Ubuntu 25.04 の開発方針とロードマップ
Ubuntu 25.04 の開発方針とロードマップを紹介します。パフォーマンスの継続的な改善
開発チームは Ubuntu 24.04 LTS 及び Ubuntu 24.10 の開発時に、Ubuntu のパフォーマンス分析とパフォーマンス基準の底上げに取り組んできました。Ubuntu 24.04 LTS / Ubuntu 24.10
Ubuntu 24.04 LTS ではフレームポインターをデフォルトで有効にしました。また Ubuntu 24.10 の開発時に、-O3 最適化フラグ指定時のパフォーマンス分析を行ってきました。
-O3 最適化フラグをデフォルトで有効に
Ubuntu 25.04 では -O3 最適化フラグがデフォルトで有効になります。ただ単純にこの最適化フラグをパッケージ全体に指定するのではなく、この最適化フラグによる効果が得られるパッケージでは、この最適化フラグを指定して再コンパイルします。
その一方で最適化フラグの指定によりパフォーマンスの低下が見られる場合は、この最適化を無効化します。
こうすることでバランスの取れたアプローチを実現でき、全体的に優れたパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう。
LLVM の調査
Ubuntu パッケージ全体を LLVM を利用して再構築する計画が予定されています。この結果は後日メンテナーやコミュニティーに公開され、Ubuntu 全体で LLVM のサポートを改善する予定です。
システムソフトウェアのアップデート
開発チームは Ubuntu のすべてのリリースで最新のシステムソフトウェアを届けられるよう継続的に取り組んでいます。Ubuntu 25.04
Ubuntu 25.04 では以下のアップデートが含まれる予定です。- glibc 2.41
- systemd v257
- OpenSSL 3.4
Dracut の導入
Dracut は Linux で initramfs を生成するための代替ツールです。現在は initramfs を生成するのに initramfs-tools を利用しています。
Dracut は モジュール機能を提供し、起動システムに柔軟性を与えます。
テストやフィードバック
Ubuntu 24.10 の時に将来的な移行を見越して、以下でテストやフィードバックの募集が行われました。その結果多くの肯定的な結果が得られました。
Ubuntu 25.04 で代替ツールとして導入
Ubuntu 25.04 では initramfs を管理する代替ツールとして Dracut が導入されます。Ubuntu 26.04 LTS でデフォルトになる
特に問題なく予定通り進めば、Ubuntu 26.04 LTS で Dracut がデフォルトになります。APT ソルバー
APT ソルバーの改良が計画されています。ソルバー
APT は依存関係の解決や衝突を解消するソルバーという機能を備えています。ソルバーを言い換えれば、依存関係の問題を解消するためのアルゴリズムとも表現できます。
この機能はユーザーにとって非常に重要な機能であり、APT にとってもパッケージの整合性を維持しながらパッケージ管理を行うために非常に重要な機能になっています。
APT は20年以上前から存在するソフトウェアであり、このソルバーにもモダンな改良が必要になっています。
ソルバーの改良によりユーザーは、パッケージのインストール時に従来よりも予測可能な結果を得られ、依存関係の問題でパッケージをインストールできない時により詳しい理由や情報を提供できるようになります。
新しいソルバー
Ubuntu 24.10 で新しいソルバーを利用できるようになりました。まだこの新しいソルバーは安定に至っておらず、開発チームはユーザーが安心して利用できるようにソルバーの改良作業に優先して取り組んでいます。
また従来のソルバーとの違いを評価するために、依存関係周りの情報や結果を記録する仕組みを追加しています。
オプションを APT Hook に渡す仕組み
APT Hook は APT の処理に追加処理を加えるための仕組みです。Pro hook 等で活用されており、--quiet など apt で指定されたオプションを APT Hook に渡す仕組みの実装が行われています。
これにより APT Hook でも、ユーザーが指定したオプションの意味に沿った振る舞いを実現できます。
アップグレードの改善
Ubuntu をアップグレードする時にユーザーの環境によっては、何かしら問題に直面することがあります。開発チームはアップグレード時のユーザー体験を改良するため、継続的にかつ最優先事項で取り組み続けています。
問題の解消に向けた作業
Ubuntu 25.04 でもアップグレードの改善作業が行われており、多くのユーザーが直面する問題の解消や、不遇な結果をもたらすアップグレードパスに対応する作業が続けられています。特にサードパーティーの PPA から導入されたパッケージに起因する問題や、サポートされなくなったミラーサーバー利用時の問題など、多くのユーザーが同遇するであろう問題の解消に取り組んでいます。
ツールチェーン
開発チームは過去2年間、ツールチェーンのサポート基準を上げてきました。また新しいアップストリームのツールチェーンを Ubuntu で提供してきました。
例えば .NET の最新版である .NET 9 は Ubuntu で利用可能になっています。
Ubuntu 25.04
Ubuntu 25.04 では以下のツールチェーンが採用される予定です。ツールチェーン | バージョン |
---|---|
Python | 3.13 |
GCC | 15 |
Java | 24, 21, 17, 11, 8 |
Go | 1.24 |
Rust | 1.81, 1.82, 1.83 |
LLVM | 19 |
.Net | 9 |
Development tools for Spring® projects
devpack-for-spring は Snap で提供されるツールチェーンの一種です。devpack-for-spring が Ubuntu 25.04 のリリースと共に公開される予定です。
devpack-for-spring を活用すれば、Spring や Spring Boot 開発者は簡単に開発環境や、Maven や Gradle を利用したアプリのビルド環境を構築できます。
devpack-for-spring の概要や使い方は、以下を参照してください。
Snap版 .NET
新しい Snap版 .NET では多数の改良が施されています。インストーラーツールにより .NET の開発者は、異なる復数のバージョンの .NET ランタイム及び .NET SDK を簡単に管理できるようになりました。
またUbuntu 25.04 では、CLI の改善も予定されています。
snapcraft プラグインの改善
Gradle や Rust、.NET 向けの snapcraft プラグインが改善されます。これらの言語を用いてアプリを開発している開発者が、簡単に Snap パッケージを構築できるようになります。
RISC-V
Ubuntu は RISC-V アーキテクチャー向けにもリリースされています。オンデマンドテストの導入
RISC-V アーキテクチャー向けパッケージのオンデマンドテストが導入される予定です。これは http://autopkgtest.ubuntu.com との完全な統合を意味しており、近い将来導入される予定です。
実際の統合はビルダーで使用するハードウェアに依存することになります。
ARM 向け Ubuntu Desktop
ARM アーキテクチャーを採用したノート PC で幅広く Ubuntu Desktop をサポートするための作業が行われています。Qualcomm Snapdragon X Elite
その作業の成果の一つとして Qualcomm Snapdragon X Elite に対応した Ubuntu Desktop 24.10 開発者プレビューが登場しています。すでに7機種で動作することが確認されており、現在もユーザーにテストやフィードバックを求めています。
動作するしないに関わらず、開発を前に進めるためにそのテスト結果やフィードバックをお寄せ頂けたらと思います。