Ubuntu Studio 23.10の新機能と変更点
リリースノートから「Ubuntu Studio 23.10」の新機能と変更点を紹介します。Ubuntu Studioのリリース情報
「Ubuntu Studio 23.10」のリリース情報です。- 公式サイト:Ubuntu Studio
- リリースアナウンス:Ubuntu Studio 23.10 Released
- リリースノート:ReleaseNotes
Ubuntu Studioの特徴
「Ubuntu Studio」は動画制作や音楽制作、ライブ配信などクリエイター向けの環境を提供する「Ubuntu」の公式フレーバーです。デスクトップ環境に「KDE Plasma」を採用しており、「Kubuntu」上にクリエイター向けの環境を構築したOSと思えば分かりやすいでしょう。
他の公式フレーバーのほとんどはデスクトップ環境に着目したOSですが、「Ubuntu Studio」はクリエイターのワークフローに着目したOSです。
公式フレーバー
公式フレーバーは「Ubuntu」と開発プロセスやリソース、インフラを共有しているUbuntuベースのLinuxディストリビューションであり、Ubuntuファミリーの一員です。「Ubuntu」と密接に連携して開発されていますが、公式フレーバーごとにプロジェクトやコミュニティー、そして公式サイトが存在します。
「Ubuntu」と共通する新機能や変更点、「Ubuntu Studio」のディスクイメージのダウンロードは、下記の「Ubuntu」のリリース情報を参照してください。
Ubuntuのリリース情報
「Ubuntu 23.10」のリリース情報は、以下を参照してください。「Ubuntu Studio 23.10」のディスクイメージも以下からダウンロード可能です。
「Ubuntu 23.10」のリリースノートは、以下を参照してください。
- リリースノート:ReleaseNotes
- リリースノート(日本語):リリースノート
その他「Ubuntu 23.10」の新機能と変更点は、以下を参照してください。
- Waylandに対応したSnap版Firefox登場
- initramfsのサイズ削減と生成時間の短縮
- TPMによるディスク暗号化の試験的サポートとその実装
- 非特権プロセスによるユーザー名前空間の利用制限とAppArmor
- Ubuntu Desktopのフォント構成が変わる・従来のUbuntuフォントの提供
Kubuntuのリリース情報
「Ubuntu Studio」では「Kubuntu」で採用されている多くのソフトウェアを「Kubuntu」と共有しています。「Kubuntu 23.10」の新機能と変更点は、以下を参照してください。
サポート期間
「Ubuntu Studio 23.10」は通常リリースであり、リリースされてから9ヶ月間のサポートが提供されます。「Ubuntu Studio 23.10」は2023年10月にリリースされたため、2024年7月までサポートが提供されます。
以前のバージョンからアップグレード可能
以下のバージョンから、直接「Ubuntu Studio 23.10」へアップグレード可能です。- Ubuntu Studio 23.04
アップグレード方法については、以下を参照してください。
- アップグレード方法:Upgrading to Ubuntu Studio 23.10
インストーラーの変更
インストーラーの変更点です。インストーラーがUbiquityに
「Ubuntu Studio 23.10」では、「Ubuntu Studio」のインストールに使用するインストーラーが「Ubiquity」に変更されました。以前のバージョンでは「Lubuntu」と同様に「Calamares」を採用していました。
しかし「Calamares」では、ライブセッションで選択された言語をインストーラーに引き継ぐ機能や、ライブセッションでデスクトップに移行せずインストーラーを起動する機能など、ユーザーの使い勝手を向上させる機能が欠けており、「Ubiquity」に変更することになりました。
ちなみに「Ubiquity」は「Ubuntu 22.04 LTS」など以前の「Ubuntu」で採用されていたインストーラーです。
将来的に新インストーラーに移行
「Ubuntu」では「Ubuntu 23.04」から新しいインストーラーに移行しました。これに伴い次期バージョンの「Ubuntu Studio 24.04 LTS」では、「Ubuntu Studio」も「Ubuntu」の新インストーラーに移行する予定です。
PipeWireの機能強化
「PipeWire」は低レイヤーで動作するマルチメディアフレームワークです。PipeWireとは
「PipeWire」は「PulseAudio」のようにサウンドサーバーの機能だけでなく、ビデオキャプチャーサーバーの機能も持っています。また低遅延の特性も持っておりサウンド面では「PulseAudio」や「JACK」を置き換える存在になります。
またビデオキャプチャーサーバーでは、ビデオキャプチャーデバイスの管理や、アプリへビデオキャプチャーデバイスへのアクセス手段を提供します。
加えてアプリからスクリーンキャストを作成するための機能も提供しています。
「PipeWire」もアプリとデバイスを中継するためのソフトウェアです。
JACK互換性の強化
JACKとの互換性が強化され、リアルタイムに動作するようになりました。FireWireのサポート改善
「FireWire」向けの機能が実装され、「FireWire」のサポートが改善されました。Ubuntu Studio Audio Configuration
「PipeWire」の設定を調整する「Ubuntu Studio Audio Configuration」が追加されました。現状以下の機能を提供しています。
- PipeWire Quantumのデフォルト値の設定
- PipeWireのJACK互換レイヤーの有効・無効切り替え
- PulseAudio/JACK構成に切り替え(Ubuntu Studio 23.04より前のデフォルト構成)
詳細は以下を参照してください。
QPrompt
「QPrompt」はテレプロンプターアプリです。いわゆるカンペですね。
Ubuntu公式リポジトリーからインストール可能に
Ubuntu公式リポジトリーから「QPrompt」をインストールできるようになりました。「QPrompt」はデフォルトではインストールされていませんが、以下のコマンドを実行して「QPrompt」をインストールできます。
sudo apt install qprompt
ちなみに「Snap Store」からインストールすることも可能です。
Ubuntu Studio Backports PPAが非推奨に
「Ubuntu Studio Backports PPA」が非推奨になりました。Ubuntu Studio Backports
「Ubuntu Studio Backports PPA」は一部のソフトウェアのアップデート版を提供するリポジトリーです。ユーザーは「Ubuntu Studio Backports PPA」を導入することで、Ubuntu公式リポジトリーから提供されるソフトウェアよりも、新しいバージョンのソフトウェアを利用できます。
Ubuntu Studio 23.10以降は廃止
「Ubuntu Studio 23.10」以降「Ubuntu Studio Backports PPA」は廃止され、利用できなくなりました。これに伴い「Ubuntu Studio Installer」から「Ubuntu Studio Backports PPA」を導入する機能は削除されました。
Ubuntu Studio 23.04について
「Ubuntu Studio 23.04」では「Ubuntu Studio Backports PPA」を利用できますが、「Ubuntu Studio 23.10」のリリースを以って「Ubuntu Studio 23.04」向け「Ubuntu Studio Backports PPA」のアップデートは終了しました。「Ubuntu Studio 23.04」を利用しているユーザーで新しいアプリを利用したいユーザーは、「Ubuntu Studio 23.10」へアップグレードしてください。
Ubuntu Backports Repositoryの活用
「Ubuntu Studio 24.04 LTS」などLTSリリースの「Ubuntu Studio」では、「Ubuntu Studio Backports PPA」と同様の目的を持つリポジトリーにUbuntu公式の「Ubuntu Backports Repository」の活用が検討されています。Ardour Backports PPAは存続
新バージョンの「Ardour」を提供する「Ardour Backports PPA」は存続します。「Ardour」はハードディスクレコーダーとデジタルオーディオワークステーション機能を提供するアプリです。
Kubuntu Backports PPA
「Ubuntu Studio 23.10」は「Kubuntu 23.10」をベースにしたOSであるため、Kubuntu開発チームが提供する「Kubuntu Backports PPA」を導入できます。「Kubuntu Backports PPA」の役割や導入方法は、以下を参照してください。
ソフトウェア
ソフトウェア全般の変更点です。オーディオソフトウェア
以下の主要なオーディオソフトウェアが採用されています。- PipeWire 0.3.79(サウンドサーバー)
- Carla 2.5.7(オーディオプラグインのホスト)
- lsp-plugins 1.2.11(Linux Studio Plugins)
- Audacity 3.3.3(オーディオエディター)
- Ardour 7.5.0(デジタルオーディオワークステーション)
- Patchance 1.1.0(JACK Patchbay GUI)
グラフィックソフトウェア
以下の主要なグラフィックソフトウェアが採用されています。- Darktable 4.4.2(デジタルネガの管理やRAW現像)
- digiKam 8.1.0(写真管理)
- Gimp 2.10.34(画像編集)
- Inkscape 1.2.2(ベクター画像編集)
- MyPaint 2.0.1(画像編集)
ビデオソフトウェアのアップデート
以下の主要なビデオソフトウェアが採用されています。- OBS Studio 29.1.3(録画及び配信ソフト)
- Blender 3.6.2(3Dモデリング)
- KDEnlive 23.08.1(動画編集)
- Freeshow 0.9.7(プレゼン)
- Q Light Controller Plus 4.12.7
デスクトップのアップデート
以下のデスクトップを構成するソフトウェアが採用されています。- KDE Plasma Desktop 5.27.8
- KDE Frameworks 5.110.0
- Qt 5.15.10
- KDE Gear 23.08.1
既知の問題
既知の問題です。1. Ubuntu上でPulseAudio/JACK構成が利用できない
「Ubuntu Desktop」上でPulseAudio/JACK構成は利用できません。この問題の詳細は、以下を参照してください。
2. 純粋なJACK環境を好む場合は
PipeWire経由ではなく純粋なJACK環境を好む場合は、上記で紹介したように「Ubuntu Studio Audio Configuration」でPipeWireのJACK互換レイヤーを無効化できます。また「Studio Controls」や「Ubuntu Studio Audio Configuration」からPulseAudio/JACK構成のセットアップが可能です。