. 開発環境の改善
LSPクライアント機能にGLSL言語とGodotのゲームデザインエンジンのサポートが追加されました。またQt6に対応したQML言語のサーバーオプションもサポートされました。
2. デバッガープラグインの改善
デバッガープラグインが改善され、デバッグウィンドウのツールビューにGDBのナビゲーションボタンが配置されるようになりました。NeoChat
「NeoChat」はMatrixのクライアントアプリです。テキストメッセージや動画の送信などMatrixが持つ多くの機能に対応しています。
1. 場所の表示
UIデザインが見直され、イベント開催場所を表示できるようになりました。また旅行支援アプリの「Itineray」にMatrixと連携する機能があり、この機能を利用して自分の居場所をブロードキャストしているユーザーの場所をマップ上で表示できるようになりました。
Tokodon
「Tokodon」はMastodonのクライアントアプリです。1. UIの見直しとデザインの改良
UIデザインが全体的に見直され、タイムラインが以前よりもスムーズに表示されるようになりました。2. インスタンスの管理とモデレーション機能
自身が立ち上げているMastodonインスタンスの管理とモデレーションを「Tokodon」から直接行えるようになりました。本バージョンではユーザーを管理するツールや、フェデレーション対象のインスタンスを一覧表示するツールが提供されます。
3.その他の新機能
他のアプリと連携して投稿を共有する機能や、アクセストークンを「KWallet」に保存する機能、ブロック及びミュートしているすべてのアカウントを表示する機能、自分のステータスをプロフィールに固定する機能が提供されています。またトレンドのタグや投稿をブラウジングする機能も利用できるようになりました。
4. 動画再生の安定性向上
マルチメディアフレームワークがアップグレードされ、動画再生の安定性や信頼性が向上しました。Elisa
「Elisa」は豊富な機能を備えた音楽プレーヤーです。「Elisa」はただの音楽プレーヤーではなく音楽を管理する機能もあり、プレイリストの作成や管理も可能です。
また音楽を年代別やアーティスト別、アルバム別やトラック別にグルーピングする機能も提供しています。
他にも音楽の歌詞を表示する機能もありますし、オンラインラジオにも対応しており、オンラインラジオを聞くことも可能です。
1. カバーファイルの検索機能の改善
アルバムカバーに使用するカバーファイルの検索機能が改善され、別のアルバムカバーに切り替える時にスムーズに切り替えられるようになりました。2. MPRISのサポート改善
「MPRIS(Media Player Remote Interfacing Specification)」のサポートが改善されました。「MPRIS」はメディアプレーヤーを制御するための仕組みです。
「MPRIS」のサポート改善により、シャッフル再生とリピート再生の制御が「MPRIS」経由で行えるようになりました。
例えばメディアプレーヤーウィジェットから「Elisa」のそれらの設定を制御したり、「KDE Connect」経由でPCに接続したスマホから「Elisa」のそれらの設定を制御できるようになりました。
Gwenview
「Gwenview」は画像ビューアーです。特定のフォルダー内にある画像ファイルの一覧をブラウジングする機能もあります。
1. UI/UXの改善
今表示している画像から別の画像に移る時に、画像が滑らかに遷移するようになりました。また現在表示している画像の表示倍率を変更するズームバーの使い勝手の改善や、ツールバーやオプションが整理され分かりやすさが向上しています。
Spectacle
「Spectacle」はパワフルなスクリーンショット作成アプリです。デスクトップ全体のスクリーンショットを作成したり、ユーザーが指定した特定のウィンドウやデスクトップ上の任意の領域を指定し、スクリーンショットを作成することもできます。
また作成したスクリーンショットにその場で直接注釈を入れる機能もあります。
1. 注釈機能の改善
注釈上にマウスカーソルが移動すると、その注釈の枠を表示するようになりました。これにより注釈を選択しやすくなりました。