Ubuntu 24.04 LTS の新機能と変更点・既知の問題
リリースノートから、Ubuntu 24.04 LTS の新機能と変更点を紹介します。リリース情報
Ubuntu 24.04 LTS のリリース情報は、以下を参照してください。Ubuntu 24.04 LTS のリリースノートは、以下を参照してください。
- リリースノート:ReleaseNotes
- リリースノート(日本語):リリースノート
ここでは主に Ubuntu Desktop の内容を中心にピックアップします。
1. Ubuntuやシステム全般
Ubuntu やシステム全般に関する内容です。1-1. Ubuntu のサポート期間
Ubuntu 24.04 LTS はLTSリリースであり、5年間の標準(無償)サポート期間が提供されます。つまり2029年6月までサポートされます。
Ubuntu 24.04 LTS の公式フレーバーもLTSリリースですが、サポートは3年間になります。
つまり公式フレーバーは、2027年までサポートされます。
1-2. Ubuntu のアップグレード
現在 Ubuntu 23.10 を利用しているユーザーは、その内ソフトウェアの更新から Ubuntu 24.04 LTS へアップグレードできます。現在 Ubuntu 22.04 LTS を利用しているユーザーは、Ubuntu 24.04.1 LTS リリース以降にアップグレードできるようになります。
詳細は以下を参考にしてください。
1-3. 2038年問題の対応
armhf アーキテクチャーで問題になっていた2038年問題に対応しました。今まで 32bit で時刻を扱っていた処理を 64bit で処理するように変更するため、1,000 を超えるパッケージがアップデートされました。
これにより太陽系の寿命である西暦68億年よりもはるかに長い、西暦約3000億年まで時刻を扱えるようになりました。
1-4. Linux kernel 6.8 採用
Linux kernel に Linux kernel 6.8 が採用されました。Ubuntu 23.10 では Linux kernel 6.5 が採用されていたため、3回分のメジャーバージョンアップが行われています。
これにより新しいハードウェアのサポートが改善されています。
それぞれのバージョンの主な変更点は、以下を参考にしてください。
また Linux kernel 6.8 の主な変更点や、Ubuntu 向けの主な変更点は、以下を参考にしてください。
1-5. Netplan 1.0 採用
ネットワーク構成を定義する仕組みに Netplan 1.0 が採用されました。これにより無線LANのサポート改善やコマンドオプションの追加など、機能が向上しています。
詳細は以下を参考にしてください。
1-6. systemd v255.4 採用
systemd に systemd v255.4 が採用されました。systemd v255 の変更点は、以下を参照してください。
1-7. サービスの体系的な自動再起動
needrestart パッケージはライブラリーのアップデート時に、 unattended-upgrade のような非対話型のアップデートでも、そのライブラリーに影響を受けるサービスを体系的に再起動するようになりました。これは unattended-upgrade によるアップデートは、デフォルトでセキュリティーアップデートに設定されており、もしサービスの再起動に失敗すると、アップデートの内容がサービスに反映されないためです。
もしこの自動的な再起動から特定のサービスを除外したいなら、そのサービスを以下の設定ファイルの override_rc セクションに記述してください。
- /etc/needrestart/needrestart.conf
1-8. irqbalance をプリインストールから除外
irqbalance はハードウェア割り込みをCPU間で分散させ、パフォーマンスを向上させるソフトウェアです。昨今のカーネルやデバイスドライバーの割り込み処理は改善されており、irqbalance のデフォルト設定のままではそれを超えるパフォーマンスの向上が十分に期待できないためです。
また irqbalance が問題を引き起こすケースもあります。
その状況を踏まえ irqbalance はプリインストールされなくなりました。
もちろん irqbalance の設定を最適化して利用する場合、パフォーマンスの向上に期待できるでしょう。
irqbalance はプリインストールされないだけで、必要なら後からインストールできます。
1-9. Netplan設定ファイルの配置位置変更
今まで NetworkManager をレンダラーに指定する Netplan の設定ファイルを以下に配置していました。- /etc/netplan/01-network-manager-all.yaml
この設定ファイルは、以下に配置されるようになりました。
- /lib/netplan/00-network-manager-all.yaml
これはユーザーがこの設定ファイルを編集すべきではないことを示すためです。
Ubuntu をアップグレードする際、以前の場所に配置されている設定ファイルの中身がユーザーにより変更されていない場合、その設定ファイルは自動的に削除され、新しい設定ファイルが配置されます。
そうではない場合、従来の設定ファイルは以下にリネームされます。
- /etc/netplan/01-network-manager-all.yaml.dpkg-backup
1-10. NetworkManagerの設定ファイルの配置位置変更
従来のネットワーク接続設定は、以下の場所に保存されていました。- /etc/NetworkManager/system-connections/
NetworkManager は Netplan を経由してネットワークを構成するようになりました。
このため上記の場所に配置されているネットワークの接続設定は、Ubuntu のアップグレード時に自動的に以下の Netplan 用の設定ファイルに変換されます。
- /etc/netplan/90-NM-*.yaml
また変換前の従来のネットワーク接続設定は、以下の場所に自動的にバックアップされます。
- /var/lib/NetworkManager/backups/
ちなみに Netplan が生成する NetworkManager 向けのネットワーク接続設定は、以下の場所に配置されます。
- /run/NetworkManager/system-connections/
詳細は以下を参考にしてください。
1-11. 電力管理の改善
Power Profiles Manager が改善され、新しいハードウェア機能のサポートが改善されました。特に AMD プラットフォームで大きな改善がなされています。
またバッテリーのみで動作している時に、省電力の最適化レベルを自動的に上げるようになりました。
1-12. 指紋認証の改善
指紋認証を行う fprintd がアップデートされ、多くの指紋認証ドライバー及び指紋認証デバイスがサポートされました。1-13. サブシステムのアップデート
以下のソフトウェアがアップデートされました。- BlueZ 5.72
- Cairo 1.18
- NetworkManager 1.46
- Pipewire 1.0.4
- Poppler 24.02
- xdg-desktop-portal 1.18
1-14. WSL 向け Ubuntu のドキュメント
WSL 向け Ubuntu のドキュメントが公開されました。インストール方法や使い方など、役に立つ情報が紹介されています。
2. ソフトウェアのアップデートや変更
ソフトウェアのアップデートや変更点です。2-1. ツールチェーンのアップデート
以下のようにツールチェーンがアップデートされました。- GCC 14
- binutils 2.42
- glibc 2.39.
- Python 3.12
- OpenJDK 21
- LLVM 18
- Rust 1.75
- Golang 1.22
- .NET 8
2-2. OpenJDK
Ubuntu 24.04 LTS ではデフォルトの OpenJDK に OpenJDK 21 を採用しています。さらに以下のバージョンもメンテナンスサポートされています。
- OpenJDK 17
- OpenJDK 11
- OpenJDK 8
また OpenJDK 17/21 はTCK認証も得ており、Java標準に準拠していることが認められています。
そのため他のJavaプラットフォームとの相互運用性も確保されています。
加えて Ubuntu Pro を契約している顧客は、FIPSに準拠した OpenJDK 11 も利用可能です。
2-3. .NET
デフォルトの .NET に .NET 8 が採用されています。バックポートPPAを利用すれば、 .NET 6/7 も利用可能です。
詳細は以下を参照してください。
2-4. Apport
Apport はソフトウェアのクラッシュを扱えるように、systemd-coredump と連携して動作できるようになりました。これにより Ubuntu 上でソフトウェアを開発する開発者は、systemd-coredump をインストールし、coredumpctl を利用してクラッシュデータを分析できるようになりました。
また引き続き Apport では、クラッシュしたソフトウェアのクラッシュ情報と共に不具合を Ubuntu の開発者に報告する機能も提供しています。
2-5. pptpd の削除
pptpd が削除され利用できなくなりました。詳細は以下を参照してください。
2-6. OpenSSHの依存関係の見直し
以前紹介しましたが、アップストリームのXZプロジェクトで、機密情報を漏洩する悪意ある実装が見つかりました。これを受け Ubuntu の openssh は libsystemd に依存しないように修正されました。
依存関係を減らすことで将来的に発生しうる脆弱性も回避しやすくなります。
2-7. tzdata パッケージの分割
従来の tzdata パッケージは、以下の3つのパッケージに分割されました。各パッケージの詳細は、上記リンク先を参照してください。
以前と同じ振る舞いにするには、tzdata-legacy パッケージもインストールしてください。
例えばSQLデータベースを提供するシステムなど、ネットワークを介してタイムゾーンを区別してデータを扱うシステムでは、tzdata-legacy パッケージのインストールが必要になるかもしれません。
2-8. 新しいストアアプリ
アプリのインストールやアップデートなど、アプリを管理するアプリが一新されました。App Center は一から作り直されたストアアプリです。
詳細は以下を参照してください。
2-9. GNOME 46
デスクトップに最新の GNOME 46 を採用しています。GNOME 46 の新機能や変更点は、以下のリリースノートを参考にしてください。
2-10. プリインストールアプリの変更
今までウェブカメラアプリに Cheese が採用されてきましたが、代わりに GNOME Snapshot に変更されました。またソリティアといったゲームアプリがデフォルトでインストールされなくなりました。
2-11. 従来の Ubuntu フォントの提供
グリフのデザインがスリムになった新しい Ubuntu フォントが採用されています。従来の Ubuntu フォントを好む場合、fonts-ubuntu-classic パッケージをインストールしてPCを再起動してください。
2-12. アプリのアップデート
以下のアプリがアップデートされました。- Firefox 124
- LibreOffice 24.2
- Thunderbird 115 “Supernova”
Firefox は Wayland 上でネイティブに動作するようになっています。
また Thunderbird は Snapで提供され、deb版 Thunderbird は廃止されました。
3. 非特権プロセスによるユーザー名前空間の利用制限
非特権プロセスによるユーザー名前空間の利用に制限がかかるようになりました。これにより権限がなく制限されていないすべてのソフトウェアが影響を受けます。
この制限は AppArmor によって実現されています。
以下も参考にしてください。
ケイパビリティの制限
AppArmor では権限がなく制限されていないソフトウェアに対し、ユーザー名前空間の利用そのものは許可しています。しかしそのユーザー名前空間内で利用可能なあらゆる機能(ケイパビリティ)は利用できないように調整されています。
非特権プロセスによるユーザー名前空間は、サンドボックスの構築やコンテナでよく利用される機能です。
ケイパビリティの許可
そのままでは動作しなくなる著名なアプリが多いため、Ubuntu では Ubuntu 公式リポジトリーから提供される著名なソフトウェアや、Google Chrome や Discord といったサードパーティー製の信頼可能な著名なソフトウェアは、ユーザー名前空間内で必要なケイパビリティを利用できるようになっています。このように Ubuntu ではソフトウェアに対し信頼可能かどうかを長い時間をかけて精査してきましたが、中には漏れてしまったソフトウェアもあるかもしれません。
そのようなアプリは AppArmor プロファイルを作成し、アプリが利用可能な権限を設定することが望ましいのですが、この方法は手間のかかる方法です。
Unconfined プロファイルモード
そこで AppArmor に Unconfined プロフィルモードが追加されました。この機能を利用すれば、簡単に権限の許可を設定できます。
例えば Google Chrome の場合、/etc/apparmor.d/chrome ファイルに以下を記述します。
abi <abi/4.0>,
include <tunables/global>
/opt/google/chrome/chrome flags=(unconfined) {
userns,
# Site-specific additions and overrides. See local/README for details.
include if exists <local/chrome>
}
include <tunables/global>
/opt/google/chrome/chrome flags=(unconfined) {
userns,
# Site-specific additions and overrides. See local/README for details.
include if exists <local/chrome>
}
ちなみに userns がユーザー名前空間の権限にあたります。
設定ファイルの詳細は、以下を参照してください。
推奨されない方法
他にも方法はありますが、以下の方法はシステムが脆弱になるため、積極的に推奨される方法ではありません。1. アプリでユーザー名前空間を利用しない
アプリによってはユーザー名前空間を利用せずに起動できるアプリもあります。例えば Google Chrome の場合、以下のようにオプションを指定して実行すれば、ユーザー名前空間を利用せずに起動できます。
google-chrome-stable --no-sandbox
もちろん情報漏えい等のリスクが強くなるため、このような方法は推奨しません。
2. システムでユーザー名前空間の利用制限を一時的に解除する
システムでユーザー名前空間の利用制限を一時的に解除する方法です。端末から以下のコマンドを実行すれば、PCを再起動するまでユーザー名前空間の利用制限を解除できます。
echo 0 | sudo tee /proc/sys/kernel/apparmor_restrict_unprivileged_userns
Linux kernel に対して広範に脆弱になるため、情報漏えい等のリスクが更に大きくなります。
3. システムでユーザー名前空間の利用制限を永続的に解除する
システムでユーザー名前空間の利用制限を永続的に解除する方法です。まず以下のファイルを作成します。
- /etc/sysctl.d/60-apparmor-namespace.conf
次にそのファイルをテキストエディターで開き、以下の内容を記述して保存します。
kernel.apparmor_restrict_unprivileged_userns=0
その後PCを再起動します。
4. 古いTLSバージョンの無効化と改善
TLS は認証及び暗号化通信に利用される仕組み(プロトコル)です。1999年に TLS 1.0 が標準化され、その後時代と共に TLS はバージョンアップし、セキュリティー機能が強化されてきました。
古いバージョンの TLS は脆弱であり、使用が推奨されるものではありません。
古いバージョンは利用不可に
Ubuntu 24.04 LTS では、以下のバージョンは強制的に無効化されており、利用することはできません。- TLS 1.0
- TLS 1.1
- DTLS 1.0
これによりTLSダウングレード攻撃にも対抗できるようになりました。
ちなみに openssl を利用しているソフトウェアは Ubuntu 20.04 LTS 以降、すでに無効になっています。
gnutls を利用しているソフトウェアは Ubuntu 24.04 LTS から強制的に無効になります。
ただし openconnect のみ例外です。
openssl と gnutls 設定の読み込み改善
ライブラリーの中には、設定ファイルから設定を読み込んだ時に無効な設定があっても、そのエラーを報告しないライブラリーもあります。この現象は AppArmor が設定ファイルへのアクセスを拒否する際にも起こり得ます。
openssl や gnutls は様々なソフトウェアから利用されているため、設定ファイルへのアクセスをデフォルトで許可するようになりました。
5. APT
APT 関連の内容です。5-1. セキュリティー強化
APTリポジトリー及びパッケージの署名に使用する鍵の強度が上げられました。これはUbuntu 公式リポジトリーだけでなく PPA やサードパーティー製のリポジトリーも同様です。
詳細は以下を参照してください。
警告からエラーになる
上記の条件を満たしていない脆弱な鍵を使用したリポジトリーは、今まで APT 利用時に警告として扱われてきましたが、APT 2.8.0 では警告ではなく、エラーとして扱われるようになりました。5-2. ソースリストフォーマットの変更
今まで Ubuntu 公式リポジトリーの設定は、以下のファイルに記述されていました。- /etc/apt/sources.list
これら設定は新しい deb822 フォーマットと共に、以下のファイルに記述されるようになりました。
- /etc/apt/sources.list.d/ubuntu.sources
PPA はすでに移行済み
ちなみに PPA では、すでにこの新しいフォーマットに移行済みです。詳細は以下を参考にしてください。
6. 実行可能ファイルのセキュリティー強化
バッファオーバーフローのチェック強化など、実行可能ファイルのセキュリティーが強化されました。詳細は以下を参考にしてください。
7. インストーラー
LTSリリースの Ubuntu Desktop で初めて新しいインストーラーが導入されました。7-1. ZFSのサポート
ZFS と ZFS による暗号化インストールがサポートされました。ZFS はエンタープライズ向けのファイルシステムであり、高度な機能を提供しています。
現状はいずれのインストール方法も、実験的なインストール方法として提供されています。
7-2. TPM によるディスクの暗号化サポート
TPM(Trusted Platform Module)を利用してディスクを暗号化してインストールするインストール方法がサポートされました。ただし TPM 2.0 が必要なことや、サポートされているハードウェア環境に制限があります。
TPM によるディスクの暗号化については、以下を参考にしてください。
「ハードウェアベースのディスク全体暗号化」オプションが、このインストール方法にあたります。
現状はこのインストール方法も、実験的なインストール方法として提供されています。
ただしこのインストール方法は、NVIDIA が提供する NVIDIA GPU ドライバーを利用できないなど、サードパーティー製ドライバーやカーネルモジュールの利用に制限があります。
またファームウェアのアップグレード機能もサポートされていません。
今後 NVIDIA GPU ドライバーのサポートを優先事項として、サードパーティー製カーネルモジュールのサポートが改善される予定です。
7-3. インストーラーのアップデート機能
インストーラーはインストーラー自身をアップデートする機能を持っています。インターネットに接続されていれば、新バージョンのインストーラーが見つかった時に、インストーラーのアップデートを促す画面が表示されます。
画面の案内に従って操作をすれば、簡単にインストーラーを最新版にアップデートできます。
7-4. プリインストールするアプリ群の選択
プリインストールするアプリ群の選択に、従来どおり最小限のアプリをプリインストールするインストールオプションと、オフィススイートなどよく利用されるアプリもプリインストールするインストールオプションがあります。このデフォルトのインストールオプションが、最小限のアプリをプリインストールするインストールオプションに変更されました。
8. Raspberry Pi
Raspberry Pi 関連の変更点です。8-1. Raspberry Pi 5 向け初のLTS
Ubuntu 24.04 LTS は Raspberry Pi 5 向け初の LTS リリースの Ubuntuです。arm64 アーキテクチャーの Raspberry Pi 5 向け Ubuntu Desktop 及び Ubuntu Server が利用可能です。
8-2. Firefox のパフォーマンス向上
Firefox で 3Dアクセラレーションが可能になり、動画の再生パフォーマンスが向上しました。8-3. 電力管理
Raspberry Pi 5 では pemmican パッケージが電力供給の監視を提供するようになりました。Ubuntu Server ではログイン時に MOTD が 5A の電力供給のネゴシエーションに失敗したかどうか、そしてリセットにより電圧低下が発生したかどうかを示します。
またカーネルメッセージに電圧不足や過電流の警告メッセージが出力されます。
Ubuntu Desktop ではデスクトップ通知で電力に関する警告が表示されます。
また追加情報を表示するオプションや、警告メッセージを抑制するオプションも利用可能です。
8-4. 32bit のディスクイメージの廃止
Raspberry Pi 向け Ubuntu 32bit版(armhf)のディスクイメージはリリースされなくなりました。リリースされるのはUbuntu 64bit版(arm64)のみになりました。
ただし armhf アーキテクチャーに基づくソフトウェアは、Ubuntu 64bit版上で以下のようにリポジトリーを追加すれば利用可能です。
sudo dpkg --add-architecture armhf
sudo apt update
sudo apt update
上記のコマンドを実行して armhf リポジトリーを追加したら、後は以下のようにソフトウェアのインストールが可能です。
sudo apt install パッケージ名:armhf
8-5. Ubuntu 32bit版からUbuntu 24.04 LTS へアップグレード不可
さて32bit版の廃止に伴い、armhf アーキテクチャーの Linux kernel は提供されていません。そのため Ubuntu 32bit版を利用しているユーザーは、Ubuntu 24.04 LTS へアップグレードできません。
また Ubuntu 24.10 以降、armhf アーキテクチャーのサポート自体なくなる予定です。
8-6. Bluetooth のサポート改善
Ubuntu Server で Bluetooth を利用したい場合、pi-bluetooth パッケージをインストールする必要がなくなりました。bluez パッケージをインストールするだけで、Bluetooth を利用できます。
8-7. 64k ページサイズに対応したイメージ
64k ページサイズに対応した Linux kernel を含む arm64+largemem ディスクイメージを利用できるようになりました。メモリーを多く搭載した Raspberry Pi で、メモリー使用量の増加の代わりにパフォーマンスを向上させることができます。
9. Ubuntu の既知の問題
Ubuntu 全体の既知の問題です。9-1. ライブセッションがローカライズされない
新インストーラーの「Ubuntu Desktop Installer」を搭載した「Ubuntu Desktop」でライブセッションを起動する際、最初に言語選択画面が表示されます。しかし各言語でローカライズされたライブセッションで起動せず、英語環境でデスクトップが起動します。
この不具合の詳細は、以下を参照してください。
ローカライズされていなくても日本語など英語以外の言語でインストールすることも可能ですが、その場合は言語パックのダウンロードにインターネット接続が必要になります。
問題が発生する場合、以前のインストーラーを搭載した「Ubuntu Legacy Desktop」イメージを利用してください。
9-2. アップグレードの不具合
現状以下のようなアップグレード時に発生する復旧できない致命的な不具合があるため、それらの不具合が修正されるまでアップグレードは提供されません。致命的な不具合は数日中に修正される予定です。
その後アップグレードが提供されます。
9-3. スクリーンリーダーのサポートが不完全
インストーラーでスクリーンリーダーがサポートされていますが、まだスクリーンリーダーのサポートは不完全です。この不具合の詳細は、以下を参照してください。
- Screen reader too incomplete in installer
- Impractical to turn on Screen Reader without knowing secret keyboard shortcut
- Screen reader enabled during install but not enabled after install
- Not possible to advance installer pages with Enter
9-4. OEM インストールの非サポート
現時点でまだ OEM インストールはサポートされていません。9-5. ハイコントラストのアイコンが使用されない
ハイコントラストを有効にした時に、アプリケーションのアイコンに適切なハイコントラストテーマが使用されず、一部のアプリケーションアイコンがハイコントラストのアイコンで表示されません。この不具合の詳細は、以下を参照してください。
9-6. GTK 4 アプリが正常に表示されない
3Dアクセラレーションを有効にした VirtualBox や VMWare、もしくは古いNvidia 470 ドライバー環境で、GTK 4 アプリが正常に表示されません。この不具合の詳細は、以下を参照してください。
- Rendering issues in virtual machines (GTK ngl backend)
- GTK-ngl (new default backend) rendering issues with the nvidia 470 driver
9-7. Xorg セッションでフルスクリーン時にパフォーマンス低下
Xorg セッションでアプリのウィンドウをフルスクリーン表示にした時に、グラフィックパフォーマンスが一時的に低下します。9-8. netboot 環境でインストーラーがクラッシュする
netboot 環境でライブセッション起動時に、インストーラーがクラッシュします。この問題は Ubuntu 24.04.1 LTS リリースもしくは近いうちに修正される予定です。
この不具合の詳細は、以下を参照してください。
9-9. TPM による FDE と Absolute Software の非互換
TPM による FDE と Absolute Software(Computrace)には互換性がありません。Absolute Software(Computrace)を有効にしたまま TPM による FDE を有効にして Ubuntu Desktop をインストールすると、インストール後の Ubuntu Desktop が起動しなくなります。
そのため TPM による FDE で Ubuntu Desktop をインストールする場合は、事前に BIOS/UEFI で Absolute Software(Computrace)を無効にしておいてください。
その他FDEの不具合
その他「FDE(Full Disk Encryption)」に関する不具合の一覧は、以下を参照してください。9-10. TPM による FDE とカーネルモジュールの不足
TPM による FDE では Snap で Linux kernel がインストールされます。この Linux kernel に、ある特定のハードウェア機能をサポートするためのカーネルモジュール(ドライバー)が含まれていない可能性があります。
例えば NVMe RAID を利用するために必要な vmd カーネルモジュールが含まれていません。
もしカーネルモジュールの不足により特定のハードウェア機能が動作しない場合は、その機能を予め BIOS/UEFI で無効にしておいてください。
ハードウェア機能を無効化できない場合、そのハードウェア機能はインストール後の Ubuntu Desktop で利用できません。
9-11. Intel MIPI カメラの初期化に失敗する
Linux kernel の ipu6 ドライバーに不具合があり、Intel MIPI カメラの初期化に失敗します。この不具合の詳細は、以下を参照してください。
現在修正作業が行われており、今後のアップデートで問題が解消される予定です。
10. Raspberry Piの既知の問題
Raspberry Pi 固有の既知の問題です。10-1. インストーラーのスライドショーの表示が乱れる
Ubuntu Desktop のインストーラーでは Ubuntu Desktop をインストールしている時に、インストーラーでスライドショーを表示します。Raspberry Pi に Ubuntu Desktop をインストールしている時に、このスライドショーの表示が乱れて表示されます。
これは表示上の問題であり、インストール自体に何ら問題はありません。
この不具合の詳細は、以下を参照してください。
10-2. cloud-init 利用時のネットワーク設定
Ubuntu Server 利用時、ブートパーティションにある user-data ファイルで cloud-init の設定に SSH キーのインポートやパッケージのインストールなど、ネットワークありきの設定が含まれている場合、ブートパーティションにある network-config ファイルに最低でも1つのネットワークインターフェースの設定(optional: false)が必須になります。この不具合の詳細は、以下を参照してください。
10-3. スタートアップサウンドが鳴らない
初期セットアップが起動する前にスタートアップサウンドが鳴りません。この不具合の詳細は、以下を参照してください。
10-4. Totem が不足しているコーデックのインストールを案内しない
メディアプレーヤーの Totem が、メディア再生時に不足しているコーデックのインストールを案内しません。この不具合の詳細は、以下を参照してください。
10-5. モニターがパワーオフから復帰しない
モニターは一定時間操作がない時に自動的にパワーオフになります。Raspberry Pi に接続された一部のモニターでは、パワーオフの後パワーオンになってもブラックスクリーンが表示されます。
この現象が発生するモニターの種類は、現在調査中です。
この不具合の詳細は、以下を参照してください。
10-6. crdaパッケージの削除
Ubuntu 22.04 LTS で crda パッケージが削除されました。これにより WiFi の規制ドメインの選択を /etc/default/crda 経由で行えなくなりました。
Raspberry Pi 向け Ubuntu Server では、netplan の regulatory-domain 設定でWiFiの規制ドメインの設定を行ってください。
また Raspberry Pi 向け Ubuntu Server では、Raspberry Pi の起動パーティション内にある cmdline.txt ファイルを開き、カーネルコマンドラインに以下の設定を記述してください。
- cfg80211.ieee80211_regdom=GB
この設定の最後の GB は、カントリーコードになります。
希望するカントリーコードを指定してください。
10-7. DAC+ HAT が動作しない
Raspberry Pi 5 で DAC+ HAT が動作しません。この不具合の詳細は、以下を参照してください。
10-8. 電源LEDがオフになる
以下の Raspberry Pi でカーネル起動時に電源LEDがオフになります。- Raspberry Pi 2B
- Raspberry Pi 3B
- Raspberry Pi 3A+
- Raspberry Pi 3B+
- Raspberry Pi Zero 2W
この不具合の詳細は、以下を参照してください。
10-9. libcamera サポートが壊れている
libcamera サポートが壊れています。この不具合の詳細は、以下を参照してください。
不具合が修正され次第、アップデートがリリースされる予定です。
10-10. NVIDIA GPUドライバーでクラッシュする
現バージョンの NVIDIA GPU ドライバーは、arm64 環境でハングもしくはクラッシュします。この不具合の詳細は、以下を参照してください。
今後のドライバーのバージョンアップで修正される予定です。